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連載 ユーコン川、カヌーひとり旅
森のくまさん!


杉田えいすけ さん

アラスカ・北極圏とカナダの略図〜旅行日程表

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 チルクート・トレイル(スキャグウェイからベネットまでのトレッキングコース)徒歩の旅。

チルクート・トレイルは、100年前のゴールドラッシュで、金の都ドーソンに行くために通るまさにゴールド・ルートであった。「一攫千金」を夢見たガリンペイロ(金鉱採掘人)が世界中から集まり、金を探しあてるための金の道として使われてきたところである。当時、国境線上にある峠を冬に越えようとしたガリンペイロ達は、その多くが峠道で滑落して数百人の命を失ったと言われている。そこがチルクート峠だった。
日本では、案外知られていないマイナーなトレイルコースかと思ったが、地元ではマッキンリーのあるデナリ国立公園と同じくらい知れわたっていたのはゴールドラッシュの歴史があるからではないだろうか。

僕は偶然、あのゴールドラッシュ時代のかつての山道を知った事で、旅へのテンションは一気に上がりワクワクしてしまう。 
「ひと昔前の、旅人の気持ちを追う旅」
「金を夢見た人々の、足跡をたどる旅」
気持ちは一気にその時代へワープしてしまった。
出発地スキャグウェイから終着地まで11ものキャンプポイントが決められており、原則的にここ以外でのキャンプは禁止されている。
トレイルは、森林警備隊により管理されており出発前に簡単なレクチャーを受けた。

トレイル・キャンプでのキャンピング・ル−ルと概要

  1. テントに食料など匂いのする物は、一切持ち込まないこと。
  2. 食料は、ベアポールに吊るすこと。
    (※ベアボールとは? ラグビーで使うポールそっくりで、そのポールを使って3.5mくらいの高さに食料を吊るして熊の届かないところに置いておく)
  3. 食事やキャンプでの調理は、キャンプ場の調理専用キャビンで行うこと。(動物に与える影響を配慮している)
  4. トレイル・ルートである道の途中で長く留まらないこと、静かにしないこと。
    (ガサゴソと音を立てて人間の存在を知らせる)。
  5. グリズリー(熊)に出あったら、走って逃げないこと。様子をうかがうこと。
  6. 生水は、飲まないこと。(ビーバー・フィーバー等の感染を避ける。)

その他、細かいルールはあったけど、熊(グリズリー)対策を万全にということらしい。
いずれにしてもこの地域の山に入るときは、まず動物が生息する地域での頂点には、クマさんがいるという感覚を持つことが大切なような気がする。
身体能力に関してはグリズリーと人とを比べようもないし、こんな大自然の中では人間は小動物なのだと思い知らされる。 チルクートは熊の王国である。そういうことも忘れてはいけないけど、頭でわかっていても、野生の熊を目の前で見たときはショックをうけてしまった。

スキャグウェイ・トレイルヘッド〜プリ―ザン・キャンプ場

○出発地でひとまず一晩キャンプした翌朝、寝ぼけまなこで、とぼとぼと出発した。しかしすぐに目が覚めるようなことが待っていた。森に入って1時間もたたないうちに、さっそくグリズリー(熊)に出くわしてしまう。前方20メートル先に木の影からひょこっと顔をだしたのは、親離れしたばかりのまだ少年っぽい(メスかもしれない。)感じの熊だった。前足を木に沿えて、不思議そうにこっちを見つめて立っている。

「クマぐらい、いるに決まっているじゃないか!」と自分に言い聞かせながらも、野生に生きる大きな動物の存在に驚きを隠せなかった。道沿いにその熊がいたので、実に困ったことになってしまった。
先に進めない!しばらく様子を見ていると、このやんちゃそうな熊は、道端の木の根元で何かを食べ始めた。声を出したり、手をたたいてこっちの存在をアピールしてみるが、いっこうに気づいてくれない。そのとき、初めて出会う野生のクマに対して、根拠のない安全を感じた。関心がこっちにあまりないという様子だったのでその道をそのまま通りすぎることにした。はじめて会ったグリズリーに、なぜそんな風に感じたのかわからないが、直感的に大丈夫だと思い、あまり深く考えずに直進して2メートルくらいまで近づいてみた。その時、クマが一瞬こちらの様子をうかがったので、何気なく反対を見てしまった。こっちは、敵意がないことをアピールをしたつもりでとった行動だったが、彼の放つ動物臭が、おおきな生命力に対する恐怖感として僕の心にまで入りこんできた。


グリズリーの足跡、
まん中が僕の登山靴の足跡。

「グリズリーに出会ったら決して接近しないで下さい」と言うレンジャー(森林警備隊員)のクマに対する対処方法を聞いていたのにもかかわらず、そのマニュアルを参考にしなかった。でも、そういう判断をさせるぐらい生き物同士には、偶然接触する時には不思議なやりとりがあるのかもしれないと感じた瞬間でもあった。

杉田えいすけ さん杉田えいすけ さん
福岡出身。九州産業大学で写真を専攻。自転車、登山、ロック・クライミング、カヤックが大好き。現在、税理士の資格取得に力を注ぐ福岡の自転車メッセンジャー。“九州のへそ”人吉で税理士事務所の設立とマイ・ログハウスづくりを夢見る。
www.e-adventurous.com

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