ユーコン対応筏作り
まず完成した筏をユーコン川に浮かせるためのレールとしての土台の丸太を敷く準備にかかる。その上で手作り筏を作っていても万一の備えとして、作業中にはずみで自作イカダがレール上を滑ってユーコン川まで動いていかないようロックする止め木も用意する。
雨がひとしきり降り、気温も下降ぎみだったので筏製作は中断して、食料を川むかいの店で買いものに行くことにする。
ユーコン川を川下りするためのいかだ製作に着手して3日目、このとき僕はピアという男に出会う。ある日の事、僕はキャンプ場に戻ったところ、僕のベースキャンプの近くに見慣れないブルーシートで作ったテントがあるのに気づく。
近づきながら覗き見すると、ブルーシートの中心には3本の枝木がメインポール代わりになっていて、中では、シートが燃えない程の小さな焚き火をしている髭面の男がTシャツ一枚でくつろいでいる。
ケベック出身のログビルダー、ピアと出会う。
男は虫歯だらけの歯を見せて笑顔で挨拶をかえしてきた。しばらくたった後、男は外で巨大な焚き火を起こし始めた。
焚き火に丸太を5、6本突っ込んだその男は、小振りの木々を集めては斧で枝を掃い、適当なサイズに切り出していく。僕はその男の斧使いの慣れた手付きに目を見張る。
日本では斧より鋸(のこぎり)をつかう習慣があるが、男は斧だけで木を好きな形に整形していく。
翌日、僕は大まかに太さのそろった丸太を選んで素材にして三重に積み上げていき、のこぎりで丸太を三角に削り、ロープで丸太同士を縛る。
さらに20センチくらいの大きな釘を斜めに数箇所打ち込み、借りてきた斧で丸太の枝を掃う。
手作りイカダ本体の両脇に、ドラム缶を木の枠で囲ってロープで固定する。
最後に舵取りが出来るようにパドルを作って自作イカダの後ろに取り付けるというものだ。
やっと出来上がった手作りイカダを眺めて、われながらよく出来たものだと自画自賛、ビール片手に乾杯したいくらいであった。
完完成、出発前の筏 |
一方、ピアはあっという間に斧で丸太を次々にカットしながら組み立てて自分の筏を作りあげてしまい、仕上げにレジャー用のかわいいエアボートをイカダの上に乗せて完成。フットワークの軽い筏で僕の筏と対照的だ。そばで始終をみていた僕は唖然とするばかりだった。さすがログビルダーの野生児だ。
杉田えいすけ さん
福岡出身。九州産業大学で写真を専攻。自転車、登山、ロック・クライミング、カヤックが大好き。現在、税理士の資格取得に力を注ぐ福岡の自転車メッセンジャー。“九州のへそ”人吉で税理士事務所の設立とマイ・ログハウスづくりを夢見る。
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