流木丸で出発!
手を振って別れを次げ、ユーコン川を下り、アサバスカン・インディアンの妻のもと「ビーバー」まで行くピア |
ピアとの会話のなかでわかったことは、彼はケベック出身のログビルダーらしく、いまからイカダでユーコン川を下り、アサバスカン・インディアンの妻のもと「ビーバー」まで行くのだという。8月下旬にさしかかり、日に日に冷え込むような時期だというのにナップサック一つしか持たない薄着の装備の男には考えられない一言だ。自分のイカダは重量級だが、ピアのイカダはホントに軽くてフットワークがある。
そんな手製のイカダで数百キロ離れたところまで気軽な気持ちで行こうと考えていることに驚いてしまった。食事を一緒に済ませ、僕に手を振りながらスタートしたピアの姿が印象深かった。
必死に舵を取ろうと試みる (写真:松本さん提供) |
手作り筏の製作に段取りも含めて4日間も費やしたため、ドーソンには一週間ほども滞在することになる。流木だけでイカダを作り、自生する生木を切り出したりしなかったことを誇りに思い、「流木丸」と命名する。キャンプ場で仲良くなった松本さんに僕の流木丸(筏)の出航を手伝ってもらい、いよいよ僕にとって忘れないユーコン筏旅が始まる。
筏本体を支えている枕木のロックを解いて、流木丸を勢い良くユーコン川に滑らせていく。沈むかどうかさえぶっつけ本番の重量級筏の流木丸。ぷっかりういてユーコン川の流れにのっていく。とりあえず離陸には成功した!こういう旅こそが自分らしい形だと喜びと緊張感を感じて出発。
水流の力で削られた山。 あちこちで見られるカットバンク。 |
流木丸の舵取り用に長い竿を用意していたので、浅瀬は竿で川底や瀬に露出する岩などを突いてコントロールをしてバランスを取る。カヌーで川下りをしてたときは「漕ぎ進む」という表現に近いニュアンスだったが、実は流木丸は「流される」だけでありほぼ制御不能に近いものがある。
パドルの代わりになるものを後ろに取り付けたがまるで役にたたず、左右にそのパドルを動かしても流木丸の進む方向が変化するわけでもなく、船体が左右に動くだけであった。
制御が利かないことで、その後たいへんな事態に遭遇することを僕はまだこの時点では気づいていない。
杉田えいすけ さん
福岡出身。九州産業大学で写真を専攻。自転車、登山、ロック・クライミング、カヤックが大好き。現在、税理士の資格取得に力を注ぐ福岡の自転車メッセンジャー。“九州のへそ”人吉で税理士事務所の設立とマイ・ログハウスづくりを夢見る。
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