カナディアンライフ
カナディアンライフアイウエオな毎日 その42 By Michelle Leon

気さす朝の目覚めに冬を知り」


冷気さす朝の目覚めに冬を知り

お天気の良い夏があっという間に終わりを告げ、森の木々も 黄金とくすんだ緑に彩られ、落葉の道をかさかさと歩くようになったら、短い秋はもう冬の季節に押しやられるようです。
今住んでいる家は一部に暖房がなく、わたしはその暖房がない部屋にいるので、朝夕の冷気を室内でも感 ます。窓の外は雑木林で、黄金色の木々と常緑樹の枝の間を器用にリスが走ってゆきます。これから長い雨の冬です。
子供が大きくなってしまったので、もうイベントにわくわくすることもなくなり、家の中も静かになってしまいましたので、ことのほか冬の静けさを寂しく思います。

そんなおり、アンパンマンの作者である「やなせたかし氏」の訃報を知りました。実はわたしは、昔からマ ンガや絵本が大好きで、学生の頃はアニメーションの世界にも足を突っ込んでいました。
制作プロダクションでアルバイトもしていたことがあるほどのアニメ好きです。アニメーションという言葉 が一般的になるずっと前から、漫画の世界で育ってきました。
やなせ氏の絵本に出会ったのは「やさしいライオン」からでしょうか。今も絵本は大切に持っています。

子どもたちが小さい頃はアンパンマンの絵本も買いました。でもまだその頃は、アンパンマンも子どもたち のもの、で私自身は深く見ていなかった。
いつだったか忘れましたが、子どもたちももう大きくなって、アンパンマンも卒業した頃に、わたしはなぜ かアンパンマンに惹かれました。なにがきっかけだったのかわからないのですが、アンパンパンの中にやなせさんの色々なメッセージ、哲 学、深い思いを見つけたんです。それらはすべて、子供に向けられたものでは決してなく、おとなになってはじめて気がつく深いメッセー ジでした。それに気がついて、はじめてわたしはアンパンマンに心酔し、自らもアンパンマンに励まされるようになりました。こんなこと を書くと、「いい大人のおばさんが…」とあきれられるかもしれません。

冷気さす朝の目覚めに冬を知り でも、本当に、アンパンマンの中には大人になってはじめて わかる深い教えがあるのです。原作の絵本だけではなく、アンパンマンのアニメはやなせ氏が曲の殆どを書き、ストーリーにも細部に あたって監修してきました。ですから、曲1曲の歌詞の中にもどれだ けたくさんの思いがあるかがわかります。アニメの対象年齢の子供には決してわからないけれど。

このことに関しては、やなせ氏自身もそう言っておられま す。アンパンマンの中にはやなせ氏の世の中へのメッセージ、哲学を表した、と。曲の歌詞にも。それは幼い子供には今はわからない けれど、それでいいのだと。歌い続けて、歌い継がれてゆくいつの日か、わかる日が来ると思う、と氏自身で言及されています。おと なになっても気が付かないまま終わってしまうかもしれないけれど、わたしは気がつけてよかったと心から思います。だからこそ、こ んなにおばちゃんになってしまった今のわたしですらもアンパンマンは励ましてくれます。

冷気さす朝の目覚めに冬を知りアンパンマンの最初の絵本は決して子供のために書かれたも のではありません。大人に書かれたものでした。アンパンマンは世の様々の苦しみに苦悩する、ただのみすぼらしい中年のおじさんで した。自分には誰も救う力がない、そう言って悲しみ苦しむおじさんが、唯一できたことが自らの顔(命)をひもじい人に与えてあげ ることだけだった。これがやなせ氏が最初に描いた大人のためのアンパンマン絵本だったんです。みなさん、もし機会があったら、ぜ ひ初期の絵本をご覧になってみてください。アンパンマンの主題歌を、ゆっくり歌い直してみてください。

あなたの心の扉を叩く何かに出会えるかもしれません。

次回ももう少しアンパンマンの話をさせてください。



Michelle Leon Michelle Leon
カナダ在住の日系人の皆様のための医療アドバイス、妊娠、出産のサポート、産後のケア、母乳マッサージ、授乳指導、ベビー検診、育児指導、離乳食指導、応急処置クラスなどを随時開催しております。

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