カナディアンライフ
カナディアンライフアイウエオな毎日 その44 By Michelle Leon

(わん)をおく数すくなくて寂し春」


椀(わん)をおく数すくなくて寂し春

アイウエオの毎日、約3年続いたエッセイですが、拙いタイトル、拙い文を長く続けさせて下さり、また読んで下さり、ありがとうございました。
とうとうアイウエオ最後の3文字でまとめて最終回です。
本当は1月、新春のご挨拶とともに、と思いましたが、年明けのおめでたいのと、タイトルがどうしても暗くてあわないので、2月にしました、すみません。

皆様、素敵な新年をお迎えになられましたでしょうか?わたしは年末年始の引っ越しで、荷造りをして年末をすごし、荷開けをしながら新年をむかえました。 すでに1か月たったわけですが、いまだ箱はまだ山になっており、ガレージの中も箱でいっぱいで、車を入れられません。

このエッセイを書き出してから3年近く過ぎたわけで、時のすぎるのが早くてびっくりなんですが、その間に私の人生も大きな変化をし、今もまだその渦中にある感じです。
おもえば、過去20数年、必死で5人の子育てをしながら、自分なりに仕事を続け、家庭を守ってきたつもりでしたが、この2年の間にはシングルになり、いろいろ問題を抱えての再出発となりました。それはいいのですが、わたしの再出発に支えとしている子どもたちの長男次男があいついで家を出てしまい、精神的にずいぶん打撃を受けてしまいました。

子供を守り、支えてきたはずの自分が、いつの間にか子供を支えに生きてきたことを思い知りました。 子供は、といえば、出てしまえば、親のことはもうどこかの隅に追いやられてしまい、ろくに連絡もくれません。 子供の成長と親との別離は必ずついてくるもの、人は生まれるときと死ぬときはどうあがいても一人です。でも生きている時一人では生きていけないのもまた、人。
人という生きものの人生は、なんとせつなく哀しい部分があるのでしょうね。 その上、哀しいかな、親は一旦親になると一生親。子供が小さくても大きくても、離れてしまっても、子供の健康、安全、幸せを24時間休みなく案じるのが親。 子供にとっては目の前に広がる人生は夢多き未来、その視野の中には親はほとんど存在しません。親は常に子供の視野の後ろになってしまいます。 子供が親をまっすぐに見つめてくれるのは、生れてからわずか数年。この数年がどれほど愛おしく、素晴らしい時間でしょうか。
神様が人生の中で与えてくださった何ものにも変えられない至宝の時間であると、今わかります。生きている中で最も素晴らしい、きらめきと喜びの時間でした。

椀(わん)をおく数すくなくて寂し春 給食のおばさんみたいに、いつも大量のごはんをつくり、大量のお皿を片付けてきましたが、いつのまにかその数も減ってしまいました。 当初は急な環境変化と生活のストレスとこれからの不安などが渦巻くように押し寄せて、ふとしたときにすぐ泣けてしまうくらい不安定でした。仕事柄人前では笑顔をキープし、 他の方を励ます役割ですので、ひとりになったときの落ち込みは相当でした。Empty nest syndromeと呼ばれる状態で、一種うつに近くなる落ち込みでしたが、今、ようやく少しずつ慣れつつあります。いつかは一人になる、そのカウントダウンはもう始まっているのですが…

椀(わん)をおく数すくなくて寂し春 今、引っ越した新しい貸家には小綺麗な庭があって、そこに大好きな桜の木があります。ちいさな林檎の木もブルーベリーの苗もあります。わたしは果樹が大好きですし、何よりも桜が好き。 以前に住んでいた家の近くの小学校に桜の木があり、その木が大好きで、散歩のたびにその木のそばに立ち止まり声をかけていましたが、引っ越して会えなくなったので寂しかったのです。 今は庭の桜が春にどんな花をつけてくれるのかがとても楽しみです。
ものいわぬ小さな命の恵み、そばに居てくれる動物たちの眼差し、そこにもまた愛はあります。その愛を支えに、まだしばらく頑張って生きてゆこうと思います。

次回からは、また違ったテーマでなにか書かせていただこうと思います。とりあえずは「アイウエオな毎日」、おしまいです。ありがとうございました。

Michelle Leon Michelle Leon
カナダ在住の日系人の皆様のための医療アドバイス、妊娠、出産のサポート、産後のケア、母乳マッサージ、授乳指導、ベビー検診、育児指導、離乳食指導、応急処置クラスなどを随時開催しております。

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