急がず、ゆったりとした気分で悠々と旅を楽しむなら、列車の旅に勝るものはない。
カナダを横断するVIA鉄道は、高速で走る近代的な列車ではないが、北米の昔ながらの旅が楽しめる贅沢な交通機関だ。 バンクーバーからトロントまで、4466kmの道のりをVIA鉄道は時にはのんびりと、時にはハイピッチで走っていく。
太平洋岸のバンクーバーを離れ、数時間もするとのどかな丘陵地帯が始まり、一夜明けるころには、切り立った山並みが続くカナディアン・ロッキー山脈に突入し、バスの窓からでは見れない迫力あふれる山並みが車窓の向こうに広がり始める。氷河湖や手付かずの森林、深く刻まれた渓谷を眺めながらロッキーを抜けると、広大な小麦畑が地平線の彼方まで続く草原地帯となり、いけどもいけども景色が変わらない。カナダの中央部を過ぎると、亜寒帯樹林が五大湖の水面に映る人里を遠く離れたオンタリオ州の森林地帯に入り、やがて森の景色から徐々に人家が見える景色に変わって、バンクーバーを出発してから4日かけた後にようやくカナダ最大の都市トロントに到着する。 |