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スキルドワーカークラスの現状と今後について-その1
カナダ移民のカテゴリーは、「エコノミッククラス」「ファミリークラス」「難民クラス」の3つに分類されている。

エコノミッククラスは、カナダに移住する移民全体の60%以上を占め、少子化と高齢化による労働力不足を回避するための切り札として特に重視されているカテゴリーだ。エコノミッククラスはさらに「スキルドワーカー」「ビジネス」「PNP(州指名プログラム)」に分類されているが、スキルドワーカークラスはこのうち最も大きな割合を占めている。今回はスキルドワーカークラスの現状と今後の方向性についてとり上げたい。

スキルドワーカークラスは以前インディペンデントクラス(個人移民) と呼ばれ、文字通り個人でカナダに渡り、移住後にカナダでの経済的貢献を期待されるグループである。現在の移民法では、申請者及び同伴者(配偶者、パートナー)の学歴、職歴、語学力、カナダでの就学や就労経験などがポイント化され、合格基準点に達していること、そして経済的自立が可能であることが審査の重要なポイントとなっている。

現在の合格基準点は67点で(2003年9月以降75点から下方修正された)、この点数は移民省大臣によって適宜変更が可能とされている。政治的な思惑も絡み、変更のタイミングや変更内容を予想することは難しいが、現在のところ、さらに合格基準点が下がることは考えにくい。

従ってこのクラスから永住権を獲得するにはまず、67点以上をマークすることが必要である。カナダで就学や就労経験のない人々にとって、この合格点をクリアすることは決して容易ではない。例えば、カナダでの経験が一切ない独身者の4大卒(または短大卒)、職歴4年以上の申請者が67点を満たすためには、「読む・書く・話す・聞く」4つの語学力スキルで上級レベルを取得しなければならない。カナダ移民申請時に必要なIELTSまたはCELPIPですべて上級レベルのスコアを取得するのは至難の業である。いざ移民申請の準備を始めたものの、目標のスコア取得に1年近くかかるという例も珍しくない。

現行のポイント制は当面続くものと予想されるが、同時に現在、スキルドワーカーとして無事移住できても、出身国で従事していた職業と同じ職に就けないケースが問題となっている。テレビでも紹介され話題となった極端な例として、過去に出身国で医者として働いていた人が、移民後にタクシーの運転手をしているというものがある。カナダ移民省は現行のポイントシステムと雇用のミスマッチの問題を深刻にとらえており、改善策を草案中である。

カナダ移住後すぐに希望した職業に就けない理由はいくつか考えられるが、医者、エンジニアなどの専門職については、出身国で取得した資格や修了証がそのまま使えず、各州での認知、評価に時間がかかるのが原因とされている。従ってこの評価プロセスの改善が急務である。多くの場合、語学力不足に加えてカナダでの学歴、職歴、人的ネットワークがないことが就職の際に不利に働いている面は否めないが、カナダでの就労経験をもつ申請者を優遇する政策の方向性については、今後さらに強化される可能性が高い。

2004年7月の移民法規則改正の際に行われたポイントシステムにおける雇用主保証(Arranged Employment)の基準改正も、このカナダ移民省の方向性に沿ったものである(雇用主保証のポイントは、カナダ永住権取得後の雇用を保証する就職内定を獲得していることが前提となる)。

改正点の第一は、改正前はワークビザで就労中の申請者は申請時にビザの残りが12ヵ月以上ある場合に限りポイントを取得できたが、法改正後はこの12ヵ月という条件がなくなった。その代わり、ビザ申請時及び発行時にワークビザを保有していることが必要となった。これは申請者にとって、ワークビザが途中で切れないよう更新し続けなければならず負担である半面、移住後は当面雇用を心配する必要がない。また、NAFTA(北米自由貿易協定) の専門職分野で働くアメリカ人、メキシコ人にとっては非常に有利な改正である。同カテゴリーでは更新は比較的容易なもののワークビザは1年しか許可されないため、従来は雇用保証のポイントを獲得できなかったからである。

第二点目は、雇用主保証のポイントが得られる職業についての明確化である。改正によってこのポイントが得られるのはスキルドワーカーの職種(National Occupation Classificationのスキルタイプ0、スキルレベルA及びB)に限られることになった。スキルレベルの高い移民者の方が(雇用確保も含めて)移住後の経済的貢献が高いと判断されるからである。

第三に、雇用主保証のポイントを獲得できる層が拡大された点である。従来は、HRSDC(カナダ人材技能開発省)より認可された、カナダ国籍や永住権保有者だけではカバーできない職種に対し発行されるワークビザ保有者のみ、ポイント獲得の対象となっていたが、今回の改正によって、一般のワークビザ保有者へも間口が広げられたのである。具体的にはカレッジ卒業後のプラクティカム(実習期間)のワークビザやワーキングホリデービザの保有者などがその対象となる。

以上のように、昨年行なわれた法規改正により、カナダですでに就労経験があり、かつ永住権取得後の就職が内定している申請者にとっての条件が有利となった。つまり、移住後に職が見つからないというリスクの低い申請者に対し、積極的に永住権を発行するというのがカナダ移民政策の方向性であると考えられる。

次回は、スキルドワーカークラスに関連してカナダ就学経験をもつ人への優遇策について取り上げたい。

QLSeeker Canada Inc. 公認移民コンサルタント 
上原敏靖 URL www.qlseeker.ca

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