投資・移住記事

スキルドワーカークラスの現状と今後について-その2。


政権交代による今後の影響


2006年1月23日に行われた下院総選挙の結果、過去12年間にわたり政権を担当した自由党が破れマイノリティーの保守党政権が誕生した。一般的に保守党は自由党に比べて移民受け入れに消極的であるというイメージだが、マイノリティーな政権ゆえ、ドラスティックな政策転換には野党の合意が必要である。そのため自由党が掲げてきたカナダの人口の1%を目標に移民を受け入れるという基本方針には、大きな変更はない見通しだ。移民省大臣に就任したソルバーグ氏もこの点をふまえ、年間目標として既に承認されている現行の移民受け入れ数の変更や、ファミリークラスの受け入れ人数の削減は行わないと語っている。


また一方で、エコノミッククラス重視の姿勢は明らか、と見ていいだろう。人材不足が深刻化するいくつかの産業セクターでは、州政府との協力によりワークビザを優先的に発行するといった政策も方向性として挙がっている。これはカナダで就労経験を積んだ外国人労働者を最終的に移民に導くための政策である。さらに、ハーパー首相が公約として掲げたランディングフィー(永住権発行費用)の削減や、海外の学位や資格を認定するための新しい機関の発足などを最優先事項として取り組むと発表している。


雇用主保証のポイント取得法


さて、前回はスキルドワーカークラスにおけるカナダ就労経験の重視とポイントシステムにおける雇用主保証の基準改正について説明した。今回はさらに補足説明をした上で、カナダでの就学、就労経験を生かしていかに雇用主保証のポイントを取得するか、そのステップについて取り上げてみたい。


まずスキルルドワーカーで申請する場合、永住権取得後のジョブを保証されることによって移民審査上極めて有利になる点を改めて強調したい。つまり、雇用主保証ポイントを獲得することにより雇用主保証としての10点に加え、適応性の項目で5点のボーナス点が与えられる。このため語学力や職歴の不足が一気に解消され合格基準点に達する場合が多い。また、現行の移民法では担当オフィサーに申請者の経済自立可能性に対しての裁量権が与えられているが、雇用主保証がある場合は、オフィサーからネガティブな判断をされる可能性は、極めて低くなると言える。さらに、雇用主保証はワークビザ申請に比べ雇用主の負担が少なく、カナダ市民や永住権保持者と競合する職種でも審査対象となる。但し、このポイントを獲得するには、申請時にワークビザを保有し、カナダで就労中である場合を除き、ジョブオファーに対するHRSDCの承認が必要になる。
しかし、雇用主がこれまで一度も採用したことのない外国人に、何年もかかる可能性のある永住権発行後のジョブをオファーすることは、例外を除いたとしても常識的に考えて難しいだろう。
2004年の秋、移民申請のために架空のジョブオファーを大量に発行した人材リクルート会社がRCMPから告発され、それに関わった弁護士事務所が事情聴取を受けた事が知られている。このような事件を機に、雇用主保証の審査がより厳しくなったのは言うまでもない。 また実際のところ、現在カナダ国外に在住する申請者がこのポイントを獲得できるのは、過去にカナダで雇用されたことのある雇用主からオファーを得ている場合が圧倒的に多い。 雇用主保証のポイントは一朝一夕に獲得できないのも事実である。


こうした背景もあり、雇用主保証のポイントを得るにはまずワークビザを取得し、さらに永住権取得後の雇用を約束してもらうというパターンが一般的になっている。カナダで就労中に永住権を申請するメリットとして、雇用主からサポートを受けやすいだけでなく、米国バッファローのカナダ大使館へ申請できるという点も挙げられる。バッファローオフィスへ申請した場合、日本から(日本を管轄する)マニラオフィスに申請するよりもプロセスタイムがはるかに短くなっているからだ。


ワークビザ取得法について


それではワークビザの取得は一体どうしたら可能だろうか。重要なのは申請を行う地域において人材の不足する職種に該当すること、職務の遂行に必要な学歴や資格を有していることである。これらを満たすには、カナダのコミュニティーカレッジや大学で学び、Post-Graduateのワークビザを取得する方法がある。このPost-Graduateのワークビザを取得するにはHRSDCの承認は必要がない。また、永住権申請の際、同一雇用主からのジョブオファーに限りHRSDCの承認を得ずに雇用主保証のポイントをクレームできる。さらに、現行のポイントシステムでは2年以上カナダでフルタイムの就学経験を持つ場合、適応性の項目で5点獲得できることも移民申請上有利である。


また従来最長1年間しか許可されなかったPost-Graduateのワークビザが、2005年春より、MTV(モントリオール、トロント、バンクーバー)以外のカレッジ、大学等で2年以上学んだ学生が、MTV以外で所在する会社に就職内定した場合、最長2年間のワークビザを取得できることになった。これによりカナダで就労中に移民申請し永住権を取得するという方法も、より現実的なオプションになったと言える。


現在、ワーキングホリデーや語学学習のためカナダに滞在されている方で、カナダ永住権取得を希望する場合は、MTV以外にある大学やカレッジでの2年以上のコースを修了、その後Post-Graduateのワークビザを取得するというプロセスを、選択肢の一つとして検討されることをお勧めしたい。この場合カナダのスキルドワーカークラスとして申請するために必要なポイントを、ステップを踏みながらより確実に獲得できるとともに、永住権取得後の経済的安定を可能にするための就労経験を着実に積むことができるからである。


QLSeeker Canada Inc. 公認移民コンサルタント 
上原敏靖 URL www.qlseeker.ca
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