<前回のあらすじ>
カナダに着た理由の一つもジェンダーフリーに関係があると語るヒロミちゃん。思わぬ話の展開で、クリスティーン、ジミー、シンジくんがヒロミちゃんに注目した
用事もないのに何回もテーブルに来るキョウコちゃんがお皿を下げるのをまって、ヒロミちゃんが話し出した。
日本ではまだまだ女性の地位が低いわ。私の会社でも、女性社員はお茶くみをさせられたし、責任がある仕事は与えてもらえなかった。一緒に入社した男性は出世したけど、私にはそのチャンスもなかった。どうせ一度しかない人生だから、自分の力を思う存分発揮できる環境が欲しくなったの。
女性がお茶くみをさせられると聞いて驚いたクリスティーンは、怒ったような表情で言った。
それはひどい差別だわ。お茶くみなんて私だったら絶対断るわ。それに責任がない仕事なんてしたくもないわ。シンジは、女性がお茶くみさせられることについてどう思う?
シンジは、自分が怒られているようで赤くなった。今まで、そんなことを考えたこともなかったのだ。でも、ここは、日本男子の顔を立てつつ、国際人として対面を保とう、などと、とっさに考えながら答えた。
確かにそんな習慣が残ってます。きっと、男性がお茶を出すより、かわいい女性が出した方がおいしいからでしょう。しかし、男女差別という点で、今後、改善されるべきだと思います。
なんだかわけがわからないような顔をして、クリスティーンがヒロミちゃんに尋ねた。
ヒロミは、カナダに来て男女差別に遇ったことはある?
いつも考えていることなので、ヒロミちゃんはよどみなく答えた。
今のところないわ。バスの運転手や消防士に女性がいたり、テレビのニュースキャスターに女性が多かったり、まるで男女差別や区別がないみたい。カナダに男女差別なんかあるの?
今まで会話に参加できなかったジミーが答えようとするより早く、クリスティーンが口を切った。
(つづく) |