<前回のあらすじ>
両親から経済的な援助を受けられなくなったシンジくんは、将来の計画を立てるために肝をすえてデイビッドに相談することにした。
午後のクラスが終わるのを待って、シンジくんはデイビットを教員室に訪ねた。デイビッドは誰もいなくなった教室にシンジ君をさそい、今までの経緯を熱心に聞いてくれた。
そうか・・・、これから本当に大変だよ。でも、決心を変えるつもりがないのなら、まず働けるビザを取ることに焦点をあててプランを立ててみよう。
「まったく解決法がない」と言われるかと心配していたシンジ君は、デイビッドの言葉に一抹の希望を見出した。デイビッドは、シンジ君がよくわかるように、スピードを落としながら話を進めた。
カナダには、学校でならったスキルを職場で実習しながら収入が得られる CO-OPプログラムというものがあり、留学生も参加できるんだ。CO-OPプログラムは大学、専門学校、カレッジで行われていて、我々の学校のカレッジ部門でも行っている。
この学校にもあると聞いて、ますますシンジ君の気持ちが明るくなった。はやる気持ちを抑えながらシンジ君は身を乗り出して質問した。
そのCO-OPプログラムに僕も入れますか?費用や期間も教えてください。こうなったら、何が何でもそのCO-OPプログラムを目指します!
シンジ君の意気込みに微笑みを見せたものの、デイビッドはいままで以上に真剣な表情なり、シンジ君の目をじっと見ながら説明を始めた。
正直に言って、そんなに簡単じゃない。CO-OPプログラムに入るには、まず中級以上の英語力が必要だ。TOEFLで言えば530点、TOEICだと730点ぐらいだね。分野によってはもっと英語力が必要になる。
シンジ君は内心がっくりした。現在の英語力は初心者の上でTOEFLなど受けたこともない。ちょっと目線が下を向いたシンジ君にデイビッドは説明を続けた
費用はうちの学校のCO-OPプログラムでいえば4800ドルからだ。クラス内の授業と実習が4 ヵ月づつで合計8ヵ月のプログラムだ。実習が始まれば有給なので切り詰めれば自活することも可能だろうね。でも、実習先を見つけるには実際の就職と同じで、職場を探して面接にパスしなければならない。
それに、実習期間はふつう最高でも半年前後だから、その後もカナダで自活するには、就労ビザを取得するしかない。就労ビザの取得は難しくて、準備に最低1年以上は必要だ。それに時間をかけても保障はないよ。
聞けば聞くほど状況は厳しいことがわかりシンジ君の気持ちが落ちこんだ。しかし、ここであきらめるわけにはいかない。青ざめた顔で、シンジ君は尋ねた。
僕の様な状況からスタートして就労ビザをとった人はいるのでしょうか。
シンジ君を見つめながら話すデイビッドの口から出た言葉は意表をつくものだった。
成功例はいくらでもあるよ。(つづく) |