カナダでは今年2021年から新しい祝日が加わります。この記事では、この祝日ができた背景とイベントなどを紹介していきたいと思います。ドイツのナチス政権によって行われたホロコーストは日本でも知っている人が多いと思いますが実はカナダでもそれに近い”文化的ジェノサイド”が行われていたのです。
カナダ政府の公式ホームページによるとこの祝日は残虐な文化的ジェノサイドによって深く傷つけられた子どもたちや寄宿学校による虐待によって殺害された子どもたちに思いをはせ、そしてその事実をカナダ政府が認め和解したことを記念する祝日です。
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カナダでは1830年から1990年まで政府とカトリック教会によって先住民の同化政策が行われていました。ここでいう先住民とはファーストネーションズ、メティス、イヌイットを指します。合計約15万人以上の子どもたちが親元から強制的に引き離されて寄宿学校に入れられました。寄宿学校では母語の使用や文化的な活動を行うことが禁止されていました。それだけではなく寄宿学校による日常的な虐待が横行しており、これまでに4000人以上の子どもたちの遺体が見つかっています。(実際になくなった子供たちはもっと多いとされています)当然のことながら子供たちの親はその学校で何が起こっていたのかも知らず、多くの子どもたちは地元のコミュニティーにも戻らなかったため今わかっていいる事実はその学校を生き延びた元生徒たちの証言によってわかったこととされています。
こちらはBBC Newsによる当時寄宿学校に通っていた生徒によるインタビューです。彼女は補聴器をつけていますが、その耳の障がいは寄宿学校の教師または教会の人間による虐待のせいだったと彼女は話しています。
https://www.bbc.com/news/av/world-us-canada-57337300
このような悲しい歴史を持つカナダでは先住民団体と政府の間に大きな亀裂がありましたが2008年に事態が大きく変化します。当時の首相であるステファンハーパーはこの歴史的出来事について謝罪し、彼によって”カナダ事実、調停委員会”が設立されました。その委員会の調査によって寄宿学校による質の低い教育制度やそれがのちの卒業生たちの生涯年収の低さに影響したこと、さらには日常的な虐待や性的暴行が行われていたこと、それが元生徒たちのトラウマになって今も影響を与え続けていることが明らかになり最終的には委員会によってこの出来事が文化的ジェノサイドだったとする報告書が2015年に公表されています。カナダ政府はこの出来事で被害を受けた約2万5000に補償も行っています。
2013年にはカナダで行われたた残虐的なジェノサイドを忘れないよう次の世代に語り継げる目的としてOrange shirt day(オレンジシャツデー)が作られました。2020年にはOrange shirt dayを祝日とする法案が提案され、2021年に215人の子どもの遺体が無記名の墓から発見されたことを機に6月には政府によって正式に祝日として認められました。
最後に、今年行われる予定をいつくか紹介したいと思います。
UBCの各学部によって主催された国際マーチが行われます。場所はUBC
Indian Residential School History and dialogue centreの前です。
https://apsc.ubc.ca/event/2021/save-date-national-day-truth-and-reconciliation
バンクーバーアートギャラリーによって主催されるこちらのイベントでは先 住民のコーストサリッシュ族の伝統的な踊りや衣装と現代の音楽が調和した パフォーマンスを見ることができます。こちらのイベントは無料で参加する ことができます。場所はアートギャラリーノースプラザで行われます。
https://www.vanartgallery.bc.ca/events/orange-shirt-day-2021
こちらのイベントではPrince Rupert Middle School Track & Fieldで最低でも215周歩くというイベントです。他のイベントでも歩くイベントがよく見受けられますが、それは寄宿学校から逃げ出そうとした際に道の途中で亡くなってしまった子供の名誉のために行われています。
https://www.orangeshirtday.org/british-columbia.html
「祝日」としてめでたく祝える日ではありませんが、過去の過ちを心に刻み、現代の人たちにもこの歴史を知っていただく重要な日です。みなさんも明日のお休みに、オレンジのシャツを着て出掛けてみてはいかがでしょうか。もしお時間があれば、イベントに参加し、休日を違う風に過ごしてみましょう。
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