酔っても形を崩さず?


 

日本人はお酒を飲むのが大好き。
元旦に家族そろって飲むお屠蘇から始まって、学校のコンパ、仕事帰りの一杯、夏になればビヤガーデン、冬になれば鍋を囲んでまた一杯と、何かと言えばよく飲む。世界の国と比べても、「日本は飲むことに関してはチャンピオンだろう」と思う人も多いだろうが、実は、日本人成人の一人当たりの年間アルコール消費量は7.4リットルで、世界で26位。トップのルクセンブルグの消費量(17.5リットル)の半分もない。(WHO World Heath Statistics 2005)

カナダはどうかといえば、日本よりもチョット成績が良く、24位(一人当たりの消費量は8.3リットル)。
カナダに住んでいると、それほど飲む機会があるようには思えないので、これもちょっと驚きだ。カナダ人がもっとも多く消費するアルコール類はビールで、その次に多いのがワインだ。

さて、日本とカナダでは一人当たりの消費量は似ているものの、飲む文化そのものはまったく違う。
たとえば、カナダで、「一杯飲みにいかない?」という質問を受けることはない。「お酒を飲みながら話そうよ」っていう習慣がないからだ。また、「酔う」ことに対する許容度も日本と欧米では違う。
日本では「酔う」ことにひじょうに寛容だが、欧米では酔った人は嫌悪の目で見られてしまう。だから、公共の場で酔った人を見ることはまずない。

「酔っても形を崩さず」がいいか、「飲んだときぐらい、いいじゃないの」という文化がいいか・・・・
その答えは、カナダでは「酔っても形を崩さず」が良く、日本では「飲んだときぐらい、いいじゃないの」で良いのだと思うけど、どうでしょう?

アルコール消費量トップ30

ルクセンブルク、チェコ、アイルランド、フランス、ドイツ、オーストリア、ポルトガル、スロバキア、スペイン、デンマーク、ハンガリー、スイス、ロシア、フィンランド、英国、ベルギー、ニュージーランド、オランダ、ギリシャ、オーストラリア、イタリア、ポーランド、米国、カナダ、韓国、日本、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、ブラジル

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謙遜のシチュエーション


 

謙遜が美徳とされている日本では、自分が他人より優れていると思っても、「私などは、たいしたことはありませんよ」などど言う。
しかし、あくまでもマナーとして謙遜しているだけだから、シチュエーションによっては謙遜しない場合だってある。例えば、就職の面接で「わたしなどはダメですよ」なんていう人はいないだろう。日本人は誰でも、謙遜する時と場所をうまく使い分けているのだ。

ところで、欧米の感覚からすると、謙遜することは自己呈示しないことと同じで、「自己呈示ができない人は、自尊心が低い人である」ということになってしまう。

日本とカナダの比較研究を行った、東京大学大学院人文社会研究科の山口勧教授は、「欧米の研究者が行った日本人研究には誤解が多く、その一つに“日本人は北米人よりも自尊心が低い”というものがある」と発表している。
(自尊心およびその自己呈示に関する日本とカナダとの国際比較。2004年)

山口教授はこの比較研究で、日本人の自尊心が決して欧米人に劣らないことや、謙遜する習慣が自己呈示したい気持ちを抑えてることを説明しているが、いくら説明したところで、一般の欧米人が日本の謙遜の文化を理解するとは思わない。また、理論として理解されたとしても、実生活において、日本人の評価が変わるとは思わない。

欧米で過小評価されないためには、欧米のやり方で勝負するしかない。それには、
欧米式の自己呈示に慣れるしかない。自分を売り込むことに慣れていない日本人には違和感があるかも知れないが、日本でも謙遜する時と場所をうまく使い分けたり、売り込むべきときはそれなりに自己呈示しているのだから、慣れさえすればそんなに難しいものではない。

ちなみに、欧米社会にも謙遜のマナーはあり、普段の会話で自己宣伝が過ぎればイヤミになる。欧米社会でも、シチュエーションによって自己呈示の度合いを変えるのが分別ある行動なのだ。

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