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連載 ユーコン川、カヌーひとり旅


杉田えいすけ さん

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 熊と共有した時


丸々と熟した、野生のブルーベリー

レールを歩き始めてまもなく、ぼろぼろに壊れた筏(いかだ)の残骸が打ちあがっていた。いつ頃のものかわからないが、僕は頭の中で、勝手に時代を超越したイメージを浮かべていた。

一歩踏み出しただけで、みんなと反対方行に来たことを良かったと思った。さらに歩くと、数字が書かれた看板が現れた。またしばらく歩くと、同じ看板がありその数字が一つずつカウントされているようだった。やがて、この看板が1マイルごとに表示されていることに気がついた。

僕は看板の間をどのくらいのペースで進んでいるかを測ってみた。 1マイル20分くらい…。それでいけば、7、8時間歩きつづければカークロスに着く予定になる。 途中のアバラ屋で食事をした後、もくもくと歩いた。 約100メートル間隔にレールの上に熊の糞がある。 それもすごく等間隔にあって、「縄張り」の表現方法であることだとすぐにわかった。 天気はいったん崩れたがすぐに回復し、午後8時ごろにやっと夕日に変化する。深夜0時まで夕日の状態が続く。

途中、また熊(グリズリー)に遭遇。
グリズリーも僕と同じ方向のレール沿いに歩き始めた。
しょうがない。ベアスプレーを片手に、うしろから30メートルほど離れながら、つけるように歩いた。 これまで歩いてきて常に声を上げていたので、声がしゃがれてしまっていた。  がらがら声で「Hey!Bear!」と呼ぶと、ちらっと後ろを振り返っただけで、また悠然とした態度で歩いていく。
クマは僕のことなどなんとも思っちゃいないようだ。
夕日が熊の体を照らし、金毛に見えた。四つ足で歩いている姿がシルエットとなりレールに長い影を落とす。
僕はその姿にみとれながら、ついていくように歩いた。 たまたま偶然出くわし同じ方向に向かって歩く二つの生き物。
それらが時間を共有したという事実がすばらしかった。

5、6分くらい経ったろうか、彼は途中でレールから脱線してブッシュの中に入っていった。
僕はそのスキに後ろからはやく追い越そうと、足早に進んで歩いた。
ところが、グリズリーは5メートル手前のブッシュからまた顔を出す。予想外の接近に、僕は足を止めた。彼も驚いて、再びブッシュに入り身を隠した。ブッシュの中で歩く熊は予想外に速いようだ。
しかも音を立てずに進むことができるらしい。だから、追い越そうにも追い越せなかった。
その後も、何度かブッシュから出たり入ったりを繰り返し、その度にお互いはぎこちない再会をした。
日が沈む頃には、その日、山道も合わせておよそ35キロ以上歩いていた。
線路の近くにテントを張って、日が昇るまで仮眠することにする。(続く)

杉田えいすけ さん杉田えいすけ さん
福岡出身。九州産業大学で写真を専攻。自転車、登山、ロック・クライミング、カヤックが大好き。現在、税理士の資格取得に力を注ぐ福岡の自転車メッセンジャー。“九州のへそ”人吉で税理士事務所の設立とマイ・ログハウスづくりを夢見る。
www.e-adventurous.com


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