カナディアンライフ

カナディアンライフ働く母さん、カナダ子育て奮戦記 その37 By Yasuko Garlick(ガーリック康子)

「おばさん」と呼ばないで



「おばさん」と呼ばないで

「おばさんがやってあげようか?」 「おばさんに貸してごらん。」
「○○ちゃんのおばさん!」
日本人社会に関わりがあると、こんな表現に出会すことがよくある。 でも、どうして「おばさん」なんだろう…。

    「おばさん」には、2つの意味がある。まず、父や母の姉妹、叔父、伯父の妻にあたる人を指す「叔母さん」や「伯母さん」。これは、親族間の関係に基づいた言葉で、「お父さん」や「お母さん」と同じである。もうひとつは、よその大人の女性、特に中年女性を指す「おばさん」。しかし、子どもを持つと、年齢に関係なく、自動的に「おねえさん」から「おばさん」と呼ばれるようになるようだ。例えば小学生の子どもにとって、お隣の家の赤ちゃんのお母さんは、20代でも「おばさん」だろうから、「おばさん」という呼称は、その女性の世代や年齢を越えて、呼ぶ側と呼ばれる側の年齢差や状況にも左右される。けれども、一般的には、誰かがおばさんと呼ぶ時、または呼ばれる時、どうもマイナスのイメージがつきまとう。

「おばさん」と呼ばないで    女性なら誰でも「おばさん」になって、やがて「おばあさん」になるのだから、それは人生のある時期の呼び方に過ぎない、と言われればそれまでかもしれない。けれど、若さ、特に女性の若さに価値が置かれている社会では、「おばさん」という言葉にはプラスの価値が与えられていない。どちらかというとマイナスのイメージを持つ言葉なので、特別親しくもない相手に「おばさん」と呼ばれて、気分を害することがあるのも理解できる。

    確かに私も、年齢的には「おばさん」と呼ばれてもおかしくない年齢ではある。だからと言って、自分をそう呼ぶ気はさらさらない。けれど、間違っても自分を「お姉さん」だと思っているわけでもない。歳を重ねれば、外見は嫌でも「古くなる」が、気分は全く「おばさん」ではないから、自分のイメージと結びつかないのだ。ただし、自分で「私はおばさんだから」と言うのと、人に「あなたはおばさんだから」と言われるのは全然違うとも思う。これはただの悪あがきだろうか。

    こちらでのよその大人の女性の呼び方で、面白いなあと思うことがある。親しくなってくると、友達のお母さんでも、子どもたちがファーストネームで呼ぶようになるのだ。これは、日本との大きな違いだろう。「××のお母さん」でも「ミセス△△」でもない。最初は何だか違和感があったが、ファーストネームで呼ぶことが当たり前の文化では、ごく自然なことなのだ。

「おばさん」と呼ばないで    英語にも「Aunt」という呼び方はあるが、この言葉は日本語の「おばさん」とは若干使い方が違うようだ。「叔母さん」や「伯母さん」以外に、父親や母親の知り合いの女性を呼ぶ時も、親戚としての「おばさん」と同じ感覚で使う。けれど、それ以外の女性を呼ぶ場合には使わない。だから、赤の他人に「おばさん」と呼ばれることはないのだ。私としては、こちらのほうがずっと好きかも知れない。

    幸い、日本にいないおかげで、面と向かって「おばさん」と呼ばれたことはないが、そんな日は永久に来ないことを願う。心はいつも若いのだ。だから、「おばさん」と呼ばないで。


Yasuko GarlickYasuko Garlick (ガーリック康子)

主に翻訳、通訳、チューターを生業とする2児(ティーンエイジャーとトゥィーン)の母。夫はカナダ人。 数カ国に滞在後、現在カナダ在住8年目に突入。
新しく始めたビジネスを軌道に乗せるため、邁進中。



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