カナディアンライフ

カナディアンライフ働く母さん、カナダ子育て奮戦記 その39 By Yasuko Garlick(ガーリック康子)

ハニーと呼ばないで



ハニーと呼ばないで

    「おい」、「母さん」、「ママ」…。「あなた」、「お父さん」、「パパ」…。
日本の夫婦には、お互いをこんな風に呼んでいる人はたくさんいるのだろう。今でこそ、名前で呼びあう夫婦が増えていかも知れないが、お互いを呼ぶ時のパターンは大方こんな感じだと思う。

    かれこれ、20年余り前、私が夫と出会って間もない頃、夫が私に呼びかける時に使った呼び方が「ハニー」。英語圏で、恋人同士や夫婦が、お互いをそう呼ぶことがあるのは知っていたが、別に自分がそう呼ばれたいとは思っていなかったし、今でも思っていない。私には親からもらった名前がある。そう呼ばれる度に、私の名前はハニーじゃないわよ、と言い続けた。しつこく名前で呼んでほしいと繰り返す私に慣れ、そのうちハニーとはほとんど呼ばなくなった。

    だいたい、「ハニー」のもともとの意味は、「蜂蜜」とか「蜜のように甘いもの」である。そんなに甘ったるい呼び方をされても、気持ち悪いとまでは思わないが反応に困る。同じように、甘えたような言葉で返さなくてはならないんだろうか。だいたいこちらからそんな呼び方をすることも、私の性に合わない。結婚間もない夫婦ならまだしも、初めて知り合ってからもう20年以上になる夫婦の間では、いまさら「ハニー」でもない。習慣でそう呼ばれるだけなら、名前で呼んでほしい。

ハニーと呼ばないで

    さて、こちらでは、連れ合いを呼ぶ時、名前で呼ぶのが一般的だと思う。日本のように、子どものいる夫婦が、お互いを「お父さん」、「お母さん」と呼ぶことはない、とずっと思っていた。実際、そういう夫婦に出会ったこともなかった。ところが、である。夫のアジア在住時代からの友人で、私も面識のある男性が、奥さんを「マミー」と呼んだのだ。彼はもともとアメリカの人だが、去年の夏、仕事とレジャーを兼ねてバンクーバーに来ていた。その時、ウィスラーのコテージに一緒に泊まる機会があった。この夫婦には、うちの子たちより少し年上の男の子が2人いる。彼らはさすがにお母さんをもう「マミー」とは呼ばないが、夫の友人は今もそう呼ぶ。はっきり言って驚いた。

    夫には、高校時代に交換留学生として1年間日本に滞在し、その後、ワーキングホリデーで日本で働いた経験がある。しかし、3年で限界がきた。日本とカナダのどちらへ引っ越すかを考えた時、言語環境、生活環境、学習環境、夫にとっての労働環境など、諸々の事情を考えた末、夫の国であるカナダに引っ越すのが最も現実的だった。私にとっては、もちろん日本が一番楽だが、快適に生活できれば、住む場所にそれほどこだわりはない。幸い、英語を「生業」としているおかげで、とりあえず、言葉に困ることもなかった。

ハニーと呼ばないで    夫は、日本の夫婦がお互いを「お父さん」、「お母さん」とか、「パパ」、「ママ」と呼ぶことを知っているから、友人が奥さんを「マミー」と呼ぶことにかなり興味を示した。私の反応見たさに、わざと私を「マミー」と呼んでみたりもした。もちろん、「私、あなたのお母さんじゃないわよ。」という私の反応はわかっているのにである。もしかして、友人のお父さんもお母さんをそう呼んでいたんだろうか。その時は、尋ねる機会を逃してしまったのが残念だが、いずれ聞いてみたいと思っている。

“Honey, I’m home.”
“How was your day?”
アメリカの映画やテレビドラマの台詞に出てきそうなフレーズである。きっと、どこかのお宅では、いつもの夫婦の会話の一部かも知れない。けれど、我が家では、
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
である。家では、こちらのほうがしっくりくる。
国際結婚をしている他の夫婦は、お互いをどう呼び合っているのだろうか。興味のあるところである。


Yasuko GarlickYasuko Garlick (ガーリック康子)

主に翻訳、通訳、チューターを生業とする2児(ティーンエイジャーとトゥィーン)の母。夫はカナダ人。 数カ国に滞在後、現在カナダ在住8年目に突入。
新しく始めたビジネスを軌道に乗せるため、邁進中。



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