カナディアンライフ
カナディアンライフアイウエオな毎日 その43 By Michelle Leon

々と響く歌声、勇気もて」


朗々と響く歌声、勇気もて

東北関東地方を襲った未曾有の震災からはや2年、しかし未だ復興はなされていません。今も仮住まいで将来の不安を抱えたままの方はたくさんいらっしゃいますし、何の被害も見られない我が家に戻ることができない方も大勢おいでです。あの震災は平穏な生活を一瞬にして破壊し、多くの生命を奪い、家族をバラバラにしてしまいました。
震災直後、悲嘆と恐怖が渦巻く彼の地に響いた歌はアンパンマンの歌でした。アンパンマンの歌をたくさんの方々がラジオや有線にリクエストしたからです。

1番だけ紹介します。
そうだ!嬉しいんだ生きる喜び
たとえ胸の傷が痛んでも
何の為に生まれて 何をして生きるのか
答えられないなんて そんなのは嫌だ!
今を生きることで 熱いこころ燃える
だから君は行くんだ微笑んで。
そうだ!嬉しいんだ生きる喜び
たとえ胸の傷が痛んでも。
あぁアンパンマン優しい君は
行け!皆の夢守る為

アンパンマンも何かしら悩みを持って傷ついている、それを乗り越えて、誰かのためにがんばろう、そんな歌です、決して幼児にわかる歌ではありません。やなせたかし氏の作詞した歌は、皆、何かしらメッセージが込められています。それはやなせたかし氏自身が戦争の悲劇を乗り越え、飢えに耐え、愛する人たちの死を乗り越え、仕事や生活の悩みを超えて生きてこられたからです。
傷みを知らない人が、人の痛みを癒やすことはできません。何の為に生まれて 何をして生きるのか、常に自問自答する、どんなに前向きでも、頑張っても、時に避けられない悲劇や苦しみに遭遇することがある、そんなときでも、生き残った私達は、何をすべきなのか。絶望の淵において、希望を見出すものは何なのか。

やなせ氏は言います。「正義とは何か。傷つくことなしに正義は行えない」
一般論的な正義は勝者の言葉です、でも、勝者に対峙して敗者が存在します。敗者は悪でしょうか?勝者は善でしょうか?それが間違っていることは誰もがわかっているはずの簡単な答えではないでしょうか。
やなせ氏の描いたアンパンマンは苦しみ、孤独、悲しみを知っているヒーローです。自分の存在が世の中を平和にする、とか、悪を抹殺するとか、そんなだいそれたことを考えていません。
目の前に困った人がいる、だから自分を犠牲にしても手を差し伸べる。自分のできることを一生懸命行う。アンパンマンの活躍はある意味とても小さくて地味です。
でも、確実に目の前の人を癒やします。失敗もします、傷みも受けます、悩みもします、おびえもします、それでもやっぱり手を差し伸べる、自分を動かす勇気をアンパンマンは持っています。
「今を生きることで 熱いこころ燃える だから君は行くんだ微笑んで。」 この生きる、という時間の終わりには必ず死があります。生命はいつか終わります。それがいつかは誰にもわかりません。
それまでを必死で生きる、最後の時に、悔いを残さないで生き切ること、おもいっきり生きて生きて、生き抜くこと、それをアンパンマンは伝えてくれていると、わたしは思います。

「そうだ!嬉しいんだ生きる喜び
たとえ胸の傷が痛んでも」
アンパンマン、深いです!!

2013年もあっという間に終わります。わたしは年末に引っ越しをしますので、お正月は荷物の中で迎えそうです。皆様の良い新年を心よりお祈りしております。



Michelle Leon Michelle Leon
カナダ在住の日系人の皆様のための医療アドバイス、妊娠、出産のサポート、産後のケア、母乳マッサージ、授乳指導、ベビー検診、育児指導、離乳食指導、応急処置クラスなどを随時開催しております。

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