【前回のあらすじ】
カナダ横断旅行を決心したヒロミちゃんは、まず最初の行き先としてロッキーを選び、バンフに近い小さな町のバックパッカー用ホテルを予約した。

出発の当日、グレーハウンドのバスターミナルまでスティーブが車で送ってくれた。
ヒロミちゃんが乗るバスは午後8時に出発で、ターミナルは乗客で混みあっている。ゲートまでスティーブにスーツケースをもってもらい、いよいよお別れとなったとき、スティーブがやさしくハグしてくれた。

このときになって、ヒロミちゃんは、自分が本当にいいカナダ人の友達をもっていたことに気が付いた。「絶対に涙は見せないで出発しよう」と思っていたのに、やはりガマンできなかった。

バスに乗り込むとき、愛想がいい中年の運転手がドアの脇に立って、乗客一人一人から切符を受け取ってくれた。日焼けしたたくましい体にユニフォームが良く似合っている。仕事が楽しくて仕方がないという感じで、ヒロミちゃんにも陽気に声をかけてくれた。

グレーハウンドは、座席が大きくゆったりとしていて、かなり大きな角度でリクライニングできるので快適だ。隣の席は空席だったので、ヒロミちゃんはますます大きなスペースを独り占めすることになった。

ターミナルを出たバスは、バンクーバーの市外を抜けて国道一号線に入った。国道一号線は、カナダを横断する国道で、文字通り太平洋岸から大西洋岸まで続いている。ラッシュ時は過ぎたものの、国道一号線は車のライトで埋まっていた。

町の灯が段々遠のくのを見ながらつい眠ってしまっていたヒロミちゃんは、運転手のアナウンスで目を覚ました。

気が付いてみるとすでに深夜に近かった。バスを降りてみると、周りの景色は今まで馴染んでいたバンクーバーとはまったく違って本当に田舎に来た感じだ。レストランの周辺には灯りもなく、夜気が肌に冷たい。

ヒロミちゃんはレストランでコーヒーを頼んだ。80セントの安いコーヒーだったが、お腹のなかにしみ渡るようにおいしかった。
休憩を終えてバスに帰ると、運転手がまた陽気に声をかけてくれた。

(続く)

ご紹介する単語やフレーズは、この物語のシチュエーションにマッチした英訳です。 シチュエーションによっては様々な単語やフレーズがあるので、類語辞典などを使って調べてみましょう。