トラベル記事
  とっておきのカナディアン・ホリデー  

成田からバンクーバーまでのフライトは約8時間。
青い山脈を背景にしたバンクーバー空港に着陸すると、一瞬にして澄みきったカナダの空気が機内に入ってきた。座席を立って深呼吸すると、体のなかに残っていた日本の空気が、カナダの空気に溶けてなくなってしまったような気がした。飛行機を降りる時に、「Have a good trip」(よい旅を)と送り出してくれたスチュワーデスの飾らない笑顔が、おおらかで人の良いカナダを感じさせてくれたこの瞬間から、フレッシュでリッチなカナダの旅は始まった。

バンクーバーは太平洋に面した港町で、ウエストコースト・シティらしく広々として空が大きい。カナダ第3の人口をもちながら公園のように整理され都会の汚れがない。中心街から徒歩で行ける距離にヨット・ハーバーや海岸があり、車で10分も走れば原生林が生い茂る4平方キロメートルもの広さをもった自然公園がある。
カナダの西の玄関であり、国際都市としての機能はすべて備えているのに、ビジネス街を歩く人にもカジュアルな服装が目立ち、肩を張らないリラックスしたムードが漂っている。
シアトルで生まれたスターバックスが、世界中で一番早く人気を集めたのもこの街だ。朝の通勤時には、スターバックスのマークが入ったペーパー・カップを片手にオフィスに向かって歩いていく人々を多く見かける。お昼休みには、通りに面した広場やベンチは、陽射しを浴びながらランチを食べるOLでいっぱいになる。バンクーバーはアパートから通勤先まで歩いて行ける街でもある。ウエストエンドと呼ばれる中層アパートが建ち並ぶ地域が中心街から徒歩で15分の距離にあり、日本のコンビニ屋を含めブティックや各種のレストランが軒を連ねて、学生や若いオフィス・ワーカーのコミュニティーになっている。
豊かな自然に恵まれ、トレンディーでカラフルで洗練された都会文化も備えたバンクーバーは、まるでリゾートのように贅沢な街だ。

バンクーバーから4時間半のフライトで、五大湖の一つであるオンタリオ湖に面したカナダ最大の街、トロントに着く。ニューヨークに似て、石造りの駅ビルや建ち並ぶ高層ビル街が、ゆるぎない歴史とプライドを無言で表しているようだ。バスに乗り降りする人も、テイクアウトのレストランでハンバーガーを注文する人も、ここでは都会のペースで動いている。ファースト・ネーションズ(先住民族)が"人の集まるところ"と呼んだトロントは、今日、文字通り世界各国の人たちが集まった多文化都市になっている。
世界の大都会に共通したアグレッシブなエネルギーをもつ一方で、微笑みを隠しているような優しさも感じるのは、カナダという国柄なのだろう。ラッシュ・アワーに地下鉄の駅に流れ込む人々も、ブリーフ・ケースを抱えたスーツ族も、ソフィスティケートされていながらも、どこかのんびりしている。道路がゴミで埋まることもないし、街を歩いていて危険を感じるようなことはない。そして何よりも、大都会にありがちな絶望感や貧困がない。トロントは観光都市ではないが、都市のもつ機能と人間の情緒が織り成すメトロポリタン・ライフを観光するには格好の街だ。オンタリオ湖から眺めるダウンタウンの景色は絵葉書の様だし、地区ごとに走る由緒あるストリートにそって、エンターテイメント街、エスニック街、ショッピング街、ビジネス街、トレンディーなカルチャー街などができあがっている。ストリート・カーを乗り継ぎながらトロントの街を歩くと、カナダの鼓動が伝わってきた。

トロントのユニオン・ステーションから鉄道に乗って5時間、北米のパリと呼ばれるモントリオールに着く。世界中、行く先々で空気の色や匂いが違う。バンクーバーの空気が胸に染み入るような透明な空気だとすれば、ここの空気は何世代にもわたって煮詰められた美味しくて温もりのある空気だ。
この街に住む人の3分の1はフランス系カナダ人で、フランス語圏の街としてはパリに次ぐ規模と言われている。カナダを建国したイギリスとフランスの文化が今も同居しているのがモントリオールだ。バンクーバーやトロントが、イギリス文化から生まれた街であることが、モントリオールに来るとよく分かる。この街では、駅や店舗の看板一つにもフランス文化のエスプリが感じられる。ホテルを一歩出て角を曲がると、すり減った石畳の曲がりくねった裏道が続き、両脇に軒下が低いジャズ・ハウスやレストランが並んでいる。初めて来た場所なのに郷愁を感じさせるのは、無秩序にも思えるこうした街作りがどこか故郷を感じさせるからだろうか。ここでは、真っ直ぐでない狭い道路を歩くことの楽しさを再発見した。

古さと新しさが共存するのもモントリオールの特徴だ。中心街には北米文化そのものの近代的な高層建築が空に向かってそびえ、隣接する旧市街は文字通り歴史をそのまま今に残している。
パブで膝を付き合せて声高に話し合う人たちも、ストリート・ミュージシャンを囲んで踊り出す人たちも、エスプリあふれるこの街の一こまとして、心のなかに残った。

Attractions of the Year

イースタン・タウンシップス
カナダ首相もサマー・ファームをもつ、とっておきのデスティネーション
Eastern Townships

果樹とタンポポに囲まれた田園を歩き、青空にポッカリ浮かんだ白雲を眺める。あくまでも自分に合ったスローペースで、のんびりと、おおらかに、旅を満喫する…。
モントリオールの南東に位置するイースタン・タウンシップスは、アメリカの独立戦争を逃れて移住したロイヤリスト(英国系の王党派の人々)たちが築いた町で、ワイナリーやファームが多く、アメリカ・ニューイングランド地方の風景を彷彿とさせる地域だ。広くは知られていないが、ポール・マーティン首相もイースタン・タウンシップスの大ファンで、親しい友人や大切な政治家を招くファームをもっている。
イースタン・タウンシップスの中心地シェルブルックには20kmにもおよぶトレイルがあり、ウォーキング・ツアーやサイクリングなどに最適だ。また近くのモン・オルフォール自然公園では、野鳥観察、サイクリング、ハイキング、クルージング、スキー、フィッシング、乗馬などが楽しめる。マサウィピ湖の北にある小さな村ノース・ハトリーは、イースタン・タウンシップスの宝石とも呼ばれ、富豪の別荘が多く、独立戦争時代の建築物が優雅に存在している。 ハイキングの途中で足を休めた農場で、農場のオーナーが開いているレストランでファーム・クッキングに舌鼓をうち、ノミの市やアンティーク・ストアで地元の人々と触れ合えば、もう心はカナディアン。イースタン・タウンシップスは、今カナダで一番行ってみたい、とっておきのデスティネーションだ。
www.tourisme-cantons.qc.ca

CNタワー
CN Tower

トロントの空を見渡すと必ず視界に入ってくるのがトロントのシンボルとも言うべきCNタワーだ。高さ553.33メートルの世界一高い独立構造建築物で、通信ハブとして、またトロント観光の人気スポットとして毎年200万人以上が訪れている。CNタワーは、カナダの鉄道会社カナディアン・ナショナル社(CN)が、カナダ経済の強さを誇示するために1976年に建設したもので、その後、各種の娯楽設備が拡張され観光名所として人気を集めるようになった。
CNタワーには高度342メートル、346メートル、351メートル、447メートルと4つの展望台があり、高度351メートルには回転レストランがある。高度447メートルの展望台は、一般用に開放されている展望台としては世界で最も高く、晴れた日にはナイアガラの滝が眺められる。
世界一高いタワーからの眺めを楽しんだ後は、最新の航空技術を駆使した飛行機を操縦するシミュレーション・ゲームを楽しんだり、144人収容の劇場でCNタワー建設に関するドキュメンタリー映画を観よう。
年中オープン:10:00am - 10:00pm
入場料:大人$23.99、シニア$21.99、子供$18.99
www.cntower.ca

ナイアガラの滝を空から見る
Niagara Helicopters

ナイアガラの滝はカナダとアメリカの国境にまたがっているが、カナダ側からの眺めが圧倒的に迫力がある。馬蹄形をしたこの滝は幅が約1キロもあり、滝に向かって近づくと、体を震わすような轟音が伝わってくる。滝を見るには、「霧の乙女号」と呼ばれるボートで滝つぼ近くまで行く方法、エレベーターで地下に下りて目の前で見る方法、滝のそばに立つ展望タワーから見る方法、ヘリコプターで上空から見る方法と4つの方法がある。ヘリコプターで見る場合、滝の全体が見渡せその迫力は言葉では表せない。滝周辺ののどかで美しい農園地帯も一望でき、写真を撮るにも最高だ。
www.niagarajapan.com/niagarahelicopters

第24回オタワ・インターナショナル・ジャズフェスティバル
Ottawa International Jazz Festival

今年で24回目を迎えたこのフェスティバルは、今までにトニー・ベネット、ウィントン・マルサリス、リンカーンセンター・ジャズオーケストラ、ブランフォード・マルサリス、スタンレー・ジョーダン、コートニー・パイン、ソニー・ロリンズ、テレンス・ブランチャード、ダイアナ・クロール、D.D.ジャクソン、メイナード・ファーガソン、ジョン・メイオール、サルサ・セルティカなどの一流プレーヤーが出演してきた。今年は6月30日から7月4日までオタワの街がジャズ一色で埋まる。
入場料:$42
www.ottawajazzfestival.com

通貨博物館
Currency Museum

オタワのバンク・オブ・カナダ内にある通貨博物館は、カナダの通貨の歴史とコレクションを8つのギャラリーで展示し、カナダのコイン・マニア必見とされている。
設立にあたりバンク・オブ・カナダは、カナダ最古の貨幣協会であるモントリオール古物研究・貨幣協会と、カナダ自治政府が所有していたコレクションを買い上げた。
バンク・オブ・カナダは国会議事堂から数分の距離にあり、7月から10月中旬までガイド付きのツアーもある。

  • ウィンタールード・フェスティバル展(1月31日開始)
    北部カナダをテーマにしたカナダ通貨を紹介
  • ウィンター・ミューズ展(2月14日開始)
    「太陽のドラム」と共にエスキモー文化を紹介
  • アフリカ貨幣展(5月〜9月)
    塩、貝、ビーズ、メタル、布、武器、道具類などが貨幣として利用されていたアフリカの貨幣文化を紹介。

    火曜日〜土曜日:10:30 a.m. - 5 p.m.
    日曜日:1 p.m. - 5 p.m.
    入場無料
    www.currencymuseum.ca

モントリオール・エキスポズ
Montreal Expos

カナダにはトロントのブルー・ジェイズ(アメリカン・リーグ)とモントリオールのエキスポズ(ナショナル・リーグ)の2つの大リーグ・チームがある。ワールド・シリーズに優勝したこともあるブルー・ジェイズに比べて、エキスポズはもう一つ話題が少なかったが、昨シーズンからは日本から大家(おおか)友和投手も参加して、注目を集め出している。エキスポズのホーム・グランドであるオリンピック・スタジアムでは、フランス語圏だけあって場内のアナウンスもフランス語と英語で繰り返される(フランス語で大リーグを観戦できるのはここだけだ)。お祭りが好きなモントリオールっ子は野球の応援も熱狂的だ。
www.montrealexpos.com

フォート・カルガリー
Fort Calgary

西部開拓史の真っ最中だった1875年、カルガリー地域では白人と先住民族の間で非合法のウィスキー取引が行われていて、先住民族の間に多くのアルコール中毒患者を出して大きな社会問題になっていた。これを取り締まるために、カナダ連邦政府は50名のカナダ騎馬警官隊(RCNP)をカルガリーに送った。このRCNPが本拠として築いたのが、今日に伝わるカルガリー砦だ。
砦は、1882年と1887年に改築され、1914年に地域の開発のために本部の建物を除き取り壊されたが、1975年にカルガリー市が誕生100年を祝った際に再建され歴史保護地に指定された。今日、カルガリー砦には開拓時代の生活をしのばせる展示物が並び、訪問客が体験を通じて楽しめるようになっている。
カルガリー砦では、警官隊のごとくに国家掲揚で始まる一日を体験できる。 当時のRCNPの生活は厳しい規律が重んじられ、毎日訓練が行われていた。こうした訓練に加わったり、RCNPの征服を着用したり、砦の建築に参加すれば気分は西部開拓時代にタイムトリップできるだろう。
年中オープン:9:00 am to 5:00 pm
入場料:大人$8、シニア$7、子供$5、6歳以下は無料。
www.fortcalgary.com

クレイグダロック・キャッスル
Craigdarroch Castle

ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアには、その名の通りビクトリア調の建築が多く残っている。イギリス文化を今も強く感じさせる建築物としては、 ダウンタウン中心地の入江に面して立つエンプレス・ホテルはあまりにも有名だが、もう一つの名所が1980年に建築されたクレイグダロック・キャッスルだ。 石炭で巨大な財を築いたロバート・ダンスミュアの自宅で、その広さは2万平方メートルもあり、部屋数は39。ダンスミュア一家の贅を尽くした当時の生活振りがそのまま再現されたいる。クレイグダロック・キャッスルは、 アフタヌーン・ティーが楽しめるエンプレス・ホテルやブッチャート・ガーデンと並んで、ビクトリア観光には欠かせない名所だ。
年中オープン:10 am - 4:30 pm
7月15日〜9月1日までは9 am - 7 pm
入場料:大人$10.00、学生$6.50、12歳までの子供$3.50、5歳以下は無料。
www.craigdarrochcastle.com

ビクトリア・バタフライ博物館
Victoria Butterfly Museum

世界中の蝶や珍しい鳥類を集めたビクトリアのバタフライ博物館が2月末に新装オープンする。屋内のトロピカル・ガーデンのなかを、色鮮やかな蝶が自由に飛び交う様子はまるで別世界だ。蝶の成長過程も展示されていて小学校の授業にも利用されている。ガーデン内の模様は当館ホームページの360度ビデオでも紹介されている。
11月から2月末の期間は休館。
3月から10月30日までは無休。
9:30 am to 4:30 pm
入場料:大人$8.75、シニアと学生$7.75、子供$5、5歳以下は無料。
ファミリー料金:10%割り引き
www.butterflygardens.com

ファイブスター・ホェールウォッチング
Five Star Whale Watching

1985年以来、家族そろって楽しめるホェール・ウォッチングとして知られてきました。ロケーションもサービスも最高です。覆いや洗面所のついた大型または小型ボートをお選びください。ボートを操縦する船長は有資格で生物学者です。
www.5starwhales.com

マック・マイケル・カナディアンアート・コレクション
McMichael Canadian Art Collection

オンタリオ州トロントに隣接するクレインバーグのマック・マイケル・カナディアンアート・コレクション美術館は、カナダを代表する画家グループである「グループ・オブ・セブン」他、先住民族のアーティストの代表作も幅広くコレクションしています。
www.mcmichael.on.ca