連載コラム記事
  カナダに住む ことばと

ワーキング・ホリデー追跡日記


小林久美子さん
学習院大学法学部政治学科卒業。
特許関係の事務所で1年半勤務。
ワーキング・ホリデー・ビザで
2003年9月に渡加。


追跡レポーター:
山本英徳(やまもとひでのり) departure@cside.com


初めての就職活動

昨年の11月半ばを過ぎるころから、バンクーバーにある3つのスキー場が次々とオープンし、いよいよ小林さんが心待ちにしていたスキー・シーズンが始まった。
この時期語学学校のコースを修了した小林さんは仕事を探し始めた。仕事はもちろん生活のためでもあるが、カナダ人を始め様々な国の人と接して色々な文化を吸収したかった。そして何よりも、一生で一度の経験になるかも知れない海外で働くチャンスを逃がしたくなかった。

履歴書を書く

カナダで仕事を探すには、日本と同様、履歴書が大きなウエイトを占める。北米では、履歴書にカバーリング・レターと呼ばれる一枚の手紙を添えることが習慣になっている。そのカバーリング・レターに、小林さんは学生時代のアルバイト経験や、前職で礼儀と作法について学んだこと、接客業に携わりたいことなどを書いて、自分の能力とやる気をアピールした。また、就職希望の会社のオーナーが日本人と思われる場合には、日本語の履歴書も用意した。

就職活動

カバーリング・レターと履歴書は作ったが、実際に仕事を探し出してみると、外国での就職活動は予想以上に難しかった。
接客業に絞って職を探すことを考えた小林さんは、日本食レストラン5軒に履歴書を出した。しかし、全く返答がなかったり、自分の能力より高い英語力が要求されたり、面接で合格した確信をもっていたにもかかわらず採用には至らなかったりで、なかなか職が得られなかった。日本とは環境が違うことを実感しながらも、就職活動を続けた結果、やっと一軒の日本食レストランで仕事が見つかった。

初めての仕事

小林さんが働くことになったレストランは、留学生に人気のあるバンクーバーのロブソン通りにある。寿司、牛どん、照り焼きチキンなどがテイクアウトできる小さな店で、客層はアジア人とカナダ人が半々だ。
小林さんの仕事は、寿司マシーンを使ってお寿司を巻いたり、お客さんから注文を受けてチキンや牛どんなどのホット・ミールを作って出すことだ。想像していた以上に大変な仕事で、昼食時になるととにかく忙しい。労働条件は1日8時間だが、時にはそれ以上働くこともあり、お昼の休憩を取れないくらい忙しい日もある。休憩が取れても5分程度という時などは、大急ぎで食事をして仕事に舞い戻るといった感じだ。仕事を始めて2日目にカナダ人のお客さんに話しかけられたが、リスニング力の不足から全く理解できなくてとても落ち込んでしまった。こうして8時間ほぼ連続で働きづめのなか、英語力の不足を実感したりしながら、初めての職場環境に慣れるまでは小林さんは苦労した。

日本の会社と違う点

カナダのオフィスで働くことについては分からないが、レストランで働いた経験だけで日本とカナダを比較してみると、カナダは従業員同士が日本よりもフレンドリーであると感じた。小林さんはその理由の一つを、だれもが最初からファースト・ネームで呼び合うことだと思っている。従業員はオーナーですらファースト・ネームで呼んでいる。

これからの意気込み
バンクーバーは近くのスキー場でナイトスキーができる

現在の職場は従業員が全員日本人なので、お互いのコミュニケーションでは問題はなく、その点では居心地は良い。しかし、英語を使う機会が少ないので少し物足りなさを感じている。せっかくカナダに来たのだから、できるだけ英語を使ってカナダ人を始め様々な国の人と話す機会が欲しいのだ。たとえお客さんの言葉が分からなくて落ち込むことがあっても、後になって考えると再度挑戦したくなってくる。そこで小林さんは、働いてお金に余裕ができたら再度語学学校に通ったり、英会話サークルに行くなどして、英語環境に積極的に身を置きたいと考えている。一度語学学校のコースを修了し、日本人同士で働く職場を経験してみて、この場所が語学学校の利点が英語力の向上だけでなく、他の国の人といろいろ話し合えて視野を広げることができる場所であることにも気がついた。
自分の大好きなスキーやスノー・ボードを満喫し、雄大な自然をもつカナダという国をじっくり旅するためにも、今は仕事をしてお金を貯めることが必要だ。