特集−一面記事
  カナダで島を買おう カナダのテレビ

テレビを見るとその国の事情が良く分かるものだ。カナダも例外ではない。テレビ番組を通じて、モザイク国家であることや隣国アメリカの存在などが分かり、カナダを概観するのに役立つ。またカナダにおける日本文化の存在もうかがうことができる。

カナダはアメリカとの隣接部分が大きく言語も共有するため、アメリカから流入する文化に強い影響を受けている。テレビも同様で、カナダではアメリカの人気番組をほとんど同時に楽しむことができる。たとえばこの春は、10年以上続いたアメリカの人気コメディ「フレンズ」が放送終了したが、カナダでもアメリカと同日に最終回が放送され大いに盛り上がった。また最近は「リアリティ・プログラム」と呼ばれる、視聴者参加型の勝ち残りゲームの人気が高い。無人島で生存競争をする「サバイバー」、億万長者に弟子入りし事業を学ぶ「アプレンティス」などがあるが、これらもアメリカ製だ。娯楽番組ではアメリカの力が圧倒的で、国内で見られるクイズやドラマの80から90%がアメリカ製という統計もある。

アメリカの番組が多いのは、アメリカのTV会社が巨大な資本を背景にして強力に売り込むからだ。カナダの民放局にとっては、アメリカから人気番組を買う方が、国内で番組を制作するより安い費用で高視聴率を望める。カナダの全国ネットの民法局CTVとグローバルでは、どちらもアメリカ製番組が全放送量の約75%を占め、視聴率の上でもアメリカ製番組で全体の8割を稼いでいる。しかし報道番組になると、一般的にどこの国でもまず身近なニュースを知りたいという心情があるため、カナダでもCBC(カナダ国営放送)を始めカナダ発のニュースの視聴率が高い。CNNなどももちろん見られるが、最近はカナダがイラク戦争に参戦しなかったなど、必ずしもアメリカと協調しない場合もあるので、余計に人々の関心がカナダ発の報道へ向かっているのかもしれない。カナダ人はニュ−スをよく見る国民で、海外のニュースにもよく通じている。移住者が多いため、故郷である諸国の事情への関心が高いのと同時に、超大国アメリカを隣国にもち、世界の中でカナダがいかに独自の役割を果たすべきか、とりわけよく考えざるを得ない事情を反映しているとも言えるだろう。

忘れてならないのは、第二の公用語であるフランス語の番組だ。CBCには終日フランス語放送の局があるし、民間にもフランス語専門局がいくつもある。これらの局は英語局の単なる吹き替えではなく、初めからフランス語で作成された番組を流している。近年世界的に評価の高いケベック州の映画や、フランス系の視点からの報道番組、娯楽番組などが中心だ。本来の役割はフランス系住民向けの放送だが、実はフランス語を学ぶ英語系カナダ人にもよく利用されていて、勉強のために視聴している学生が結構多いそうだ。

ところでカナダと日本で大きく事情が違うのは、ケーブル・テレビの存在だ。カナダではほとんどの家庭がケーブル・テレビに加入し、好みのテレビ局の組み合わせを選んで契約しており、50から100もの局を選べる場合もある。数が多いのは、専門・細分化が進んでいるからで、たとえば料理専門局は料理番組だけを終日流している。その他にもスポーツ、テレビ・ショッピング、宗教番組、子ども番組など様々な専門局がある。
そうしたケーブル局の中には、モザイク国家カナダを反映して「マルチカルチャー・チャンネル」と呼ばれるインド、中南米、中国など移住者の故国の言語による番組を交代で放送する局もある。国是(こくぜ)である「多文化政策」、つまり、カナダに移民したら故国の文化を破棄するのでなく、むしろカナダ社会を多様にする要素として大切にしよう、という国の方針に基づいた局だ。また、日本語の放送もある。たとえばバンクーバー地域にはICASという日系局があり、独自製作の番組やNHKニュース、日本のバラエティ番組などを放映して日系社会に支持されている。

カナダ人から見た日本の姿をTVから知ることもできる。一般的な日本のイメージは未だにハイテクと伝統文化の域を出ないことも多いが、近年はアニメ、マンガ、ゲームが新しい「日本の顔」として認知されている。日本の影響を多く見られるのは子ども・若者向けTV局だ。若い世代の日本産アニメへの高い支持を反映して「ドラゴンボールZ」「犬夜叉」「ポケモン」などの作品が英語に吹き替えられ、毎日繰り返し放映されている。また、北米産のアニメの絵柄にも、日本のアニメの強い影響を見て取ることができる。

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