ライフ - 連載コラム記事
カナダに住む(Live in Canada)

 

高橋和子さん

グラフィックデザイナー/
北海道出身・26歳

姿翔英

(すがた・しょうえい)さん

 

プロデュースしたポーカー雑誌が大ヒット!

興味あるアートを次々受講

姿さんは鬱蒼とした森が美しいノース・バンクーバーにある、キャピラノ・カレッジのESLコースに半年在籍した。その後、アカデミックコースで約1年間、哲学や舞台芸術を学んだ。アカデミックコースと同時に夜間の学校でグラフィックデザインを勉強するうち、本気でグラフィックに取り組んでみたくなった。


photoアカデミックコースと夜間スクールを修了すると、今度は同じカレッジにある3年間のグラフィック&イラストレーションのコースに申し込んだ。25人ほどの定員に10倍もの申込者が殺到する人気のコースで、入試には英語・面接・実技試験・作文が課せられる。その試験すべてに合格したのだが、その年はプログラムを再編することになり、1年間の休講を知らされた。予定が狂い戸惑ったが、元々「舞台」という動くアートに興味があったのと、人物デッサンを学べるところから、クラシカル・アニメーションを勉強してみることにした。


photo そしてアニメーションの専門学校VanArtsに入学。カレッジでの経歴が役立ち、入試は免除された。そこでは「臓器を透視できるくらいの洞察力を養え!」と、徹底的な人物デッサンを叩き込まれた。それでも「専門学校在籍中は、留学期間で1番遊んだ(笑)。カナダ人と肩を並べたキャンパスライフも楽しかった」。並行してアートスクールにも通いながら、1年後に卒業。再開されたキャピラノ・カレッジのプログラムに戻った。学費は全部ローンだ。今も少しずつ返済を続けている。


まさに怪我の功名、芸が身を助けた!

photo姿さんは中学生の時に事故で頭部を骨折、意識不明となり生死をさまよったことがある。幸い、驚異的な回復力で社会復帰できたが、今でも左手の動きは完璧ではない。「性格もすごく変わったと皆が言う。たぶん良い方に(笑)」。多くのスポーツも禁止された。リハビリを兼ねてカードマジックやブレイクダンスを始めたのだが、凝り性の姿さんは、ついにプロのマジシャンになってしまった。また、ブレイクダンスもチームを組んで本格的に活動し、留学後は地元のカナダ人とチームを作った。まさに怪我の功名で、事故を境に始めたこれらが役立ち、カナダでの生活に溶け込むことができた


カレッジ卒業後は、長い学生生活から解放された喜びで、特に何もせず、毎日遊んで過ごした。そんな日々が続き1ヵ月が過ぎた頃、カレッジから求人リストが送られてきた。ふと目に付いた「フルタイム・グラフィックデザイナー募集」の広告に、会社概要も分からないまま興味本位でメールを出してみた。すると即日「会いたい」という返答がきた。そしてなんと即採用され、間もなく就労ビザも取得できた。「携帯・合コン・就活という、日本の若者らしいことを何もしたことがない(笑)」と言う姿さんらしく、その作風は、日本の影響を受けていない。「日本のサブカルチャーと離れて勉強できたことは、僕の強み」。


ローカル向け4誌を1人で企画制作

photo会社は、ウェブや出版、広告などを手掛ける小さなメディア会社だった。しかし就職して半年、経営がうまくいかず倒産の危機に瀕し給与も支払われなくなった。姿さんは社長に「借金してでも今企画中の新雑誌を創刊すべきだ」と提案し、ポーカー情報誌が発行されることになった。間もなく、オンラインポーカーがブームとなり、雑誌は急成長、スポンサーがたくさん付いた。そしてカジノ誌、スポーツ誌、女性誌も出版するようになった。今、姿さんは、その4誌すべての企画・デザイン・編集をこなしている。ポーカー誌は2万部だった発行部数が、1年で20万部に成長した。出版先も、米国全土・南米・欧州へと広がった。 姿さんはこの他、日本の大手広告代理店、大手出版社とも仕事をしており、テレビCMや年賀状などのデザインを手掛けている。また、北米の某セレブのウェブロゴ、ロンドンのインディーズブランドのTシャツのデザインなど、国境やジャンルにこだわらずに活躍している。姿さんの作品は「左脳のアート」で、感覚で描くことはしない。1つの点にしても、ミリ単位以下で綿密に計算されたうえで、そこに描かれている。だから驚くほど迫力があり、CGかと思うほどに精密だ。 現在の生活もが良いのだが、ずっとこのままでいるつもりはない。「最先端の場所で勝負したい」と、年内にはNYか東京へ行く予定である。


 

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