ライフ - 連載コラム記事

 

 

Welcome to Japan Campaign

日本へ世界中からの観光客を
ぜひ地方の町や村にも滞在してほしい

 

少しずつ増えてきた日本人の海外個人旅行


アラカルト
  このところ、日本人の海外旅行形態が様変わりしている。ひところは、猫も杓子も団体旅行やショッピングツアーで賑わったものだが、最近ではむしろ、個人旅行や滞在型の旅行に流れが変わってきている。 JTBの調査では、1990年代までは団体での海外旅行が多かったが、2000年代に入り、個人参加の旅行または個人自由旅行者が、全体の5割を超えているという。海外に対する意識の変化や、旅慣れしてきたことも起因しているのだろうが、日本人がだんだん旅に対しても自立化している証左でもあろう。


 欧米では、もともと個人主義的傾向が強いこともあるが、旅行とは個人でするものという思いがあり、団体旅行はあまりしない。世界で最も観光客の多いパリでも、訪問者数の7割が個人旅行だそうだ。ひとり旅や家族、友人たちとの気軽な旅を愉しむもので、日本人のように急ぎ旅ではなく一概に滞在型の旅を好む。必ずしもフランス語を解するとは思えないが、それぞれにパリの香りや情緒をゆっくり楽しむのだろう。


世界の人たちが好むロハス的なゆったり旅行


 しかしフランスを旅する人の中でも、最近はパリだけではなく、ボルドーやサンテミリオンなどの伝統的なワインの産地や、プロヴァンスやコート・ダジュールなど、フランスの小さな町や村での田舎生活を楽しむ人が増えているという。 イギリスでもスコットランドや湖水地方、またコッツウォルズ地方など、ロンドンのような騒々しい大都会ではなく、田園風景の広がる地域やしっとりした伝統のある町を訪ね歩く旅行客が多くなったと聞く。


 ニュージーランドでも、オークランドのような大都会ではなく、ロトルアやタウポ、コロマンデルなどゆったりした海、山、湖などの自然と共生したキーウィーライフスタイルを求める旅人が多く見られる。スローライフやロハス* ではないが、こういう所にこそ、旅心をそそる魅力が多いからだと思う。


 ワーキングホリデー制度の普及も影響しているのだろうが、日本人にも少しずつ独り旅や友人と連れ立っての自由な個人旅行をする人たちが増えてきた。 ホテルからホテルへ、チャーターバスで駆け巡る従来のパック旅行よりも、思い思いのスケジュールでゆったりした旅をする方が、はるかに楽しいに決まっている。ニュージーランドなどのように、豊かな自然と人懐っこく親切な人との触れ合いが多いところではなおさらだろう。


なんと8割を占める台湾、中国、韓国からの観光客


 さて日本政府は、「Visit Japan Campaign」「Yokoso Japan」の名のもとに、海外から多くの観光客を呼び寄せようと提唱している。その数、2010年までに現在の2倍の1000万人を目標にするというから強気だ。それでもフランスやイタリアなどに比べると、2割にも達しないというのだから、世界の人々にとって日本はまだまだ未知の国である。


 しかしその「Visit Japan Campaign」、大手旅行社とのタイアップが功を奏してか、昨今、訪日者数が急増しているとのこと。とくに中国経済の急成長もあり、台湾、韓国などを含めた東アジアからの団体旅行客が、なんと8割を占めているという。 空港によっては、台北や上海などからチャーター機で乗り込んでくるというから驚く。かつて日本人が札束握って香港やミラノ、ニューヨークなどへショッピングツアーしたバブル期を想起させるが、アジアの人を乗せたチャーターバスが次から次へとホテルに吸い込まれていくのである。
しかしこれは、国土交通省の言う「広く世界中の人たちを日本へ」という思惑からは、少し外れた傾向にあるようだ。旅程にしても、判を押したかのように東京や日光、箱根、京都、それに新開地「アキハバラ」などのコースに集中して、なかなか地方の町や村に立ち寄る気配は少ない。


広く世界中の人に、日本を訪れてもらいたい


 たしかに、アジアの人たちが落としてくれる経済効果は相当なもので、「アキハバラ」などでは一人の買い物額が2、30万円はざらだという。日本の経済も谷底から這い上がり、ようやく<景気回復>に向かっている矢先嬉しい話ではあるが、「Yokoso Japan」プロジェクトは、ただ単に観光収入を上げるだけのものではないはずだ。日本をもっと知ってもらおうという草の根民間交流の意味合いもあるはずで、それにはアジアを含めてもっと広く、南米や北米からも、オセアニアや中近東からも、またヨーロッパや、アフリカなど等の広い地域から日本を訪問してもらい、日本をじかに知ってもらうように図るべきである。


地方の町や村で、本物の日本に触れてほしい


 訪問の地域や滞在の方法にしても、大都会や有名観光地ばかりではなく、多くの特色ある町や村に残る日本伝来の文化遺産やひなびた温泉など日本独特の自然の恵みに触れ、日本人独特の「もてなし」にも接してもらいたい。さらに、訪問スケジュールの中にはホームヴィジットやホームステイなどを加え、日本人家族と夕餉を共にし、畳や布団、風呂など実際に日本人の家庭生活を体験すれば、それこそ内側から見た日本の姿を知ることになり、日本での旅の真髄に触れることになるのではないかと思う。 この機会に、ぜひ地方の町や村の方々にも、積極的に自分の故郷を世界に向かって発信して「おらが町や村」を、宣伝してもらいたいものである。


*ロハス・・・LOHAS (Lifestyles Of Health And Sustainability) 人間の心や身体や地球全体にやさしいライフスタイル。


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