特集−一面記事
  調査に見るカナダ人像  

カナダ人の圧倒的大多数は、子供を育てる環境として、異なった文化をもつ人たちで構成されるマルチカルチャー社会を望んでいる。
カナダ人は多様な文化を好む傾向がひじょうに強く、「同じ言語を話し、同じような文化や宗教をもつ人が集まった国には住みたくない人」が68%に達している。単一民族国家を好むカナダ人は38%いるが、カナダ人の98%は、カナダの子供たちが、人種や宗教の違う友達と一緒に育つ環境にあることを幸運であると感じている。
マルチカルチャー志向は若い人ほど顕著で、単一民族国家を好まない人は、18から29歳までは75%、60歳以上は52%となっている。

マルチカルチャー志向が強く異文化に寛容な一方、3年前の多発テロ事件以来、イスラム教とイスラム教徒に対する偏見と恐怖感が強まっている気配が見られ、異文化同士が共存することの難しさを現している。
昨年の連邦政府の選挙に際して行われた調査によれば、立候補した政治家がイスラム教徒であっても投票すると答えた人は63%いたが、党首がイスラム教徒だった場合、その党には投票しないと答えた人が30%いた。
これは、投票しない理由として挙げられたもののなかで最も高く、またそれ以外に投票しない理由としては、同性愛者(25%)、ケベック州の政治家(22%)、原住民(15%)、ユダヤ人(12%)、西部カナダの政治家(10%)、黒人(8%)、女性(7%)が挙げられていた。(ケベック州と西部カナダの政治家は、出身州のニーズを国のニーズより優先させることが多いと見られていることから投票しない理由に挙げられている)。

イスラム教徒に対する偏見に関して、調査を行ったCRICの代表者アンドリュー・パーキン氏は、
「人種的な偏見より価値観の違いに対する恐怖感が原因で、未知の文化に対する用心が働いている結果である」と分析している。また、今回の調査に答えた人の21%がイスラム教徒に対する偏見度合いは減っている、16%が変化していない、12%が偏見はない、と答えているが、偏見度が上がったと答えた人は45%いた。


カナダが好きなカナダ人

大多数のカナダ人は、カナダと自分が所属する地域に対する帰属意識を強くもち、カナダ人であることの誇りを強くもっている。
カナダ統計局が昨年2万5千人のカナダ人を対象に行った調査によれば、カナダ人の85%が強い愛国心をもち、68%が自分が現在住んでいる地域や出身地に対して強い愛着感をもっていることが分かった。
愛国度が地域社会や出身地に対する愛着感よりも強いことに関して、トロント大学のバリー・ウェルマン教授は、「カナダ人とアメリカ人は、自分が住む地域や出身地を第一に考えると思われがちだが、両国民とも現実には移動性が極めて高く、自分が直接関係する地域よりも、国全体に対する愛着感を強くもっている」と語った。

このカナダ人の帰属意識調査には、社会に対する信頼度、社会への参加度、政治、宗教に対する意識と行動調査も含まれているが、その結果、社会に対する信頼度では警察に対する信頼度がトップで、地域のビジネスに対する支持率がマンモス企業よりも圧倒的に高く、銀行、医療制度、学校などの信頼度が司法制度、国会、社会福祉制度よりも高いことが分かった。
また、<落とした財布を他人が拾った場合、財布の中身がそのまま返ってくると感じるかどうか>というテーマでカナダ人同士の信頼度を調査したところ、43%が返ってくると考えていることが分かった。しかし、この調査結果を州別に見た場合は差が大きく、プリンスエドワードアイランド州では57.6%が返ってくると考えているが、ケベック州では23.3%しか返ってくると考えていなかった。なお、カナダ人の40%は、他人と付き合う際は用心が必要であると考えていることも分かった。
政治への参加度調査では、過去1年以内に、カナダ人の4人に1人以上が政治に関する陳情書に署名し、5人に1人が政治的な集会に出席しており、近年投票率が低下しているものの、政治への関心は決して低くないことが分かった。
宗教に関する調査では、約半数のカナダ人が、毎月集会や各種活動に最低1回参加することが分かった。


最も価値があるものは自由。

「プライスレス」(お金に換えることのできないもの)というコマーシャル・シリーズを行っているクレジットカード会社のマスターカードが、カナダ人にとって何が「プライスレス」であるかを調査した。
この調査によれば、カナダ人にとり最もプライスレスなのは、自由(24%)で、2位に挙げられた寛容性(6%)を大きく上回り、自由が最も大切にされていることが分かった。

カナダのシンボルでプライスレスなものとして最高点を獲得したのは国旗(31%)で、「世界におけるカナダ人のイメージ」として、30%が「フレンドリーさ」を挙げ、「平和を好む」が18%で第2位になった。
食べ物の分野でプライスレスのトップになったのはメープルシロップ(15%)だが、地域によってはロブスターとシーフード(21%・大西洋州)、ビーフ(16%・西部州)、ベーコン(12%・オンタリオ州)が選ばれている。
最もカナダ人らしい会話の表現としては、"eh"(カナダ人は会話で文末によく"eh"を使用する:「〜だね」というような意味)が60%で圧倒的に多かった。
有名人の分野では、歌手のセリーヌ・ディオン(20%)が3年連続でプライスレスのトップになり、アイスホッケーのスター・プレーヤーだったウェイン・グレツキーが2位(10%)、カントリー・シンガーのシャナイヤ・トゥウェインが3位(9%)になった。
また、カナダの視聴率ナンバーワンには、NHL(ナショナル・ホッケーリーグ)の生中継「ホッケー・ナイト・イン・カナダ」が挙げられている。

プライスレスの一方で、「カナダの将来を最も脅かすものは何か」という問いに対しては、3分の1が戦争とテロリズムと答えた。2年前の調査では、最も危惧するものとして経済が挙げられており、カナダ人の社会観が過去2年間で大きく変わったことを示している。また、アメリカと、アメリカが世界に対して及ぼす影響に対する危惧を感じている人が25%で、2年前の20%から5%上がった。

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