ライフ−連載コラム記事
  カナダに住む ことばと カナダ横断旅日記 Hello, Canada

バンクーバーは贅沢な街だ。近代的で清潔な町並みが山や海に囲まれている。ここに住む人たちはアウトドア・スポーツが大好きで、市内をジョギングする人も多く見かける。私は、バンクーバーで最も人気があるウォーター・スポーツと言われるカヤックに挑戦した。

バンクーバーでは、街の中心地に立つ高層オフィス街がすぐ後ろに見えるところで、シー・カヤックが楽しめる。
私が行ったグランビル・アイランドと呼ばれる所は、ダウンタウンを取り巻く入り江に突き出した地域で、多くのヨットが舳先を並べ、カモメが飛んでいる。有名なパブリック・マーケットもあり、新鮮な果物や野菜などが豊富に軒先に並んでいる。また、マリン・スポーツの店も多くあり、クラフト工房やアート・カレッジが立ち並ぶカラフルで楽しい場所だ。
「Eco Marine」はそんな小さな島にあるカヤック専門店。店内には所狭しとカヤック用品が置かれ、スタッフは3人という小さいながらも活気のあるショップだ。私のカヤック体験は、ここから始まった。

My first kayaking

「Eco Marine」から海へは1分もかからない。何と言っても目の前が海なのだから。船着き場に降り、ベスト式の救助服を身に付ける。そして今日のツアーに参加する全員が自己紹介をした。ガイドをしてくれるのはレベッカというとてもパワフルな女性だった。
私達は彼女からカヤッキングに対する一通りのレクチャーを受けた。カヤックは、船体がオープンになっているカヌーと違い、クローズド・デッキ(船体がデッキで覆われている)で、両側に水かきのあるパドルで漕ぐ。シー・カヤックは川で使う物よりも長く、方向を変えるためのラダー(舵)がついている物が多い。私が乗ったシー・カヤックは二人乗りだった。
私のパートナーは、ビクトリアから来たトムという年配の男性で、少し話をしただけで優しい人柄が感じられた。
しっかりと足下を固定し、パドルを手に、さぁ出発だ。パドルは軽く、私でも充分に扱える重さだった。体を真っすぐ正面に向けてひたすら漕いだ。初めて乗ったカヤックは思ったよりも安定していて、すぐに慣れてしまった。

ツアーは朝9時半の出発だったため、漕ぎ出すと爽やかな風が髪を頬をなでていく。陽射しも柔らかで、水面に反射した陽光がきらきらと輝き実に清々しい。私とトムは呼吸を合わせ、力を合わせてカヤックを進めた。
船着場から10分も漕ぐと、穏やかな湾に出た。波がないこの湾は、初心者がカヤックを漕ぐにはもってこいの場所だ。対岸にはバンクーバー博物館や海洋博物館が見えた。カヤックから見える建物の一つ一つについて、レベッカが説明をしてくれた。右手側には迫り出すように、原生林が茂るスタンレーパークが姿を現した。カヤックはゆっくりと、力強く進んだ。

カヤッカーはエコ・マインド

良い加減に腕が疲れてきた頃に、前を行くレベッカが水面に浮かぶ空き缶を拾い上げた。昨夜は、この湾に浮かべた特設ステージで花火大会があったため、海にはその名残りのゴミがところどころに浮いていた。
レベッカは、「ゴミを拾うのは当たり前」といった表情で、ごく自然にそうした浮遊物を拾っていた。きっとゴミを拾うのは当たり前と考えている人が多くいるから、バンクーバー周辺の海はきれいなのだろう。
目の前を、ペットボトルの容器がぷかぷかと流れて行く。私も当たり前といった表情で拾ってみた。

帰りはグランビルアイランドを半周した。レベッカはバンクーバーのなかでもここグランビル・アイランドが大好きなのだそうだ。そしてわずか2時間半のツアーの間に、私もグランビル・アイランドと、そして何よりもレベッカを大好きになった。
初めてのカヤッキングは、素敵な人と場所に出会え、とても素敵な思い出となった。明日はきっと筋肉痛だろうけど………。

市民の公園スタンレー・パーク

バンクーバーといえば忘れてならないのは、スタンレー・パークの美しさだろう。
ダウンタウンから歩いて行ける距離にありながら、海に取り囲まれた巨大な原生林の緑のある公園で、ビーチにトーテムポール、バラ園に水族館など見所が盛りだくさんだ。またサイクリングやローラーブレードのトレイルも整備されていて、公園内を一周することができる。
私もローラーブレードに初挑戦してみた。もしローラーブレードをもっていなくても大丈夫。スタンレー・パークの入り口には数件のレンタルショップがあり、5時間$10程でレンタルできる。無謀にも私はサポーターをせずに試みたのだが、これは大きな間違いだったと後悔した。とにかく最初は転ぶ。足の進め方もわからなければ止り方もわからない始末で、お尻には大きなあざができた。しかし、慣れると風を切るように進めるのが楽しかった。私はなんとか2時間半程度で一周できた。たまには思いきり体を動かすのも良いものだ。
海もあり、森もあるスタンレー・パーク。まさにバンクーバーの自然を満喫するにはもってこいの場所だ。

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