ライフ−連載コラム記事
  カナダに集う カナダ横断旅行日記    
5周年記念のケーキと共に。写真中央が大河内南穂子さん。

バンクーバーに隣接するバーナビー市にある日系ヘリテージセンター。ここを会場に毎月一回、日系女性の会「コスモス・セミナー」が開かれている。
会員はバンクーバー及び近郊に住む日本人女性で、その数は現在73名。カナダと日本の知識を深めることによって異国での生活を有意義に過ごせるようにと、主に地域に在住する専門家を講師に招いて半日のセミナーを行っている。

コスモス・セミナーを立ち上げた大河内南穂子(おおこうち・なおこ)さんは、それ以前に同じく日系女性の集まりである「すみれ会」を別の地域で開き、軌道に乗せてきた実績がある。すみれ会は今年で25周年を迎えるまでになり、現在その運営は後進に委ねて、大河内さんは名誉会長となって活動している。コスモス・セミナーはこうした経験をもつ大河内さんと、彼女の熱意に賛同する数名のメンバーが核となって立ち上げた会だ。コスモスには「宇宙、協調、調和」という花言葉があり、これが日系女性の集いにはふさわしいと考え、この名称が付けられた。

2000年7月から講演を企画し、これまでに開いたセミナーは42回。内容は多岐にわたる。その一部を紹介すると、文化の異なる人たちと円滑に交流するという目的で、国際人としてのマナーやホームパーティの心得、役に立つ英語表現や話し方の講演が行われた。また、健康管理に役立つ講演として、定期検診の活用法や自然食の基礎知識、心のケアに関する内容を企画した。生活を豊かにするテーマでは、旅の楽しみ方やフラワー・アレンジメントのほか、陶芸、盆栽、絵手紙、帯結びといった日本文化を取り上げる講演も行ってきた。なかにはこの会のために、日本から講師を招いたこともある。

5周年記念で講演を行った、多賀敏行在バンクーバー日本国総領事。

セミナーでは、講師による約2時間の講演会の後、地域のイベント案内や生活情報が伝えられる。その後は、同会のメンバーによる手作りの生和菓子やお茶をいただきながら講師や会員同士の交流の時間となる。「知的美人を目指す」同会の主旨に沿って、日本語の図書を貸し出すコーナーも設けられている。また、バザーも行い、売り上げを運営費の一部に充てている。
今年の1月には、コスモス・セミナー5周年を記念して、通常よりも長時間で内容も豊富なセミナー兼祝賀会を実施した。いつもの参加者は50〜60人であるが、この日は、在バンクーバー日本国総領事ほか、過去に講師を務めた人や今後に講演予定の講師も招かれ、総勢115名が集まった。

コスモス・セミナーの有志の活動は、月に一度のセミナーにとどまらず、日本からの福祉関連の視察グループを案内したり、地域の日系コミュニティのイベントにも手を貸すなどのボランティアも行っている。去る2月には、地域の日系女性起業家の集まりと組んで、スマトラ沖地震の津波被害救援活動のためのチャリティ・イベントを企画した。こうしたコスモス・セミナーの運営メンバーの意欲的な活動姿勢に啓発され、会員のなかからボランティア活動に携わる人の数が着実に増えてきている。会の主旨にある「ボランティア精神をもつこと」が、単なる掛け声に終わらず、確実に形になってきているのだ。

カナダに暮らす日本人女性のニーズを踏まえた生涯学習の機会と会員同士の交流の場を提供するだけでなく、地域の助け合いに進んで手を差し伸べる人を育ててきたコスモス・セミナー。そうした会の貢献を知る人のなかからは、「コスモスの花をバンクーバーだけでなく世界中でたくさん咲かせて」とエールも送られている。