ライフ−連載コラム記事
  カナダに集う カナダ横断旅行日記    

前号まで
私たちは、バンクーバーから1週間かけてカナダを横断し、目的地モントリオールに到着した。

大陸横断8日目。7月8日、曇り。

今日は1週間乗ったレンタカーを返却する日である。1日平均8時間過ごしただけあって、車内にはかなりの物が散乱している。このため車内を整理して荷物をまとめるのに時間がかかった。この荷物を持ち歩くことはかなり大変なので、まずダウンタウンのユースホステルにチェックインし、荷物を置いてから観光することにした。チェックインの時間まで2時間ほどある。ユースホステルの前でガイドブックを見ながら待つ。

モントリオールのバーで。中央がリオ、右がヤンウー。 バーは日中から賑わっている。

午後2時にチェックインした後、私たちは颯爽(さっそう)とモントリオールの街に繰り出した。メインストリート沿いには何軒ものバーが軒を連ねている。しかも平日の昼間だというのに、けっこうな人で賑わっている。バンクーバーでも、夏には昼間からビールを飲んでいる人をよく見かけたが、この点では、東部も西部も同じだ。私たちも郷に入っては郷に従えということで、北米大陸横断の祝杯も兼ねてバーに入った。リオがお気に入りのカナディアン・ビールをウエイトレスに注文する。しかし、返ってきた答えは、「そんなビールは置いていない!」。リオにとってはかなりショッキングだった。そのビールはバンクーバーでは売上1、2位を争うほどの人気があるからだ。しかし、約4000キロ東に位置するモントリオールではその存在すら知られていない。同じカナダといえども、東部と西部ではビールの銘柄もまったく違うのだ。

気を取り直して乾杯した後、この1週間の旅を振り返った。ほとんどの時間を車内で過ごしたが、印象に残る出来事がたくさんあった。明日からはヤンウーの友達2人が合流するので、今日が3人だけで過ごす最後の日。まだ旅の半分が残っているにもかかわらず、私は旅の終わりを感じた。

バーを出た後、ダウンタウンのメインストリートを中心に歩いて回った。モントリオールは人口300万人のトロントに次ぐカナダ第2の都市だ。フランス語圏の都市としてはパリに次ぐ世界第2位の規模なため、「第2のパリ」と呼ばれている。ダウンタウンには近代的な建物が建ち並んでいるが、古風な石造りの美術館や博物館も威風堂々と立っている。私たちは空腹を満たす獣のごとく、写真をこれでもかというほど撮った。

夕食はユースホステルにある共用キッチンを使って、自分たちで作ることにした。かなりの広さがあり、私たちのほかにも10人ぐらいの宿泊者が思い思いに夕食をとっていた。私たちは持参した米を炊き、スーパーで買ったチキンを温め、野菜を切り、夕食の準備を整えた。ご飯は、旅の最初に購入した韓国の唐辛子みそのコチュジャンと、ゴマ油を混ぜて韓国のりで巻いて食べる。これは韓国の一般的なご飯の食べ方の一つらしい。これがなかなかいける。ご飯のおこげまで完食し、お腹がいっぱいで幸せになったところで部屋に戻る。食後の一杯を飲み、明日に備えてベッドに入る。明日から合流するヤンウーの友達2人との出会いに期待と不安を抱きつつ、吸い込まれるように眠りに就いた。この時、この旅が思ってもみない方向に進もうとしているとは、予想もしていなかった。

大陸横断9日目。7月9日、曇り。

この日の朝、ヤンウーは一人早起きし、多少大型のレンタカーを借りた後、空港まで韓国人の女友達2人を迎えに行った。ヤンウーが彼女たちを連れて帰って来た時には、リオと私はチェックアウトも済ませ、準備は万端だった。

ユースホステルの前に止まった車からヤンウーとその友人2人が出てきた。簡単な自己紹介を済ませ、荷物をトランクに入れる。今日から5人分の荷物を毎日出し入れしなければならない。個々の荷物がかなり大きくて重いため、大変な作業である。大きめの車に変えたとはいえ、5人乗るのは正直少々窮屈(きゅうくつ)である。しかし、それもすぐ慣れるだろう。そんなことよりも、みんなこの旅行を楽しいものにしたいと思っているに違いない。私は彼女たちと一緒に後部座席に座ることになった。この短い旅では最初の印象が肝心だと思い、積極的に話しかけるが何とも話が続かない。きっと今日バンクーバーからモントリオールに飛行機で来たため、疲れているのだろうと思い、気にしないことにした。しかし、次の瞬間、私の恐れていたことが起こった。2人が韓国語で話し始めたのだ。今までリオとヤンウーは、私に配慮してお互いの間でもずっと英語で話してくれていた。そのため、私は韓国語が話せないというハンデを感じなかった。しかし、これからの1週間、2人が韓国語で話すとすれば、言葉というハンデを痛いほど思い知ることになる。(続く)