片山さんが英語を習い始めたのは10歳の時。その夏に家族と一緒に行ったグアムのピザ店で、「I'm hungry」(お腹がすいた)と言ったところ通じたのがたまらなくうれしかった。以来、英語を話すことに興味がわき、中学2年の夏にニュージーランド、中学3年の夏にはバンクーバーで2週間のホームステイを経験した。特にバンクーバーが気に入った片山さんは、迷わずカナダの高校に留学することを決めた。 中学3年の冬にバンクーバーに渡り、半年間は語学学校で英語を勉強して高校留学に備えた。新学期である9月に、バンクーバーの郊外にあるラングレー高校の10年生(日本の高校1年生)に入学した。 日本では苦手だった数学が今は好きな教科になった。高校入学当初の数学は、日本の中学ですでに勉強していた内容だったので、良い成績を取ることができた。しかし次第に内容が難しくなり、簡単には良い点数が取れなくなっていった。その悔しさがバネとなり一生懸命勉強するうちに、数学が楽しくなってきた。
カナダの高校には選択教科が多くあるが、片山さんは「調理」の授業が気に入って2年間連続で選択した。初年度の授業では「ベイキング(焼き菓子作り)」が中心で、マフィンやクッキーの作り方を習った。翌年の授業では、フード・プロセッサー(野菜を細かく切る機械)やクロック・ポット(長時間とろ火で調理する電気鍋)を使った調理実習のほか、各国の料理を調べて発表する課題があった。片山さんは友人とインターネットで中国料理の歴史を調べ、春巻きを作って発表した。調理の授業は、調理方法や調理器具の名前を英語で覚えられることも楽しい。最近は、英語では知っているのに日本語では知らない料理用語も出てきた。日本に帰省した折、クッキーを焼こうとして「Dough:ドウ」(生地の意)と言って母に理解されなかったが、日本語ではなんと言えば良いのか見当がつかなかった。 調理クラスで一緒であり親友であるキャシーとは、1年目の体育の時間に知り合った。始めは、話しかけられても半分しか分からなかった。根気強く話しかけてくれたことで、次第に片山さんの英語力もついて、今では冗談を言ったり何でも話し合える間柄になった。昼食も彼女と一緒だ。「いつもの所で」と言って、校内のお決まりの場所でサンドイッチやりんごを食べている。 現在のホームステイ先は、11歳と9歳の女の子に7歳の男の子のいるにぎやかな家庭。片山さんが家でネイル・アートをしていると、上の子どもたちが興味をもって寄ってきたので、それ以来、爪を磨いてあげたり色をぬってあげたりして喜ばれている。編み物も得意な片山さんは、子どもたちからマフラーを編んでと頼まれ、クリスマスには一人ひとりにプレゼントした。長女とは、家にいながらもお互いパソコンを使って、「ごはんができたからダイニングに降りようか」、「じゃあまた下で」といった調子でチャット(おしゃべり)をする。 片山さんは、家族が行く所にはどこにでもついていく。ホスト・マザーとの仲も良く、泣き笑いを共にする間柄だ。ホームステイ2年目に入った頃、それまで片山さんはホスト・マザーをファーストネーム(名前)で呼んでいたが、彼女から、「Mom:マム(お母さん)と呼んでも良い」と言われた。片山さんにとってもホスト・ファミリーにとっても今や本当に家族同然で、一緒の生活がまったく自然なものになっている。 カナダで暮らすことも、片山さんには自然なものになってきた。 |