スタディー−留学・英会話記事
  私の留学記 海を渡った高校生  
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ホスト・マザーは私のMom
片山杏里(かたやまあんり)さん

18歳。福岡県出身。
ブリティッシュ・コロンビア州ラングレー・セカンダリー・スクール12年生在学中。


片山さんが英語を習い始めたのは10歳の時。その夏に家族と一緒に行ったグアムのピザ店で、「I'm hungry」(お腹がすいた)と言ったところ通じたのがたまらなくうれしかった。以来、英語を話すことに興味がわき、中学2年の夏にニュージーランド、中学3年の夏にはバンクーバーで2週間のホームステイを経験した。特にバンクーバーが気に入った片山さんは、迷わずカナダの高校に留学することを決めた。

中学3年の冬にバンクーバーに渡り、半年間は語学学校で英語を勉強して高校留学に備えた。新学期である9月に、バンクーバーの郊外にあるラングレー高校の10年生(日本の高校1年生)に入学した。
始めは先生の話す英語を理解するのが難しく、加えてホームステイ先では、ホスト・ファーザーから「読んで内容を説明するように」と新聞を渡され、その難解さに片山さんは泣きたいような気持ちになった。そんな片山さんにはおかまいなしに、ホスト・ファーザーは外出前のちょっとした空き時間にも、英語の雑誌を開いて「この箇所を読んでごらん」と指導するのだった。ホスト・マザーからも会話のなかで英語の表現方法を指導された。片山さんは、自室に入れば毎日就寝まで、学校で配られたプリントに向き合い、見知らぬ単語を辞書で調べ続けた。まさしく英語漬けの日々だった。当時はホスト・ファミリーの厳しい指導が辛く、1年後には別のホスト・ファミリー宅に移った。しかし、最初のホスト・ファミリーのおかげで、授業についていける英語の実力が一気についたと、今では心から感謝している。

日本では苦手だった数学が今は好きな教科になった。高校入学当初の数学は、日本の中学ですでに勉強していた内容だったので、良い成績を取ることができた。しかし次第に内容が難しくなり、簡単には良い点数が取れなくなっていった。その悔しさがバネとなり一生懸命勉強するうちに、数学が楽しくなってきた。
数学が好きになったのは授業が面白かったせいでもある。問題の解き方について最初から答えが与えられるのではなく、生徒から考えを募って皆で検討する方法で学ぶことが多く、想像力が刺激されて数学の面白さにひき付けられていったのだ。

カナダの高校には選択教科が多くあるが、片山さんは「調理」の授業が気に入って2年間連続で選択した。初年度の授業では「ベイキング(焼き菓子作り)」が中心で、マフィンやクッキーの作り方を習った。翌年の授業では、フード・プロセッサー(野菜を細かく切る機械)やクロック・ポット(長時間とろ火で調理する電気鍋)を使った調理実習のほか、各国の料理を調べて発表する課題があった。片山さんは友人とインターネットで中国料理の歴史を調べ、春巻きを作って発表した。調理の授業は、調理方法や調理器具の名前を英語で覚えられることも楽しい。最近は、英語では知っているのに日本語では知らない料理用語も出てきた。日本に帰省した折、クッキーを焼こうとして「Dough:ドウ」(生地の意)と言って母に理解されなかったが、日本語ではなんと言えば良いのか見当がつかなかった。

調理クラスで一緒であり親友であるキャシーとは、1年目の体育の時間に知り合った。始めは、話しかけられても半分しか分からなかった。根気強く話しかけてくれたことで、次第に片山さんの英語力もついて、今では冗談を言ったり何でも話し合える間柄になった。昼食も彼女と一緒だ。「いつもの所で」と言って、校内のお決まりの場所でサンドイッチやりんごを食べている。

現在のホームステイ先は、11歳と9歳の女の子に7歳の男の子のいるにぎやかな家庭。片山さんが家でネイル・アートをしていると、上の子どもたちが興味をもって寄ってきたので、それ以来、爪を磨いてあげたり色をぬってあげたりして喜ばれている。編み物も得意な片山さんは、子どもたちからマフラーを編んでと頼まれ、クリスマスには一人ひとりにプレゼントした。長女とは、家にいながらもお互いパソコンを使って、「ごはんができたからダイニングに降りようか」、「じゃあまた下で」といった調子でチャット(おしゃべり)をする。

片山さんは、家族が行く所にはどこにでもついていく。ホスト・マザーとの仲も良く、泣き笑いを共にする間柄だ。ホームステイ2年目に入った頃、それまで片山さんはホスト・マザーをファーストネーム(名前)で呼んでいたが、彼女から、「Mom:マム(お母さん)と呼んでも良い」と言われた。片山さんにとってもホスト・ファミリーにとっても今や本当に家族同然で、一緒の生活がまったく自然なものになっている。

カナダで暮らすことも、片山さんには自然なものになってきた。
「カナダでは、一人ひとりがみんな自分の考えをもっていて、それを堂々と発言する。その環境が自分にはとても合っている。最初は辛い留学生活だったが、慣れてきてからは毎日が楽しくて、今は幸せ」と片山さんは笑顔で語る。
日本にいる母からはよく、「がんばり過ぎないように」と声をかけられる。だが片山さんは、高いお金をかけて留学させてくれている親のためにも、一生懸命やりたいと思っている。片山さんは一日一日の楽しさをかみしめながら、今年6月の卒業に思いを馳せている。