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コンサート・バンドの授業は期待以上。
ディスニーランドでも演奏した。

加藤希(かとうのぞみ)さん
D.W. Poppy Secondary School 10年生在籍中。16才


ディズニー・ランドで

留学初日の登校日、加藤希さんは新たな環境への不安で一杯で、教室へ向かう希さんの足は緊張で震えが止まらなかった。こわばる体を前へ進め、教室に入った。その瞬間、クラス全員から「ハイ、ノゾミ!」と声が掛かった。体中の力が一気に抜けた。席に着くと周りから聞こえる言葉はすべて英語。希さんは自分がカナダに来たことを実感した。

英語が好きでたまらなかった希さんは、通っていた英語教室の先生の提案がきっかけで留学に憧れた。中学2年頃からインターネットで留学情報を収集し出した希さんの目にとまったのは、自分で好きな科目を選択できるカナダの高校教育制度だった。また、小さな頃から電子オルガンとクラリネットを習っていた希さんは、ジャズが盛んなバンクーバーにも魅力を感じた。幸い経験豊富な留学サポート機関にも出会え、高校留学の利点と注意する点について知識を得た。

希さんが選んだ留学先は、バンクーバーから車で1時間のラングレー市にあるD.W. Poppy Secondary School(中高等学校)。音楽教育のレベルが高いことで有名な学校だ。希さんは留学先でジャズバンド部に入って交友関係を築きたいという強い希望を抱いていた。ジャズバンド部の入部にあたって必要条件になっている「コンサート・バンド」の科目を受講するために、希さんはカウンセラーに紹介された音楽担任教師のところに行った。先生に促されてピアノとクラリネットを演奏したが、それが審査であることは後から知った。

審査結果は「1学年下のコンサート・バンドのクラスを受講すること。ジャズバンドへの入部は次年度まで待つように」であった。審査結果に納得できなかった希さんは、それから何度も先生を訪ねて演奏を聴いてもらった。その結果、希さんの実力と熱意が伝わって念願のコンサート・バンドの受講とジャズバンド入部の許可を得ることができた。

授業と放課後の音楽活動で、希さんは期待通り多くの友達を作ることができた。クラスで担当するクラリネット仲間とは、昼休みにも時々集まって練習する。コンサート・バンドのクラスは授業内容も期待以上で、時々カレッジのジャズの講師やプロの演奏家が学校に来て、タクトを振って指導してくれる。サクソフォーンの演奏家が授業を訪れた時には、「手で三角形を作ってそこに音を入れていくように吹くと良い」と教えられ、希さんは何度もそのやり方を練習した。すると音の響きや迫力が格段に違って新鮮な驚きを覚えたのだった。

チャイニーズ・シアターの前で

コンサート・バンドで行った5日間のカリフォルニア・ツアーも楽しかった。
ディズニー・ランドがあるアナハイムの町のフェスティバルで演奏し、翌日はディズニー・ランドへ。ディズニー・ランドではミュージック・スタジオで、映画「ハリー・ポッター」の総合音楽プロデュースを務めた第一線の音楽家の指揮でレコーディングし、映画のサウンド・トラック作りを経験した。次の日はディズニー・ランド内を行き交うお客の前で演奏した。人々は足を止めて聴き入ってくれ、希さんはクラリネットを演奏しながら、なんとも言えないうれしさと楽しさに満たされた。この演奏旅行で希さんはますます音楽が好きになった。

普段の高校の授業から希さんが感じることは、生徒の学習態度が真剣で、分からない点があれば先生に質問して納得の行くまで説明を求めることだ。ある時、科学の先生が話してくれた印象的な言葉がある。「先生にとって良い生徒とは頭の良い生徒ではない。良い生徒というのは分からないことをきちんと質問に来る生徒のことだ」。希さんも、授業で苦戦している科学の日の放課後は、いつも先生のところへ質問に行く。するとそのたび先生は「ノゾミの授業に対する意欲はA+(エー・プラス:最高評価)だ」と言ってくれるのだった。

希さんのホームステイ先のホスト・ファミリーは敬虔なクリスチャンで、食事の前のお祈りは欠かさない。希さんと同じ学校に通う長男グレン(17歳)は自宅のドラム・セットで演奏を教えてくれることがあり、長女のカーメン(15歳)は英語の勉強にと、辞書から適当に20前後の単語を選び希さんにクイズを出してくれることがある。兄弟がいる生活は実家と同じで、楽しくリラックスできる。

これまでのホームステイ生活で最も印象深いのは、昨年の夏に希さんが一時帰国した前夜のことだ。ホスト・マザーの両親が家に遊びに来てくれたので、希さんは全員に日本食を作ってご馳走した。ホスト・マザーの両親が帰宅した後、家族みんながソファーに座り、希さんが家に来た最初の日からそれまでの間の出来事を、思い出話のように語らい合った。そしてみんなは涙ながらに「また2ヵ月後に会おうね」と言ってくれた。希さんは胸の奥が熱くなった。

固い志を携えて開始した留学生活。親しく話せる友とホスト・ファミリーに囲まれながら、英語力も着実に高まってきた。「一日一日の過ぎるのが早いから」と、早くも卒業後の進路を視野に入れながら、希さんは仲間と共にカナダの澄みきった空気に音楽を響かせている。

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