剛明君は2002年の夏から高校留学を開始した。学校はバンクーバーのアジア系移民の多い地域にある。留学生や英語力が不足している新移住者が、一般の授業とは別に受けるESLクラスでは、剛明君以外は全員中国人だった。 休み時間には中国語が飛び交い、初めの頃はクラスメートに中国人と間違われて戸惑ったり、日本人留学生はいないだろうかと探すこともあった。しかし、次第に気の合う生徒が見つかり、日本のアニメーションや芸能人についてなど、共通の話題を見つけて話すうちに仲良くなっていった。 英語で自分の言いたいことが確実に相手に伝わった時は、両手でガッツポーズをしたいようなうれしさだ。「自分は相手に認められている」という実感が、自信にもつながる。小学一年生の頃から会話中心の英語教室に通い、きれいな発音を身につけていたことが大いに役立った。
カナダの高校の授業で一番苦労した課題はポエム作りだった。様々な詩の形式を学んだ後で、フレーズの先頭がABCの順でZまで続く詩を作ることが課せられた。 ただ言葉を羅列するだけではなく、意味のある文学的な内容にすることが大変だった。カナダ人の生徒にとっても難しい課題なだけに、剛明君にとっては苦労も人一倍だった。先生や友達の助けを借り、剛明君も周りの友達を手助けして互ぜいに協力しながら課題をやり遂げた。 英語の担任の先生は、課題への質問を電子メールでも受け付けてくれる。 友人とのコミュニケーションはスポーツを通じても深まった。剛明君はよく仲間と公園でサッカーやバスケット・ボール、テニスを楽しむ。バンクーバーの夏は夜9時でもまだ明るいため、放課後の戸外での活動時間はたっぷりある。澄み渡る青空のもとで、仲間とボールを追いかけるのは最高に気持ちが良い。よく通りすがりの人が声をかけてくれて、一緒にプレーに加わることがあるが、こうしたフレンドリーなところがカナダ人の特徴だ。 バンクーバーでは冬になると、近くの山でスキーやスノーボードが楽しめる。剛明君はこの好環境を生かしてスノー・ボードを始めた。最初は初心者用のゲレンデでの木の葉滑りだったが、上手な友達から滑り方を教わってシーズン中に4、5回通っているうちに、中級者コースでもスピードを出して滑ることができるまでに上達した。 カナダに来てから剛明君の物の見方も変わってきた。その一つが食事である。お世話になったホームステイ先の食事は、それまで日本で当たり前に食べていたものとはまったく違い、ひじょうに簡素なものだったが、時がたつに連れてとてもおいしく思えるようになり、同時に食事の大切さも感じるようになった。食の意識が変わったことは、自分でも驚くほどだった。 バンクーバーは国際性が豊かでいろいろな人種がいるおかげで、カナダ生まれの人から、中国、韓国、インドなどから来た人とも接する機会を得た。 これから留学を考える人には、「まず目標をもつように」とアドバイスしたいという剛明君。この言葉は日本を出る前に剛明君のお父さんがくれたメッセージでもある。 順調に生活している時は良いが、窮地に陥った時に、目標のあるなしが、這い上がる力を生むかどうかを決めると言われたのだ。 剛明君が留学当初に定めた目標は、「何事にも基本となる英語力をつけること」だった。この目標のおかげで、剛明君はこれまで留学生活を前向きに進んでこられた。現在は、獣医になるためにブリティッシュ・コロンビア大学へ進学することが目標となった。
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