ライフ - 連載コラム記事
カナダに住む(Live in Canada)
梶野 靖之さん 

梶野 靖之
(かじののぶゆき)さん

愛知県出身−岩手県立不来方高等学校卒業。10年間の社会人生活を経て27歳で渡米。現在はワシントン州・クラーク大学に在籍中。趣味は裏道散策と写真撮影。将来的にはアメリカ永住が目標なれど、当面は英語の習得が目標。 ブログアドレス http://nkajino.exblog.jp/



 私は昨年の2月に会社を辞め、アメリカ生活を送っている現在28歳の留学生である。私が通うのはワシントン州バンクーバー市のクラーク大学。この大学は4年生大学ではなく、コミュニティーカレッジと呼ばれる短期大学。私の専攻は語学修得クラスで、通称ENL(English Non-Native Language )と呼ばれている。 この大学には多くの特別学科があり、働きながら通う人もいれば、家事の合間に通う主婦も多い。通う人たちの層に、広さと深さがあるのも特徴だ。

 留学の発端となったのは6年前。前職のスターバックスコーヒーへ入社したことだ。スターバックスは外資系企業のため、日本にアメリカをそのままもってきた様な会社で、それ以前の会社では考えられないほど異文化と接する機会が多く、上司や顧客がアメリカ人だったり、日々英語と触れ合う職場環境であった。そんな会社で働くなかで、私は次第にアメリカ文化のもつ豊かな発想や、自由な選択に感化されていき、入社から5年後に留学を決意。27歳で会社を辞め、アメリカ生活の道を選んだ。


渡米の日は2006年の3月10日。その日はあいにくの雨。

 成田空港を離陸する際、離れ行く空港ターミナルに大きな不安を募らせたが、離陸後、飛行機の窓から雨空が美しい青空に変化して行く様に、不安が明るい未来へと変化して行く様と重なったのが、今でも懐かしい。

しばらくの間、雲の上のどこまでも広がる美しい青空に感動していたが、隣の席の男性に「眩しいから窓を閉めろ」と言われ、心が雨空に戻ったのも昨日のことのようである。


成田‐ポートランド間は片道8時間25分の旅。

 大半の間、機内ではこれから始まるアメリカ生活のことや、学校生活のことを考えて過ごした。心構えの準備というものであろう。私としては人生を深く考えたかった訳ではないが、単に備え付けのテレビが故障していたからなのか、窓の一件や隣の人との距離が遠かったこともまたあり。でもそんなマイナス要因も、今思えば心構えの準備には意義のある出来事であった。お陰でアメリカに降り立った時には、気持ちも新たになった。心構えはとても大事だ。

初登校の日は2006年の4月2日。

ワシントン州バンクーバー市のクラーク大学

 社会人生活から10年振りに戻った学生生活は、今までとは大きく違う人生のスタートであった。大学のENLクラスは全部で5段階に分類され、入学前の試験で、そのレベルに見合うクラスに振り分けられる。私は英語を全く勉強することなく渡米したため、ENLクラスは一番下のレベル1。同じレベルの教室に行ってみると、ロシア・韓国・カンボジア・ペルーなど数カ国の生徒が14人程座っていた。ところが同じレベルなのに、いざ話始めてみると皆日常会話が十分なレベル。外国人の英語スキルの高さに驚いた。自分は、授業が始まっても担任の先生の英語が全く聞き取れず、宿題が出ていることさえ理解出来ない事態に。登校初日、自分の心境をメモした英単語が「Bottom of the Class・落ちこぼれ」だったことからも、その日の戸惑いの大きさというのが伺える。

 こんなに英語が出来ない自分だが、悲しいと思ったことはなく「テストは嫌いでも、テストを受けている自分は好き」といった気持ちで過ごした。だから渡米の日以来、日本に帰りたいと思ったことは1度もない。

 外国で勉強すると、言葉では言い表せないほど多くを学ぶことができる。まずは新しい扉を開けることが大事。でもあれから1年。宿題の提出期限や詳しい範囲は理解できるようにはなったが、当面の課題は宿題の理解。進捗状況は実に緩やかだ。

留学生活は、目に見えない収穫のほうが大きい。


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