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  語学留学先としてのカナダの特徴は?

篠原幸子
静岡出身。短大を卒業後、2年間のOL生活。1997年9月7日渡加。カモーソン・カレッジを経て現在はUniversity of Victoriaで女性学を専攻中。
山あり谷あり、カレッジ生活

1999年5月、念願かなって私はカモーソン・カレッジのレギュラー・スチューデントとなった。もちろんうれしかったが、カナダは日本と違って受験制度がないので、日本で受験を経験してきた私にとっては、難関をパスしたという達成感はなかった。また私は、カモーソン・カレッジを経由して大学に編入することを考えていたので、カレッジで専攻する科目についても決めてはいなかった。これは、私がカレッジに一時的なステップとして入学したからではなく、カナダではごく一般的なことで、一部の学生を除いてカナダ人の学生たちは、カレッジの一、二年は自分の興味のあるクラスをいろいろととり、吟味してから専攻科目を選ぶ。専攻科目を決定した後でも変更は可能で、一つ以上の科目を選択するケースもまれではない。日本のように受験時に学部を決定して、入学後に「こんなはずではなかった」と後悔するようなケースは、カナダの学校ではない。

専攻する科目を決めていなかった私だが、何はともあれ英語を必須科目に選んだ。5月から始まる学期は、通常の4ヵ月の学期を2ヵ月に集約したもので、集中コースが主になっている。英語を選んだ私は、今までの語学留学を頭に浮かべて、「多少大変でも大丈夫」と気楽に臨んでいた。ところが、一旦クラスが始まると、ESLクラスで習う英語と、カレッジの英語クラスの違いに驚かされた。まず教師が話すスピードが違う! ESLのクラスでは、当然ながら生徒にとっては英語が外国語であるため、教師はゆっくりと話してくれていた。カレッジのクラスでは教師に答える生徒の話し方も早い。当然ながら、教師もいちいち「今の会話分かった?」とか、「このぐらいの英語のスピードで大丈夫?」などと聞いてはくれない。英語にハンディキャップがある外国人学生であっても一般のカナダ人の学生と待遇は一緒なのだ。

アサインメント(宿題)に対しても特別扱いはない。

ESLのクラスでは、提出させられたエッセイは多くても500ワード程度だったが、カレッジのクラスで提出するエッセイのワード数は1000字。もちろん文法の間違いやミス・スペルは許されない。最初に提出したエッセーは、私がタイプした黒い文字よりも、教師が赤で訂正した部分の方がはるかに多かった。

つまずきながらも、なんとか夏の間に2つの英語のクラスをパスすることに成功した私は、9月から一般教養のクラスを取り始めた。この時になっても、まだどの学部に進むか決めてなかった私は、日本の学校で理数系が得意だったこともあって、化学、生物、数学、加えて第三ヵ国語として中国語を専攻した。 数学は、高校時代に数学科に席をおいていたことが役に立ち、授業自体は思ったより楽だった。ただ、化学のクラスで、他のカナダ人の学生と一緒にグループを組んで実験を行うことは大変だった。だれも私とパートナーを組みたがらないのだ。グループごとに成果を競い点数を争うものなので、英語を満足に話せないパートナーがいた場合は不利になるからだ。
こんな経験もあり、翌年1月からの学期では、私はパートナーやグループ・ワークが少ないと思われるクラスを選択した。
しかし、新たに選択した心理学では、予期しない試練が待っていた。クラス全員の前でプレゼンテーション(講義)をするというアサインメント(課題)があったのだ。それはクラスで実験を行い、そのデータを集めクラスで発表するというものだった。

日本語でも人前で話すのが苦手な私なのに、英語で行うとは、自分でも考えられないような課題だった。
当日は足ががたがた震え、自分が何を言ったかは覚えていない。英語では緊張した状態を、「口のなかに心臓を感じた」と表現するが、私の場合は「心臓が口から飛び出した」と表現したかったほどに緊張した。それでも、なんとかプレゼンテーションを終え、クラスメート達が「Good Job!」(よくやった!)という応援の言葉をかけてくれた時、私の苦労は一瞬にして報われた。

化学のクラスで、だれもが私とパートナーを組みたがらなかったことを今思う時、自分から、あえてカナダ人学生と交流を図ろうと話しかけてはいかなかったことに気がついた。心理学の時は、クラスが少人数だったせいか、それとも英語に対して少し自信がついてきたせいか、積極的にクラス・メートたちに話しかけていた。こうしたことが、心理学のプレゼンテーションを成功させた理由であるような気がする。最初は、自分が英語を上手に話せないことを理由に、自分にストップをかけていたのだ。

化学のプレゼンテーションが成功して気持ちが高揚していた矢先に、うれしいニュースが舞い込んだ。ビクトリア大学(UVIC)の一般課程への編入許可が下りたのだ。せっかく仲良くなったカモーソン・カレッジのクラス・メート達との別れはつらかったが、大学編入によってまた新たな留学体験が広がったのだ。(つづく)