美容師として働きながら、緑の多いバンクーバーの暮らしを楽しむ バンクーバー、ダウンタウンの中心部にあるヘアサロン。 渡辺真由美さんは移民としてカナダに渡って今年で6年目になるが、海外暮らしを実現しようと最初の一歩を踏み出したのは、日本で美容師の仕事を一通り覚え、毎日が同じことの繰り返しに思えてきた頃のこと。仲の良い従妹の住むカナダを訪問したことをきっかけに、1997年にはワーキングホリデー・ビザを取得してバンクーバーへやって来た。 仕事の息抜きとして2、3カ月滞在するつもりが、少しでも長く居続けたいという気持ちに変わった真由美さんは、生活費を得るために日本人経営の美容室に働き始めた。英語で接客しなければならない場面では、おとなしい人を装い、口数少なく対応してその場をしのいだ。そんな経験も数を重ねるうちに、耳から吸収した英語を仕事でも使えるようになっていった。賃金は完全歩合制。そのため、何とか自分の力でお客さんの心をつかまなくてはというハングリー精神も出てきた。その思いは、ヘアメイクに誠心誠意あたる姿勢につながっていった。 ビザが切れて帰国した真由美さんは、迷わず永住ビザの申請を決めた。日本で忙しい日々を過ごしながらも、つねに真由美さんの思いは、時がゆっくり流れ緑のあふれるバンクーバーに向けられていた。ビザ申請から数カ月後、真由美さんは面接場所に指定されたアメリカ・デトロイトの移民局で女性面接官と向き合っていた。メイクの資格をもっていた真由美さんが申請書に記入した職種は「メイクアップ・アーティスト」。美容師よりも審査の得点が高いためだ。 20分ほどの質疑応答を終えたところで、面接官は「後は健康診断が通れば合格です」とその場で真由美さんに合格を告げた。 2000年に念願のバンクーバー入りを果たした真由美さんは、しばらく以前の美容室に勤めた後、知り合ったカナダ人が経営する美容室で働き始めた。日本の職場では店内を活気付けるためにと、他の人がシャンプーを終えるたびに、声を張り上げて「お疲れ様でした」と言わねばならなかった。それが真由美さんにとっては苦痛に感じられていた。カナダはといえば、形式的な声だけの挨拶はない。また、日本の職場では髪型やスケジュールについて、無理をしてでも顧客の希望を通したが、ここでは顧客と同等な立場でものが言える。さらに残業も、上下関係もない、そんな職場環境のなかで真由美さんはのびのびと仕事をしている。 この美容室に移って間もない頃起こったある出来事は、今も真由美さんの胸に深く刻まれている。 彼女は、「今度店を移る時には移転先を必ず連絡してほしい」と真由美さんに語った。 最近の真由美さんには、夏に婚約した彼の支えも加わった。出会いは彼がお客さんとしてやってきたことに始まる。深遠な精神世界を探求し始めていた真由美さんに、一足先にそうした世界に関心のあった彼は、人生を学ぶうえでも良いサポート役を務めてくれている。 二人が過ごすお気に入りの場所は、静かな森や海辺。 今は自分たちらしい挙式を行おうと、情報収集や検討に一生懸命だ。しかし、カナダの暮らしのなかで身についた、自分に必要なものだけを選びとっていく生き方のおかげで、真由美さんには自分流の挙式スタイルが自然と見えてきているようだ。 |
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