スタディー−留学・英会話記事
  親子で読む高校留学情報 ジョイントプログラム
  海を渡った高校生 私の留学記 留学無料代行手続き・問合せ

ダンスクラブの活動が
かけがえのない経験になった <前編>

志村直樹(しむらなおき)君
東京都出身 18歳
Hugh Boyd Secondary School 12年生在学中

小学生の時にカナダで2週間ホームステイを体験し、中学でもイギリスで体験留学した志村直樹君は、中学卒業が近づくにしたがって留学することを考えるようになった。両親は、直樹君の強い希望を理解し、将来に役立つ英語力の養成にお金をかけることに、賛成してくれた。

バンクーバー国際空港に降り立つと、澄み渡った広い空が迎えてくれた。 昔訪れたカナダに戻ってきたという感慨が、直樹君の胸中に広がった。ホストファミリーと挨拶を済ませ、新しい生活を始める部屋で荷物を整理しながら、日本の家族の写真を手にすると「しばらく家族とは会えないんだな」と感傷的な気持ちになった。

入学した学校は、バンクーバー近郊にある私立のインターナショナル・スクールだった。
生徒は、カナダ人以外にロシア人、ドイツ人、韓国人などの留学生が大勢いた。
学校は内外ともにモダンな作りで、ラウンジにはカフェのようにしゃれた丸いテーブルが置かれ、それまで直樹君の描いていた学校のイメージからかけ離れた環境で、驚きの連続だった。

直樹君は友達作りが苦手なタイプだが、良いきっかけとなったのはクロスカントリー(マラソン)のクラブ活動だった。
放課後の活動やそれ以外の時でも、同じチームの仲間とは会話が弾んだ。スポーツは直樹君のストレス発散の場にもなった。授業がすべて英語という環境のなかで、内容を理解し表現することは、予想以上に大変なことだった。その思うようにならないもやもやした感情を吹き飛ばしてくれたのが体育の授業だった。

そんな直樹君を熱中させたのは、直樹君が大好きな体育の先生が指導するサルサダンスのクラブだった。サルサダンス・クラブは、「タレント・ナイト」と卒業式に発表会を行う。「タレント・ナイト」は、歌や踊りを披露する学校行事のことだ。11年生になった時から、直樹君はサルサチーム8名のメンバーの一人として、毎放課後、練習に取り組んだ。
サルサダンスはパートナーと接触して情熱的に踊るダンスだが、日本では男子校に通っていた直樹君にとって、初めは女子生徒の手を握ることすら恥ずかしいことだった。だが、パートナーと抱き合う場面で体を近づけずにいると、先生から怒られてしまう。その照れくささに慣れるのに少し時間がかかった。さらに動きのなかにはパートナーを自分の股の間をくぐらせたり、肩に乗せたりとアクロバット的な難しい動きもあった。
自分には無理ではないかと思う気持ちもあったが、最初にプロのダンサーの動きをビデオで見たことで、自分も格好良く踊ってみたいという情熱が芽生えた。また、尊敬する先生の魅力も手伝って、ハードな練習に負けない気力が生まれた。授業で大きな課題が出された時には、家に帰って机に向かうことも大変だったが、なんとかやりきって「タレント・ナイト」で発表する日を迎えた。

その夜、直樹君は黒いシャツに黒いズボンを着て、パートナーはセクシーな衣装を身につけた。踊っている最中、緊張はあったが、最後にはもっと長く踊っていたい気持ちになっていた。本番では直樹君自身がステップを間違えてしまったり、先輩が他のダンサーに足を踏まれて技を失敗してしまったりと思わぬハプニングもあったが、終わってからは卒業式での発表に向けて、もっと練習していこうという気持ちになっていた。

卒業式のダンスには、特別な思い入れがあった。
インターナショナル・スクールでの学習に慣れてきた直樹君は、一般の公立校へ転校することを考えていた。その転校の前に、現在の学校に残せるものがほしかったのだ。

一生懸命練習を重ねて迎えた卒業式。
「悔いを残さぬようがんばろう。見てくれた人の心に何かが残せるように」と祈るような思いで舞台に上がった。この時は最初から楽しい気持ちで、緊張よりも観客に見てもらうことのほうがうれしかった。スピンやステップもきれいに決まった。15分間の踊りが5分くらいの時間に感じられた。 踊り終わった時、一つの目標をやり遂げた満足感に包まれたと同時に、サルサダンスからは、勉強以上のかけがえのないことを学んだ思いだった。 続く。

 禁無断転載 Japan Advertising Ltd. - Canada Journal