ライフ−連載コラム記事
  海外生活アラカルト カナダ横断旅行日記 言葉と  

「働けるビザ」の効用
海外で、「働けるビザ」を持っていることは何かにつけて心強い。経済的に余裕のある人は別だが、たいていの人は何をするにも財布のことが気になり、不安を感じたりするものである。 その点、「ワーキングホリデービザ」を持っている人は、滞在費が不足したり、旅行費用や授業料が足りなくなったりした場合でも、仕事をして資金不足を補うことができるのでたいへん有利である。

外国では、働きたくても就労許可証がなければ働けない
外国で仕事をしようとする場合は、「滞在許可」の他に「就労許可」のビザが必要になる。就労許可証なしには、1ドルたりとも収入を得ることはできないし、就労ビザなしに仕事をした場合、強制送還になったり、雇用主も営業停止や処罰を受けたりする。つまり、海外では収入を得ようと思っても、簡単には仕事をすることはできず、また就労許可を取ること自体もたいへん難しいのである。

ワーキングホリデービザの有難さ
1980年、日本とオーストラリアが、両国の若者が互いの国を知り、相互の理解を深めることを目的として、相手国に1年間滞在できるワーキングホリデー制度を施行した。以来、この制度は、カナダ、ニュージーランド、イギリス、フランス、ドイツ、韓国と7ヵ国に及び、いまや多くの若者がその恩恵に浴している。

カナダのワーキングホリデー
日本は、カナダ政府とも早くからこのワーキングホリデー協定を結び、今では年間5000人の枠を大幅に超える申込者がある。カナダのワーキングホリデーに参加する人たちの動機については様々であるが、やはり広大なカナダの大自然に親しむことや、どこよりも安全で住みやすい点などが人気の理由のようだ。

ワーキングホリデー制度をもっと有効に活用したい
しかし、ワーキングホリデーといえば、どうしても"遊び"の感覚が強くあるのは否定できない。
旅を通しての人間形成や、異文化体験から何かを学ぼうというのでもなければ、帰国後のキャリアアップやスキルアップに結びつけようというのでもないらしい。1年間を自由気ままに過ごしてみようというのが大多数の動機だと聞く。
長い人生、それもひとつの生き方かも知れないが、せっかくカナダに行ったのに、日本人社会の中だけに過ごし、現地の人たちとの交流や社会体験もなしに帰国する人があると聞けば、何のためのワーキングホリデーなのかと首をかしげてしまう。
もっとこの制度を有効に活用できないものだろうか。

ワーホリメーカーを観光ガイドとしてスキルアップ
実はこのたび、カナダ側と日本側が一体となり、ワーホリメーカーを観光ガイドに育成しようという計画が進められている。
これは、英語力が中級以上の人を対象に観光分野でのスキルアップを行うもので、資格として観光ガイドとしてのディプロマも授与し、有給のインターンシップも含まれるものだ。
帰国後は、たとえば故郷などに外国人を観光誘致する際の案内人として、また観光町おこしなどに力を発揮できるものと、地方の自治体は期待しているとも聞く。

世界の人たちに日本の地方を知ってもらおう
いま、日本政府はVisit Japanと銘打って、日本へ外国人観光客を倍増させようとしているが、現状では中国や台湾、韓国からの訪問客が8割で非常に偏った傾向にあり、政府が望む「世界中の人を日本に」の謳い文句とはほど遠い。
"世界中"からお客を呼ぶからには、やはりそれなりの受け入れ準備が必要とされる。せめて世界共通語の英語を話す案内人は必要であろうし、町のパンフレットやホームページも日英併記にしなければ世界の人たちは理解できない。だいたい外国人に対して不親切である。

地方こそ伝統の日本。早く鎖国状態から脱皮しよう
国際化は急速に広がりを見せている。世界の人たちの眼は、東京や京都ばかりではなく、確実に日本の地方にも及び始めている。そういった今日、早く"鎖国"状態から脱却して、地方の持つ伝統的でほんとうの日本の姿を世界の人たちに見せるべきであろう。
そこで、この「ワーホリメーカーの観光案内人づくり」の出番が来れば、ワーキングホリデー制度もさらに意義あるものなるのではないかと思う。

若狭真二 (わかさ・しんじ)

早稲田大学および米国セントジョーンズ大学に学ぶ。1981年より米国ワシントン州認可NPO法人の代表として、世界各国への留学・ホームステイ・海外研修事業などに従事。ピース国際交流センター代表。