ライフ - 連載コラム記事
カナダに住む(Live in Canada)

 

高橋和子さん

留学サポート会社勤務/グラフィックデザイナー
福島県出身・31歳

高橋和子

(たかはし・かずこ)さん

 

キャリアを捨て、海外で腕試し

花形職業からワーホリへ

日本ではバリバリのキャリアウーマンだった。
照明が専門の会社でグラフィックデザイナーとして活躍する傍ら、有名ベンチャー企業が集約することで有名な、六本木ヒルズでもその手腕をふるっていた。

元々、「海外に出たい」「独立したい」という夢があった。大学の専攻は法学部。大学で法学部を選んだのは「ビジネスをするには法律を知っておくべき」という算段があったから。就職先で配属されたのは秘書課だった。社長専属の秘書となり、会社の運営を学ぶ機会を得た。社長秘書を務めた後、人事部に異動となり金銭の動きや人の配置を知った。人事部の上司は理解がある人で、人事の仕事と同時にデザインの勉強をさせてもらえた。100人以上いるデザイナーからもアドバイスを受け、経費で学校に通わせてくれるなど、恵まれた環境だった。実際に本社ショーウィンドウなどのデザインを任され、企画が通り、会社のウェブページのプロジェクトチームにも加わった。そして最年少で主任に昇格した。

 

高橋和子さん

好評を得た生花店のパネル広告と和子さん。「慌てなくても空港で花が買える!」というユーモア溢れたメッセージが込められている(バンクーバー国際空港で)

人と環境に恵まれた人生

華やかな世界で、花形職業。最前線の人々と関わってきた和子さん。誰もが羨むような生活を送ってきたのだが、ある時「自分の実績に満足してしまい、すべてを変えたくなった」。

そこで以前から希望していた海外進出を実行すべく、ワーキングホリデーメーカーとしてカナダ・バンクーバーへ渡った。バンクーバーを選んだ理由は、自然・海・近代都市が融合する美しい街並みに惹(ひ)かれたことと、大きすぎず小さすぎない、日本の地方都市規模の街のサイズが気に入ったからだ。そして「まだ広告全般が熟していなく、需要があると見込んだ」ことも大きい。 「デザイナーとして海外で通用するか、自分の腕試しをしたかった」。

「まずは英語力を強化しよう」と、語学学校へ3ヵ月間通った。そこでも人に恵まれた。カウンセリングで「君はカナダで何がしたいのか」と聞かれ、「会社を経営したい」と答えた。すると会社経営に必要な語学プログラムを組んでくれ、徹底的にトレーニングをしてくれたのだ。「とても充実した学生生活で、心から感謝している」恩師とは、今も交流が続いている。

 

営業なしで売れっ子デザイナーに

デザイナーとしての仕事は、思わぬところから始まった。和子さんは広告デザインに使用するための写真撮影のために、プロ用カメラを持ち歩いているが、それを目にした人々から「カメラマンなのか」と声を掛けられるのだ。そこで「デザイナーとして広告を手掛けている」と説明すると、「ぜひ仕事をして欲しい」と話が進んだ。また幸運だったのは、たまたまルームメートが2人とも映画関係の仕事をしていたため、そこからネットワークが広がり、多くのチャンスを手に入れるきかっけをつかんだ。

それらのネットワークから紹介された印刷会社の社長が和子さんの作品を気に入り、「うちの仕事を請けてくれないか」と申し出てきた。そこで製作を頼まれたスマトラ津波支援の募金活動のポスターが好評で、その後の受注に拍車をかけた。そんな折、知人からバンクーバー国際空港で2店舗の生花店を経営する人物を紹介された。会ってみると、空港のメインロビーに出す大きなパネル広告を頼みたいという話だった。大きな仕事のため、いくつもの業者との競争となったが「センスが気に入った」と、和子さんへ正式に依頼がきた。

 

結果が出たら次のステップ

パネル製作に関しては、空港の広告を総括するマネージャーとやりとりしなければばらなかった。これほど大きな仕事は初めての上、英語での打ち合わせ。「ものすごく緊張した」が、マネージャーは親切な人で、素材の供給会社も知らない和子さんに業者を紹介してくれた。そうして出来上がった看板は大好評。フードコートのテーブル用に作った広告の方は、半数が盗まれるほどの反響だった。

デザイナーとして充分通用することを確認した和子さんは、次なるステップへ動いた。キャリアアップ留学サポート会社のチーフデザイナー兼同社出版物の編集長としてスカウトされたのを機に、その会社の立ち上げに携わり、現在、運営の全般を任されている。

「バンクーバーでの会社運営と出版の基礎をしっかり学ぶつもり」。社長もその夢を応援しているという。土日はデザイナーとしての仕事もこなし、今はまた日本時代のように多忙な日々を送っている。出会うものすべてを吸収し、自分の栄養とする和子さん。その成長は留まるところを知らない。

 

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