ライフ - 連載コラム記事
梅田由美子さん


留学生と共に20年!




東京外国語大学留学生支援の会幹事

梅田由美子さん

 国際化、国際化といわれ始めて久しい。 社会、経済等のグローバル化の進展と共に、世界的に教育の国際的通用性・共通性が求められ、国際競争力の強化を図る必要性が唱えられている。世界的に通用する教育内容、成績評価、単位互換制度等の積極的な実施など、日本の大学の国際化への対応が緊急の課題となってきている。大学も国際化に対応できるように変革を求められている。めまぐるしく変革する大学の中で、受け入れた留学生たちへの対応はどうだっただろうか


梅田由美子さん

 私が留学生課で働き始めた頃(1988)は、政府も様々な基盤整備(留学生課、留学生センターの設置、奨学金制度の整備等)を実施し、民間でも留学生向けの奨学金、様々なアルバイトの求人等、留学生のニーズに応えるための対策を色々と考え始めていた。
本校では、それまで多数を占めていた日本語専攻の留学生に加えて、研究生、国費留学生等が増加し、留学生数が200名を超え、留学生センターを要求する動きも出てきていた。それと共に、留学の動機、目的・形態も多種・多様になってきた。留学生のニーズに応えるための地方公共団体との協力体制も始まり、留学生が、地域の住民や子供たちと交流するプログラムも多数提供されるようになった。


梅田由美子さん

 その頃始めた地域との協力事業に東京都北区との提携事業がある。これは、異文化理解シンポジウム、短期国際交流員事業等で留学生の力を北区民、北区の職場の国際化に生かす一方、留学生が日本の職場に入ることで、留学生の日本理解を助けるものだが、相互に有益な取り組みとなった。この頃は官民一体で、また、それぞれの受入れ大学、学校が、留学生に関わる問題を出来るだけ解決するための努力をしていた時期でもあった。
  それでも、教育に関する問題、連帯保証人の問題、ビザに関連する問題、日本人との交流がない、友達が出来ない等々の留学生が共通に抱える問題、家族に関連する問題、生活上の問題、精神上の問題など、数え切れない問題にぶつかった。そのような、一人の力では対処できない問題を解決するために、私はJAFSA(留学生問題研究会)という組織に加入し、多くの大学、日本語学校の留学生担当者との情報交換、研究会を通して多くのことを学び、自分の力不足を補っていった。また、留学生受け入れの先進国である、アメリカのNAFSAという組織の研修会参加を通じて外国の大学の担当者ともネットワークが出来た。
  やがて、2003年には、本校でも留学生数が600人を超えていた。しかし、増加する留学生の受け入れ体制は不十分で、奨学金、宿舎、授業料免除、アルバイト等が、数の増加に反比例して悪くなっていった。また、入管の資格審査がより厳しくなったこともあって、学問を成就できない留学生も相当数出てきた。勉学のために留学したにもかかわらず、授業料のためのアルバイトに追われ、勉学が出来ずに成績が悪くなり、奨学金がもらえず、授業料免除も出来ないと、悪循環に陥り、結局除籍という学生や、差別で日本嫌いになった学生、気力を失った学生なども徐々に増えていった。
それらの問題解決策の一つとして、7年前、大学の中に大学教職員・OB・地域のボランティアで組織する、留学生支援の会を70名で発足させたが、現在は700名近くの会員で活動を続けるまでに成長した。大学の組織だけでは手の届かない部分を、ボランティア会員が様々な生活・財政支援・友好交流活動をすることで、留学生たちの持つ夢をかなえる手助けをすることが出来ればと願っている。
  ところで、最近、靖国問題で政治の世界では中・韓との間に軋みを生じているが、民間においては、この何年間かの韓流ブーム、アジアブームが継続している。この十数年身をもって感じてきたのは、国同士の関係も、また、組織としての対応もさりながら、個人と個人のつながりが、より一層大切だということであった。また、そうしてその間に培ってきた人間関係は、これからも大事にしていかなければならないと強く思っている。



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