スタディー−留学・英会話記事
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篠原幸子
静岡出身。短大を卒業後、2年間のOL生活。1997年9月7日渡加。カモーソン・カレッジを経て現在はUniversity of Victoriaで女性学を専攻中。
ビクトリア大学(UVIC)への編入
UVICの仲間達

2000年5月、晴れてビクトリア大学(UVIC: University of Victoria)の一般課程へ2年生として編入した。編入時に専攻する学部が決まらず悩んでいた私だったが、それまでの留学先であったカモーソン・カレッジで最初に受講した英文科の授業が楽しかったことや、もとより読書が好きという単純な理由から、英文科を専攻することにした。安易な気持ちで選択したことが後になって私を苦しめることになるとは、この時は知る由もなかった。

UVICに編入して最初に驚いたのはクラスのサイズだった。カモーソン・カレッジでは1クラスは多くても40人だったが、UVICでは1、2年のクラスは100人ということが多々ある。教授はマイクを使って講義を行い、一人ひとりに細かな指導はしない。また、質問があって教授のオフィスに行くと長蛇の列だ。TA(教授のアシスタント:Teaching Assistants)もいるのだが、そこにも長蛇の列ができている。生徒数が多いことから、テストや宿題も答えを選択したり○×式で回答する問題ばかりだ。クラス・メイトと話す機会もなく、「これで大丈夫なのかしら?」と不安は募るばかり。大人数のクラスで共通して言えることは出席率の悪さだ。中間テストや学期末テストになると、「こんなに多くの学生がこのクラスにいたのかしら?」と思うぐらいたくさんの学生が出てくる。友達のカナダ人学生から聞いた話では、こうした大規模なクラスはあまり努力しなくても簡単に良い点数が取れるため、勉強嫌いな学生に人気があるらしい。でも私のようにアット・ホームな雰囲気のなかで勉強してきた人間にとって、大規模なクラスは学んでいるという実感もなく、お金と時間の無駄なような気がして仕方なかった。

6年来お世話になっている美容師のあつこさん

UVICで初めて受講した英文科のクラスは今でも忘れられない。
「English200A」と呼ばれるクラスで、UVICで英文学を専攻する者は避けて通れないクラスだ。中世からルネッサンス時代の詩人や作家の作品を読んで、当時の時代背景を読解するクラスである。ただでさえ満足に理解できない英語なのに、ルネッサンス時代の英語はOld Englishと呼ばれ、現在では使われていない単語や書法がたくさんある。「その英語に隠された意味は?」と出題されても私にはお手上げである。また、その当時の詩や短編小説は聖書と密接な関係があり、クリスチャンではない私にはさらに手にあまるものだった。2年生のクラスであるため、教授は学生がある程度理解していることを前提に授業をするので進行も早く、これにも苦労させられた。

「English200A」での最初の課題はエッセイ(小論文)だった。賢明に取り組んだにもかかわらず、返却された私のエッセイに「Out of Concept. Go back to ESL!」(課題の意図を理解していない。英語をもう一度勉強しなさい)と赤い字で書かれていたことは、今でもはっきり覚えている。手を抜いたつもりはなかった。しかし明らかに実力不足であり、英語に対して限界を感じた瞬間だった。

そんなことがあり、気持ちが落ち込んでいる時に出会ったのが、今も仲良くしているUVICの友人たち、そして韓国人のボーイ・フレンド、 サムだ。 「もう日本に帰ろうかな…」と半ばあきらめている時に、彼らは私を励ましてくれた。他国でだれに頼ることもなく頑張っている留学生たちは、本当に孤独である。大学にはカウンセラーもいるのだが、悩みを話したところで本当に分かり合えるのは自分と同じ環境に置かれた人間だけだと思う。今思うと彼らがいなかったら私は日本に帰国していただろう。面と向かって言ったことはないが、本当に感謝している。

こんな友達の応援もあって、私は「English200A」を無事にパスした。優秀な成績ではなかったが、私には大満足のいく結果だった。そんな矢先、母がカナダに遊びに来た。1週間という短い滞在中に、ビクトリアとバンクーバーを案内した。母は、父に私の生活の様子を確認してくるようにと言われてやってきた。心配性の父は、一人暮らしを始めた私のことが気がかりだったのだ。母はクリスマスの美しいイルミネーションや草履のように大きなステーキ、スケールの違うカナダの大自然などを目の当たりにして大満足だった。

2000年という年は目まぐるしく終わった。2001年元旦、ビクトリアの町を一望するトルミー山から日の出を拝んだ。「また今年も一年頑張るぞ!」と。