ライフ−連載コラム記事
  ことばと ワーホリ追跡日記 Hello, Canada

小林久美子さん
学習院大学法学部政治学科卒業。
特許関係の事務所で1年半勤務。
ワーキング・ホリデー・ビザで
2003年9月に渡加。


追跡レポーター:
山本英徳(やまもとひでのり) departure@cside.com

バンクーバーの夏は、カヌー、カヤック、ラフティング、ハイキング、マウンテンバイクなど、様々なアウトドア・アクティビティーが楽しめることで知られている。
バンクーバーは海と入り江に囲まれ、町の背景には山脈(コースト・マウンテン)が連なり、町のなかにも緑が多く自然がひじょうに豊富だ。週末ともなれば、こうした環境のなかで、家族連れや友達同士でアウトドアを楽しむ光景が多く見られる。
なかでも、バンクーバーのダウンタウンと入り江を挟んで対岸にあるノース・バンクーバーはコースト・マウンテンのふもとにある地域で、高くそびえる針葉樹に囲まれて住宅が並んでいる。海岸沿いの住宅地から遠ざかるに連れて、家の敷地が広くなり、森閑とした渓谷や清流が目に入り、ダウンタウンから数十分しか離れていないとは思えないような環境だ。

このノース・バンクーバーの東端に位置するディープ・コーブには、森林に囲まれて海水浴ができるひじょうに小さな湾があり、観光名所ではないが、地元の人なら誰でも知っているかわいらしいスポットだ。
うわさを聞いて小林さんも行ってみた。
思ったよりも小さく、周囲にはほとんど店もない素朴な湾で、海岸にはゴミひとつ落ちていない。
あいにく天気が悪かったが、沖に向かってカヌーやカヤックを漕ぎ出す人たちがいる。
並んで海辺を歩きながら静かに語り合う老夫婦や、犬を連れた家族連れがいる。だれもが、毎日ここに来ているかのように慣れた感じで、自然と一体になってのんびりと楽しんでいる。こうした姿は、小林さんの目にとてもうらやましく映った。

5月から新たに日本食レストランで、夜だけのパートタイムを始めた小林さんだが、ようやく新しい仕事にも慣れた。そこで、空いている昼間の時間は、お寿司を中心に扱った日本食レストランでの仕事を始めた。せっかくワーキング・ホリデーで来たのだから、より多くの職場を経験してみたいことと、時間をもて余すより忙しくしている方が好きなことが、二つの仕事を掛けもつことを決めた理由だ。
仕事は両方ともウェイトレスとして客と接するので英語の勉強にもなる。 勤めているレストランは、片方が若い家族や学生が多く住んでいる地域にあり、もう一つがオフィスビルが立ち並ぶ地域にあるため、客層が異なり、要求されるサービスも異なる。

客層が若いレストランは、夕方から真夜中にかけてが営業時間。仕事では客に素早く対応することは当然のこと、メニューの説明から子供用のいすを用意したり、注文へのクレームに対応したり、注文とは別にフルーツやつまみを出したりと臨機応変な接客が求められている。
一方、オフィス街のレストランでは、ビジネスマンを中心とした客がランチタイムに集中するため、とにかく早く料理を出すことが求められている。ここのレストランからは面接の時に、「とても混むからすごく体力を消耗します」と脅かされたが、実際、その通りだった。

仕事は忙しく大変ではあるが、いろいろと勉強になり充実感がある。カナダのレストランで働き始めた時と比べて英語力は向上したが、クレームへの対応などがひじょうに難しいことを実感し出した。経験を積んだおかげで以前ほど苦労することはなくなったが、もっと色々な言い回しを覚えて接客に幅をもたせたいと感じるようになってきた。

昨年9月に渡加してからすでに10ヵ月を迎え、ワーキング・ホリデービザの有効期限は2ヵ月を残すばかりとなった。小林さんは、ワーキング・ホリデービザが切れるまでは今の二つ仕事を続け、その後は観光ビザに切り替え、カナダとアメリカを旅行する計画を立てている。

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