スタディー−留学・英会話記事
  こうすれば英語が上達する! 私の留学記
  海を渡った高校生 留学無料代行手続き・問合せ

自分のルーツを大切に異文化を吸収していきたい。
福永洋折(ふくながひろき)君
ブリティッシュ・コロンビア州ラングレー市 D.W.Poppy Secondary School 卒業, 現在21才

福永洋折君の気持ちが留学に傾いた第一の理由は、中学の時に枠にはめられてしまいそうな環境を経験し、そのような環境に居心地の悪さを感じていたためだ。福永君は中学卒業と同時にカナダに渡り、D.W.Poppy校に入学。2002年に高校を卒業し、現在はブリティッシュ・コロンビア州のダグラス・カレッジに通学している。

カナダの高校に始めて登校した日は、これから始まる新たな生活への期待に胸がいっぱいだった。先生も生徒たちも福永君をオープンに迎え入れてくれた。先生の指示で一人の生徒が福永君のサポート役となり、教室の案内をしてくれた。ただ、初めの頃は緊張で肩に力が入っていて、周りの人が話す内容を理解できるにもかかわらず、答えはイエスやノーの一言二言しか返せなかった。

授業の前後にはよく分からなかったところを頻繁に先生に質問した。課題がない時でも家に返ってから1、2時間は授業の予復習にあてた。課題で大変だったのはエッセイ(小論文)を書くことだった。英語のクラスでは「友情について」「青少年の問題」などのテーマで500語ほどのエッセイが課された。福永君はまず、自分の考えを引き出すこと、その考えを支える事例を探すことに力を注いだ。先生は「事例がしっかりしているほど、エッセイが生きてくる」と指導してくれたからだ。

豊富な選択肢のある授業のなかでも、最も魅力があったのは法律の授業だ。担当の先生は教科書で扱うテーマごとに、現在進行中の事件や過去の事件を豊富に紹介してくれたため、生きた内容として伝わってきた。先生が自分の教育分野にとても誇りをもって指導にあたっていることも、生徒を魅了する一因だったのかもしれない。

法律の授業で「昔話のなかにある犯罪を取り上げよ」という課題が出された時、福永君は日本の昔話『桃太郎』を取り上げた。ざっと話の流れを紹介した後で、「おじいさんとおばあさんが見知らぬ子供を自分の子供にしたことはカナダの法律の第○条の△章に照らして罪である」「桃太郎が鬼に暴行したことは・・・」とレポートにまとめた。先生は「これは面白い」と評価してくれた。法律の授業の一環として、クラス全員が正装してバンクーバー最高裁判所の公判に出かけたことも印象的な思い出となっている。

課外授業では、生物クラスで行った白頭ワシの見学が印象深かった、冬にバスで郊外に出かけて、白頭ワシの保護区へと向かった。現地では10人ほどでゴムボートに乗り、みんなでオールを持って漕ぎ進みながら、辺りの自然についての先生の解説に耳を傾けた。

ホスト・ファミリーは福永君と同じ年代の二人の兄弟のいる家庭だった。食事の後には必ずデザートが出されたが、ホスト・マザーに「デザートは?」と聞かれるたびに福永君は「要りません」と応えていた。デザートをまったく食べないことにホスト・マザーは驚き、福永君の体調が良くないのではと心配した。福永君は食事だけで十分満腹と感じていただけなのだが、ホスト・マザーに「何を思ったり考えたりしているのかを言わないと、ヒロキのことはわからない」と言われて、カナダの文化は以心伝心で気持ちを察しあう日本とは異なり、自分を表現することが大事な文化であることを改めて感じた。

ホームステイが2年目に入った頃から、福永君は自分の着たものは自分で洗濯することを始めた。食べたものを食器洗い器に入れることは、ホームステイ開始時からの自発的な手伝いとしてやってきた。こうした身の回りのことから一つ一つの行動の決断まで、日本にいた時に比べて、自分でなすべきことは格段に増えた。

留学開始から1年たった頃、精神的に苦しい時期があった。その時、学校のカウンセラーはたびたび声をかけてくれ、ホスト・マザーや留学サポート機関の人々、そして両親が電話を通じて福永君を励まし支えてくれた。日本にいる時には当たり前に感じていた両親の存在や、自分を支えてくれる周りの大人の存在がどんなに大切なものかを心の底から感じた。

福永君はこれから留学しようとする人へ、「どの国にあっても自律心が大事だが、周りに広がる自由に対して、自分で責任が取れるかどうかを問いつつ、自分で行動の枠を決めていくことが大事」。また、「自分が動かなければ周りは動かず、何も得られない。そのため、積極的に自分を出して動いていくこと。勉強から学ぶだけでなく、他の文化の良いところを学んで、いかに自分を大きくしていくかが大事なことを伝えたい」という。

留学生活も6年目に入った今は、日本とカナダの両国を冷静に見る目ができてきた。そしてカナダの文化を受け入れながらも、つねに自分の価値観と照らして、自分に取り入れるべきかどうかをしっかりと判断するようになった。 「日本にルーツをもつ自分は、どこに行っても日本人であるということをベースにしながら、異文化の良いところを吸収していきたい」と、落ち着いた口調で話す福永君。留学の経験がかけがえのない財産となったようだ。

 禁無断転載 Japan Advertising Ltd. - Canada Journal