文化の連続性 冷や汗だらけの、貴重な通訳経験 サイモン・フレイザー大学の上級通訳養成講座では、フィールド・トリップと呼ばれるクラスで、さまざまな所を訪れ、そこでのガイドや関係者の説明を逐次通訳する実地練習を経験する。訪れる場所は博物館、裁判所、行政機関、金融機関等さまざまである。ほとんどの場合、生徒は予備知識をもっていないため、事前の準備として関連資料を読み込み、知らない単語や重要な背景知識を短時間にできる限り詰め込むことになる。しかし当然のことながら、現場では自分が思っている通りにはいかない。また、予想外の事態に遭遇するものの、教室の一歩外に出れば先生にもクラスメートにも頼れず、何とか自分で対処しなければならないのである。こうして現実の厳しさを実感し、失望と興奮が入り混じった気持ちと、沢山の反省材料を抱えて毎回帰ってくる。しかし、自分の弱点を知る上でも、ビデオに撮られた自分の姿を客観的に見ることはひじょうに有意義である。 先住民の英知に触れる 最近、このフィールド・トリップで、ブリティッシュ・コロンビア大学の人類学博物館を訪れた。 私が過去に訪れた土地のなかには先住民に縁の場所もあり、彼らについて学ぶ機会がなかったわけではない。しかし彫刻や織物等の工芸品の美しさには目を留めても、先住民の文化や歴史、また彼らの自然と融合した価値体系に関しては全く無知だった。今回のフィールド・トリップを通じて、私は、先住民の文化や歴史、また彼らの英知を、もっと多くの人に知ってほしいと思った。 Clan System(氏族制度)− 先住民の驚くべき叡智 今回私がもっとも興味をもったのが、クランシステムというギッツァン族の氏族制度である。先住民族の一つであるギッツァン族の創世記では、動物(伝説上の動物を含む)は人の姿になることができ、人類は動植物から始まったとされている。そのためシャチ、狼、柳の木、カエルのどれかにギッツァン族の人々は属していたのだという。驚くべきことにこの制度は、近い血縁関係にある者同士の結婚を防ぐためにも、また限りある資源を守り自然環境を維持するためにも重要な意味合いをもっていた。例を挙げると、狼のクラン(氏族)に属する女性は、別のクラン出身の男性と結婚しなければならない。長老はだれがどのクランに属しているかを把握しており、交際を始めるにあたって長老の許可が必要だったという。なるほどと感心して聞いていたところに予期せぬ質問が飛び出した。 Cultural Continuity−受け継がれる文化 「文化の連続性」と訳されるこの「Cultural Continuity」という言葉が、先住民族の文化のなかでひじょうに重要な概念となっている。
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