ライフ−連載コラム記事
  カナダに住む ことばと カナダ横断旅日記 Hello, Canada

「北アメリカ大陸を横断する」
「カナダの大自然を肌で感じてみたい」
私は、カナダに来る前から決めていた。

今年の4月の入国から3ヵ月間、ブリティッシュ・コロンビア大学付属の英語学校で勉強し、その後1ヵ月間かけて旅行するのが私の計画だった。
当初、私が考えていた旅行のイメージは、1人、バックパックを背負い、目的地は決めず、気に入ったところがあれば、その土地を散策して周るというものだった。いわゆるバック・パッカーになりたかった。今まで一人旅をしたことがないため、自分がそういう状況に置かれたら、どうなるのかを見てみたいという好奇心があった。
だが、もし一緒に旅行できる友達を見つけられれば、それはそれで一人よりは心強いだろうとも思った。早い話が大陸を横断できればどちらでもよかったのだ。交通手段としては、大陸横断鉄道、または長距離バスを考えていた。車の免許証は取得していないため、車を運転することは私の選択肢にはなかった。
鉄道もバスも、一定期間乗り放題のパスがあり、1ヵ月という時間のある私にはぴったりだった。しかし、どちらも長所と短所があってなかなか決められず、ガイドブックやホームページとにらめっこをする日が続いた。

私は、何かの計画を立てた場合、時間に余裕をもたせて準備は始めるものの、ぎりぎりにならないと本腰を入れて取りかかることができない性格だ。今回の旅の計画も例外ではなかった。こうして、何も決まらないまま2ヵ月が過ぎようとしていた。そんな時、思ってもいなかったチャンスがめぐってきた。

ブリティッシュ・コロンビア大学付属の英語学校では、毎週金曜日に、授業の代わりに用意された約10のテーマのワークショップ(講習)のなかから、自分のやりたいことを選べるシステムになっている。私はこのワークショップで、講師が一つのテーマを選んで講義をする「レクチャー」を選んだ。その日のテーマは「ユースホステル」。

私は計画中の旅行で、ユースホステルを利用する予定だったので、何か良い情報が得られるかもしれないと思ったのだ。結果は、ブリティッシュ・コロンビア州のユースホステルについてのみを対象とした講義だったため、期待したほどの収穫はなかったのだが、講義後の質疑応答で、私のクラスメートである韓国人のレオリオが、「カナダ横断旅行をするつもりなのですが・・・」と質問した時、私は「このレクチャーに参加したことは正解だった」と思った。レクチャー終了後、私は迷わず、レオリオにカナダ横断旅行計画の話を聞いた。レオリオは、彼の韓国人の友達と2週間、大陸横断鉄道での旅行を計画していた。レオリオの友達は旅行好きで、計画もほぼできあがっているとのこと。レオリオは、近日中に友達に会い、旅行について話し合うことになっていることも教えてくれた。多少の迷いはあったが、とりあえず、私はその話し合いに参加してみることにした。

会合はバンクーバーの韓国料理レストランで開かれた。簡単な自己紹介から始めて、私たち3人は韓国料理に舌鼓を打ちながら本題に入っていった。レオリオの友達で旅行好きのヤンウーは、私に2週間の計画を説明してくれた。最初の1週間でモントリオールまで行き、その後、彼の韓国人の友達2人が合流し、モントリオール、ケベック、トロントを観光した後、飛行機でニューヨークに飛び、2日間滞在後、レオリオとヤンウーの2人は飛行機でバンクーバーに戻り、合流した2人は観光を続ける、というものだった。

ヤンウーは説明後、もし私が参加するなら、レンタカーで横断したいと言い出した。3人で車を借りた方が鉄道で横断するより費用が安く収まるからだ。しかし、私は運転免許証をもっていないし、レオリオも免許証はもっているが初心者で、韓国でもほとんど運転したことがないという。ヤンウーは自分が全行程約4000キロを1人で運転すると言い出した。1週間で4000キロということは、時速100キロで走行するとして、1日7〜8時間運転し続けなければならない。かなり無謀な計画に思えた。しかし、この機会を逃すと、北米を車で横断など不可能に近い。韓国料理を満喫した後で、私は彼らと一緒に旅行することに決めた。

しかし、それから出発までの約1ヵ月、トロントからニューヨーク、ニューヨークからバンクーバーの飛行機のチケットと、レンタカーを予約した以外、私たちは何の用意もしなかった。この様子を見ていた私のホストファミリーは、あまりの計画のなさに心配を隠しきれないようだった。
私はバックパックを買おうと思いながらも1ヵ月間は何もせず、出発の2日前になってようやく購入した。その翌日、カナダの地図を買い求め、大陸横断経験のある英語学校の先生に旅行のルートについてアドバイスを求めた。直前の直前になって動き出した私たちであった。

そして7月1日。いよいよ出発の日。
私はレオリオの家で彼と2人、ヤンウーを待った。ヤンウーが車を借りて、朝11時ごろに来ることになっていた。しかし、30分、1時間待ってもヤンウーは現れない。待ちくたびれて眠りかけていたその時、玄関のチャイムが鳴った。ドアを開けるとそこにはヤンウーと、これから1週間、私たちが車内で多くの時間を過ごすことになるレンタカーが、肩を並べていた。
車を借りるのに少々手間取ったとのこと。はやる気持ちを抑えながら荷物を積み込み、車に乗り込んで「いよいよ出発!」としたかったが、最初に止まったのは、近くのスーパーマーケットの駐車場。旅の間、食費を最小限に抑えるため、私たちはサンドイッチを作って食べることにしていた。そのための材料調達である。その後で、韓国食料品店にも立ち寄り、非常用にレンジで温めるだけで食べられるご飯と、カップヌードルを購入。これでやっと準備は万端整った。私たちは目的地モントリオールに向けて、車をスタートさせた。時刻は、14時30分。これから先は長い。(続く)

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