ライフ - 連載コラム記事
カナダに住む(Live in Canada)

「理想のカフェと運命の出会い!」


是井  由美子さん 

是井  由美子
(ぜいゆみこ)さん 24歳

カフェFinch’s店長/鹿児島県出身

バンクーバーのダウンタウンにある、アンティーク調のおしゃれなカフェ『Finch’s』が、是井由美子さんの職場だ。こだわった素材の料理やデザートは、すべて是井さんが調理する。

夢を叶えたい

 3年勤めたシステム・プログラマーの職を辞め、ワーキングホリデーとしてカナダに来た是井さんには「外国のカフェで働きたい。そして、それを生かして30歳までに日本で自分の店を開く」という明確な目的があった。中学生頃から海外に憧れ、英語が大好き。高校時代には飲食店でアルバイトをして、飲食業の楽しさを知った。その両方の夢を叶えるための渡加だった。

 初めはイギリスを目指していた。しかし、ワーキングホリデーのビザが取得できなかった。是井さんは「翌年の募集まで待ちたくない」と、急遽行き先をカナダへ変更した。カナダへ来たものの、所持金は30万円。「すぐに仕事をしないと生活ができない」。2週間目にカフェの求人を見つけたが、雇ってもらえず、当座の生活のため、日本食レストランで働いた。5ヵ月が経ち、暮らしも安定してきた。「カナダに来た目的は、現地のカフェで働くこと。このままではいけない」。再度就職活動を始めようとしていた時に、現在の職場Finch’sが目に留まった。


理想のカヘェとの出会い

写真

 イメージ通りの可愛らしい店の中では、オーナーがクッキーを焼いていた。その瞬間「ここしかない」。ひと目でその店が理想のカフェだと確信した。とはいえ、是井さんはカフェで働いた経験もなく、英語もあまり話せない。そこで是井さんは、「タダでいいから、1ヵ月働かせて欲しい。それで私のことを気に入ったら、正式に雇ってくれればいい」と、オーナーに交渉した。オープンして3ヵ月だったそのカフェは、ちょうど人手も資金も足りず、お店にとっても渡りに船。即決で決まった。結局、2ヵ月無償で働き、3ヵ月目から給与を貰えるようになった。それでも、最低賃金と定められている時給の6割ほどである。「半人前の仕事しかできないから、それで構わないと私が言った」。


学校へ行かなくても英語は話せる!

 最初は英語がわからず、客に話しかけられるのが苦痛だった。また、自分の英語力が原因で、客を失うことも避けたかった。「だから、一生懸命皿洗いをしていた(笑)」。今では誰とでも会話を楽しんでいる是井さんだが、英会話学校へはついに一度も行かなかった。日本での学生・社会人時代を通しても、英会話は習ったことがない。「日本人なら、英語の基礎はある。きちんと勉強していれば、それで充分対応できる。あとは実践あるのみ」と、是井さんは言う。住まいは、1軒屋をカナダ人女性とシェアしており、職住共に、英語だけの生活だ。

夢に向かって

 最初は商品を全然作らせてもらえなかったが、今は店のメニューの全てを是井さんが作る。基本的にはオーナーのレシピだが、焼き菓子は是井さんのオリジナルも多い。お金や仕入れの管理も是井さんの仕事だ。現在働くスタッフは、全員是井さんより後に入店した後輩。オーナー夫妻は、軌道に乗ってきた開店1年目に双子が生まれ、今はほとんど店に出ていない。そんな中、是井さんのビザの期限が近くなり、オーナーから「ワークビザ(就労ビザ)をサポートしたい」という申し出があった。是井さんは将来自分のカフェを持ちたい。オーナーも先々日本に店舗を出したい。「それなら一緒にやらないか」という嬉しいオファー付きだった。

 店の内装は全て、大工でもあるオーナーが手掛けた。日本の店も、オーナーが日本へ出向き、デザインとリフォームをしてくれるという。「場所は田舎で、古い日本家屋を探そうと決めている」。インテリアは、イギリスと日本のアンティークを混在させ、食材は地元の野菜を中心にヘルシーメニューを出すつもりだ。インポート物の食材は、オーナーが送ってくれることになっている。オーナー夫妻は年内にはバンクーバー島への移住計画があり、店は完全に是井さんへ任されることになる。「日本の店をオープンしたら、半年カナダ、半年日本という生活を実現させたい」。

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