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早瀬友梨(はやせゆり)
立命館大学文学部2回生。京都出身。趣味はテニス、旅行、買い物、スポーツ観戦。

カナダに来て、もう5ヵ月が過ぎた。
最初は期待と不安でいっぱいだった私だが、前期を終えて折りかえし地点が来ると、留学で何も得ていなかったらどうしようという焦りが私を襲い始めた。
しかし、成人式を境に私の気持ちは大きく変わった。

左が早瀬さん

私は今年で二十歳になり、日本で成人式を迎えるはずだったが、留学するため日本で成人式に参加することは断念せざるを得なかった。カナダの留学先でも日本からの交換留学生のための成人式が開かれると聞いていたが、私は日本以外の場所で成人式を挙げることに興味がなく、一時は成人式を理由に留学を諦めようと考えたほど、日本での成人式に固執していた。
それはただ、和服を着て昔の友人に会うことができるという単純な理由だったが、昔から楽しみにしていただけに、なかなか諦めることができず、留学を決めた後も、成人式のために一時帰国できればと思い続けていた。しかし、カナダに来て99人の仲間と様々な経験を共にしながら日々を過ごしていくうちに仲が深まってゆき、ここでの仲間との成人式も悪くない、と思い始めた。
そしていざ成人式を迎えてみると、それは期待以上のものだった。成人式を日本で迎えられない私たちのために、仲間が11月から長い時間をかけて準備を始めてくれて、とても感動的な成人式を迎えることができた。また、何より改めて親への感謝の気持ちと、親の愛情を確かめることができ、この気持ちを伝えたいと強く思った。そして、親への感謝の念を抱いたこと自体が、私にとっての成長だということに気が付いた。

私は、日本では家族と離れて暮らしたことがなく、ほとんどといっていいほど親のありがたみというものを感じていなかった。親はいつもそばにいて、いろいろなことをやってくれて当たり前で、親の苦労など考えたこともなかった。しかし、カナダに来てから一人で生活し、日常の生活すべてを自分でやっていくうちに、日本では感じることができなかった親への、特に母親へのありがたみというものを感じるようになった。
そして、成人式では、両親からの手紙を受け取った。普段では絶対に受け取ることができないであろう、父親からの手紙もあった。
生まれてから一度も父親からの手紙を受け取ったことがなかった私はひじょうに驚き、そして、父親からもらった言葉に非常に感動した。日本にいた時は、父はあまり家にはおらず、たまにいてもお互いにほとんど話をしないという、典型的な父親と娘の関係だった。カナダに来てからも一度しか電話で話したことがなく、母親に比べるとずいぶん遠い存在だった。しかし、その手紙を読んで、自分がとても大切にされ、父に必要とされている存在だということを知り、その手紙を読みながら涙が止まらなかった。
その日、私は日本の両親に電話をかけて感謝の気持ちを伝えようとした。しかし、どうしても照れくさくて、言いたかった言葉を口に出すことができなかった。今は、少し後悔している。だが、もしカナダに来なかったら、私はずっと両親のありがたみや愛情に気付くことなく、毎日を過ごしていたかもしれない。

私を襲っていた焦り、特に語学力が期待通り伸びないことへの焦りは、自分で自分の成長を確認できないことが原因だった。もし語学力が向上しなかったらこの留学が意味をもたない、と思うこともしばしばだった。もしかしたら、英語力について言えば、私はあまり成長していないかも知れない。しかし、語学力の向上が思っていたように達成できなかったからといって、その留学が意味をもたないというわけではない。
私がこの留学で得たものは確かにある。それは、他人とは比べられないもので、何をどれだけ得たかは、私にすらはっきりわかるものではないが、少なくとも親への感謝の気持ちを得ただけでも、この留学は私にとって価値あるものだと思っている。

話は成人式に戻るが、日本で成人式に参加して、大きな会館に集まって市長の話を聞き、知らない人々からのお祝いの言葉をもらう、という成人式を迎えていたら、両親からの手紙を受け取ったり、親の愛情を再確認することはなかっただろう。
私たちの仲間が作ってくれた、私たちのためだけの成人式は、日本での成人式とは比べものにならないくらい、素晴らしい成人式だった。この場を借りて、その仲間たちと、そして何より20年間絶えず愛情を注ぎ続けてくれた両親に感謝の気持ちを伝えたい。

3ヵ月を残すだけになった留学生活だが、残り時間が少ないことを嘆くのではなく、カナダでしかできないことや、自分がやりたかったことを後悔の残らないように精一杯やり、いろいろなものを学んでいきたいと思う。