ライフ−連載コラム記事
  カナダに集う Hello Canada カナダ横断旅行日記 言葉とKOTOBA

前号まで
私たちはアメリカのミシガン州からカナダのオンタリオ州に再入国し、スペリオル湖の近くで第6日目の夜を過ごした。

大陸横断7日目。7月7日、晴れ。

今日で北米大陸横断を始めてから1週間が経つ。ノース・ベイを午前10時に出発し、午後にはカナダの首都オタワに到着した。しかし、ここまで来ても悲しいことに、私たちは先を急がなければならず、車を止めて街を歩いたり観光することもできなかった。

車窓から見る景色はバンクーバーのそれとはまったく違っていた。
オタワのある大陸東部は、バンクーバーのある大陸西部に比べて、200年から300年早く開拓されたため、町の成り立ちが古く歴史が感じられるのだ。オタワの市街地に入って車で一周すると、ゴシック建築の国会議事堂や、荘厳に構える教会が見られた。ヤンウーが運転し、私とリオが写真を撮る。もっとゆっくり旅を楽しみたいと思うが、計画通り距離を稼がなければならず、後ろ髪を引かれる思いで、オタワを後に一路モントリオールへ向かった。

と思いきや、なんと、さっきから同じところをぐるぐる回っているではないか。一方通行の道路が多くて、ヤンウーはここから抜け出せないでいた。試行錯誤のあげく、何とか市街地を抜け、気を取り直してモントリオールへ。と思ったら、今度は高速道路の入口が見つけられない。リオがしびれを切らして、「こういう時は人に聞くのがいちばん早い」と言い、信号待ちで止まった途端、助手席の窓を開け、「Excuse me!」と隣の車の運転手に声をかけた。
「高速道路の入口はどこか?」と聞くと、その運転手は「自分もその方向に行くからついて来い」と車を走らせ始めた。その車の後に付いて行くとしばらくして、高速道路入口の標識が見えてきた。その車は入口の手前で曲がり、私たちはお礼の変わりにクラクションを鳴らして親切な運転手に別れを告げた。この出来事でさらに私はカナダが好きになった。なんて親切でフレンドリーなのだろう。

車を走らせること2時間。
とうとう私たちの最終目的地であるケベック州モントリオールに到達した。バンクーバーを出発して今日で1週間。休む暇もなく1日平均約8時間車を走らせ続け、やっとのことで北米大陸の東側にたどり着いたのだ。その間ずっと運転してきたヤンウーは本当に疲れた様子。しかし、その顔には達成感が満ち溢れていた。
ところで、ここまで先を急いだのには理由がある。
ヤンウーの友達2人と7月9日にここで合流するため、7月8日までにモントリオールに着いて今まで乗ってきたレンタカーを返し、今度は少し大きめのレンタカーを借りておく必要があったのだ。

ケベック州に入ってすぐに、私たちは他の州との違いに気がついた。今まで英語で書かれていた標識がフランス語になっている。ケベック州はかつて、フランスの植民地だったため、今もフランス文化の色が濃い。モントリオールはフランス語を母国語とするフレンチ・カナディアンが人口の8割を占めている。そのため、街中の標識、看板類、行き交う言葉もほとんどがフランス語である。
ケベック州とその他の州の違いは言葉だけではない。ヤンウーはどちらかと言えば、慎重に安全運転を心がけるドライバーである。だが、決して制限速度よりずっと遅く走ることはなく、運転が下手なわけでもない。ところが、モントリオールに入ってから私たちは、他の車から何度もクラクションを鳴らされた。ここは、カナダのなかでも運転が乱暴なことで知られている。最初のうち私たちはかなり戸惑った。というのも、バンクーバーではクラクションの音を聞くことはかなりまれだし、1週間何もないところをドライブしてきたため、クラクションなど聞くことはなかったからだ。アグレッシブな運転に慣れるのに少々時間がかかった。

私がガイドブックに載っているフランス語旅行会話に目を通している一方で、リオとヤンウーは必死に韓国語のガイドブックで韓国料理レストランを探していた。今日は久しぶりにレストランで夕食だ。私としては、せっかくケベック州に来たのだから、その土地ならではの料理が食べたかったのだが、二人は心底韓国料理が食べたいらしく、今日のところは譲ることにした。

今夜はモントリオールに一泊し、車内でほとんどの時間を過ごしてきた1週間の疲れを癒す。そして明日から待ちに待った観光旅行が始まる。(続く)