ライフ−連載コラム記事
  カナダに住む カナダ横断旅行日記 言葉と Hello Canada

↑イチゴ狩り

前号まで
私たちはケベックシティの郊外にあるモンモラシーの滝に到着した。ナイアガラの滝より落差の大きいこの滝を登ろうとしたが、ジーウンが行かないと言い出した。

私たちは仕方なく、彼女を置いて長い階段を登ることにした。滝の上に橋がかかっていて、真上から見下ろせるようになっている。落差が83メートルあるため、その橋はもっと高い位置にあることになる。かなり高いところまで登らないといけない。吊り橋の近くまでケーブルカーで行けるようになっているが、自分の足で登ってこそ達成感と絶景が味わえる。
私たちは登り始めた。ひたすら登ること約1時間30分。滝の真上に到着。大水量と大水音に圧倒されていると、そこへ見覚えのある顔がこっちへ向かってくる。なんと、下で待っていると言ったジーウンではないか。「一体彼女に何が起こったのか? どうして気が変わったのだろう?」などと、ジーウンの心理を推測してみるが、それも無意味かと思いやめた。いずれにしろ、彼女がここまで登ってきたことは正しい選択だったと思う。ここまで来て、この滝を見ないで帰る手はない。

モンモラシーの滝真上から

ちょっとした登山を終えた私たちは小腹が空いたため、ヤンウーの提案でイチゴ狩りをするべく、近くにあるストロベリー・ファームに向かった。私はカナダにもイチゴ狩りがあることにまず驚き、その農園に着いた時、さらに面食らった。農園と言うよりも、ただその土地にイチゴが自生しているだけのように見えたからだ。ビニールハウスも畝(うね)もなければ、雑草も生えっぱなしで、全く手入れされてない。日本では手塩に掛けて育てられるイチゴも、この農園ではこのような扱いである。A4サイズの箱1つにつき約500円で摘み放題。安い。しかし、それだけお金がかかっていないということでもあり、味もそれなりのものだった。

今日は何事もなく終わるかに見えたその日の夜、ヤンウーが私とリオに相談を持ちかけた。彼女たちが合流してから今までの4日間、朝食を除けば、私たちは一度も5人で食事をしたことがない。というのも、彼女たちは昼食を多めにとり、夜は軽めか食べないこともあるからだ。私とリオはその逆。ヤンウーは、昼は彼女たちと食べ、夜は私たちと食べていた。食事は互いに仲良くなる最大のチャンスなのに、私たちはそれを生かせていない。だから今後は一緒に食事をしようというのがヤンウーの提案だった。彼は何とか私たち4人の仲を取りもとうと必死だった。今更のように、知らない人と旅をする大変さを実感した。「すでに気心が知れている友人同士ならまだしも、赤の他人。しかも後から合流した2人になぜ私たちが合わさなければならないのか」という考えが私とリオにはあり、そのため彼女達に歩み寄る努力をしていなかった。しかし、ヤンウーに頼まれたのでは仕方がない。明日からは、なるべく彼女たちに合わせるということで合意した。

モンモラシーの滝

大陸横断12日目。7月12日、晴れ。
今日はケベックシティからトロントまでの移動日。車で10時間という長距離。長い1日になりそうである。この日は私にとって試練の日となった。というのも、4人が車内で韓国語を話し出したからだ。誰かが韓国語で話せば残りの3人は韓国語で答える。それが自然な流れであることはわかってはいるが、自分が会話に入れない歯がゆさを感じずにはいられなかった。私は、無性に日本語が話したくなった。その日の夜、私は耐えかねて、モーテルに着いてから日本にいる親友に電話をかけた。今までたまっていたフラストレーションを電話口で一気に吐き出す。その親友も、タイで私と同じような経験をしたという。タイ人8人と一緒にタイ国内を旅行した時の共通語は英語だったが、タイ人同士だと彼らはしばしばタイ語を話し、私の親友は辛い思いをしたらしい。そんな経験がある親友からの一言。 「そこは寛大になってあげようよ」
この電話の後、私は一気に気が楽になった。これからは気にせず割り切ることにした。

大陸横断13日目。7月13日、晴れ。
今日の目的地は世界三大瀑布(ばくふ)の一つナイアガラの滝。五大湖のエリー湖からオンタリオ湖に流れるナイアガラ川の途中にあり、流れ落ちる水量は世界最大。カナダ滝とアメリカ滝の2つの滝からなり、カナダ滝は、高さ54m、幅670mの巨大な滝で、アメリカ滝の約10倍の水量を誇る。トロントから車を走らせること約2時間。車の量も増え、道の両側に土産物屋が立ち並ぶ通りに入った。大きなカジノの看板が立ち並ぶテーマパークのような街を抜けると、眼前に巨大な滝が飛び込んできた。その途端、ものすごく大きい水音のため、声を張り上げないとお互いの声が聞こえなくなった。窓を開けていようものなら、水しぶきが容赦なく車内に飛び込んでくる。生まれて初めて見るこの光景に、私たちは興奮を抑えられなかった。(続く)