私はもともと、カナダのテレビメディアに興味があってカナダ留学を希望した。 アイカス(ICAS: The Pacific Intercultural Action Society)は、バンクーバー在住の日本人が、バンクーバー日系コミュニティに向けて日本語テレビ放送を行っている非営利団体で、多くのボランティアによって番組の撮影、編集などの活動が支えられている。日系コミュニティというマイノリティ・グループに、どんな番組をどんな目的で提供しているのか大いに興味をそそられたので、それについて私は深く調べようと思った。その結果、日系向けテレビの意義や重要性などについて学ぶことができたが、調査を通して自分を成長させることができたことが最も大きな収穫だった。
アイカスについてのフィールドワーク調査をするにあたってUBCの教授にアドバイスを求めた時、「アイカスに対して自分ができることで貢献すると良い。世の中はGive & Takeで成り立つのだから」とだけアドバイスをしてくれた。この「Give & Take」という言葉は、調査を通して、私の心のなかに大きく広がっていった。 まずは、アイカスの活動の中心であるニュースの編集作業と、それをケーブルテレビ局に配達する仕事をやらせてもらった。編集作業などやったことがなかったから、週に2、3回アイカスのオフィスに通い、編集について一から教えてもらった。 当初の目的であるアイカスに関する調査がおざなりになり、「編集作業を覚えただけで終わってしまったらどうしよう」とすごく不安だったが、編集を覚え、仕事を任せてもらえるようになると、職員の方に大変感謝してもらった。そして、編集ボランティアとしてアイカスの活動の変遷や、今抱える問題点などを調べたいと言ったら、職員の方は、昔アイカスの番組でキャスターをしていた方を紹介してくれた。 その方は、電話でのインタビューを承諾してくれたが、亡くなられたご主人の写真展を開催中で、その会場に出向いてくれてもよいと言う。もし私が亡き配偶者の写真展を主催していたら、初対面の人でも足を運んでくれたらうれしいだろうし、展示場に行けば何か手伝うことがあるだろうと思い、展示場で会うことにした。 「何かして欲しかったら何かしなくてはいけない」、というような義務的な発想ではなく、「Give & Take」とは人間関係の潤滑油みたいなものだ。 アイカスについての調査で色々な人にインタビューをしたり、図書館に毎日のように通って資料を探したことは、大学の講義では味わえない充実した学びの生活を体験させてくれた。いろいろな人と出会い、そこから人とのつながりが生まれ、アイカスについての調査をバンクーバーの邦字紙で連載する機会も得ることになった。
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