ライフ - 連載コラム記事

若狭真二の海外生活ア・ラ・カルト「これで良いのか、日本の大学生の教育水準」

 

落ち込む日本の大学生の国際競争力

─「大学1年間休学留学」で就活に自信を!─

 

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落ちる国際競争力
深刻な教育水準の下落

もはや日本の国際競争力の低下は深刻だ。スイスのIMD国際経営開発研究所が毎年発表する各国、各地域の2005年度国際競争力ランキングで、日本は60か国中21位という衰退途上の順位となった。スイス・ローザンヌにあるこのIMDの評価は、世界が最も注視しているほどに影響力のあるもので、マクロの経済状況や政府および産業界の効率性、社会資本の整備など国力の総合的な4部門と各部門を構成する314の小項目で審査するという。
その結果、日本はアジアの中でもシンガポールの3位、台湾の11位などよりはるか下位に落ちた。なかでも、経済力や政府の効率性の下降とともに深刻なのが教育水準の下落である。

 

日本人の低い語学力と
劣る大学生としての認識

この教育水準の低さで、とりわけ憂慮されているのが日本人の語学力の低さと、大学生の教育水準の低さである。日本人の語学力については、この半世紀の間ずっと問われ続けているのでいまさらという感じもするが、大学生の意識の低さや教育水準の低さも、ついに海外にまで知れわたったのかという思いがする。(ちなみに、英語資格試験のTOEFLテストでは、日本は世界115カ国中107位という悲惨な結果になり、アジアでも21か国中20位であった。TOEFL: Test and Score Data Summary 2004-2005による)
ここでいう大学生の国際教育水準とは、いわゆる知識の高さだけではない。それ以上に大学生としての自立性や構想力、予見性、また母国語での表現力や世界共通語の英語による表現力のことである。

 

単位さえ取れればよい
享楽的な大学生活

実は、このことは後に大学生が直面する企業の採用条件の内容にそのまま当てはまることになるが、大方の大学生は3、4年生になるまでこれを自覚していない。
日本の大学生には、単位さえ取れればよいという感覚があり、医系、理工系を除けば、いわゆる学問を追求しようと思っている学生はあまり見られないのだ。それよりも、学生にとってはバイトやサークル、それにボーイフレンド・ガールフレンドをつくることが重要な要件であり、大学3年生の夏ぐらいまではその傾向にあるという。日本で大学生らしさを探すとすればゼミのときぐらいではなかろうかと皮肉をいう人もいるが、これが日本の大学生の半数の実像だろう。

 

大学3年生の夏を過ぎ
慌て出す就職活動

しかし3年目になると、さすがに大学生も卒業後のことが心配になり始める。そこで急に黒ずくめの地味なリクルートスーツに身を固め、昨日までとは打って変わった行儀の良い若者に変身して就職活動を開始する。見たことも触ったこともなかった「会社四季報」や「日経」を手にする女子学生がこの頃から見られるようになり、そのぎこちない仕草や表情に狼狽する心情が映し出される。不思議な光景だが、笑うに笑えない情景である。

 

甘くない企業
試される必須の英語力

だが、企業は国際競争に日々晒されているので、甘やかされたにわか作りの大学生を採用するわけにはいかない。企業訪問の段階で瞬時に審判を下される場合もあれば、課題を出され、その後のやる気をチェックされる場合もある。結果としてIMDの調査項目のような、知識常識のほかに、自立力、構想力、行動力が問われ、とりわけ英語力は必須要件として試される。社会全体がグローバル化しているとき、共通語の英語が出来ないことには仕事にならないからである。
ところがこれが大学生にとって頭痛の種なのだ。

 

「大学1年休学留学」で
英語力と自己革新を

そこでぜひ勧めたいことは、学生のときに、英語圏で「大学1年間休学留学」をすることである。日本の中で英語を身につけることがどれほど至難の業かは日本人一人ひとりがよくわかっているはずで、単一民族、単一言語に近い日本社会の中では他言語の習得はなかなかうまくいかない。それも週に数時間では思うような運用能力が身につくはずがない。母国語が学ぼうとする言語を邪魔するからだ。指導者の能力や指導方法のこともあるが、日本人のほとんどが6年も8年も英語をやっているのにうまくいかないのはそこに大きな原因がある。
やはり、「英語は英語圏で、集中的に、継続的に」という鉄則に沿ってやる以外にないのだ。

 

生涯に影響を及ぼす
1年間の集中英語研修

こうした理由から、時間が自由に使える大学生のときの1年間、日本の家族や日本語の環境を離れ、独りで海外に住み、1日中英語の環境に身を置く英語研修という語学留学を勧めるのである。この経験が、どれだけ英語力を高め、異文化への対応力を高めることになるか計り知れない。多くの国からの友人もできるし、また企業が求めるTOEICテストで700から800点を獲得することも夢ではなくなる。
そして体験者にしかわからないことではあるが、独りで生活している中で湧き上がってくる家族への思いや、異文化の中でのものの見方の広がり、それから自分の人生に対する展望もだんだんに見えてくるようになるのでもある。
これが「大学1年間休学留学」であり、就職活動の際に堂々と英語力を発揮し、豊かな自己表現力を見せることにもつながるのである。

 

若狭真二(わかさ しんじ)
1981年より米国ワシントン州のNPO法人代表として、各国の留学、ホームステイ、海外研修事業に従事している。ピース国際交流センター代表。

 

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