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カナダ横断旅行日記12 (最終回) エンパイアステートビルディングから世界一有名な夜景

(前号まで)
初めてのニューヨークに戸惑いながらも、ようやく宿にたどり着いた私たち。しかし、ユージンとジーウンは宿を変更したいと言い出した。私とヤンウーとリオの3人に残された時間はあと2日だけ。ヤンウーはなんとかユージンとジーウンを説得し、私たち3人が帰った後で、彼女たちが宿を変更することで合意した(前号までの詳細はバックナンバーご覧ください。)。

 

大陸横断15日目。7月15日、晴れ。

タイムズスクエアと私

タイムズスクエアと私

今日はヤンウーとリオと私にとって観光最終日。
1分、1秒でも無駄にしたくないと思い、早々と朝食を済ませた私とリオは、宿の外で全員が集合するのを待っていた。しかし、5分、10分、15分と待ってもヤンウー、ユージン、ジーウンの3人は現れない。残りの時間が少ないうえに、彼女たち2人のわがままぶりに我慢の限界を感じていた私は、3人を待たずに、今すぐにでも観光に行きたいという衝動に駆られていた。そんな私をなだめようとリオは必死だった。

 

そこへヤンウーが1人で現れた。待たされたことに苛立ちを感じていた私がヤンウーに詰め寄ろうとしたその時、ヤンウーの口から発された言葉は私の気分を一気に晴らすものだった。
「2人がどうしても宿を変えたいと言うから他の宿に問い合わせをしていた。2人は今荷物をまとめて移動の準備をしている」
しかし、私の気持ちとは対照的にヤンウーは浮かない顔をしている。最後になって、グループが別行動をとるという最悪の結果になってしまったからだ。私とリオは何とかヤンウーを元気付けようと冗談を言うが、あまり効果は見られない。こういう時はそっとしておくのが一番だ。しばらくしてユージンとジーウンが荷物を持って出てきた。何となく気まずい空気が立ち込める。
「Have a nice trip!」と言葉を交わし、彼女たちと私たち3人は別れた。

 

こうして最初の3人に戻った私たちはニューヨーク観光に出発した。タイムズスクエア、5thアベニュー、自由の女神などを見て回り、1日という限られた時間を最大限に活用した。1日の大半歩き続けたため、足は疲れきっていたが心から楽しめた。久しぶりにヤンウーの笑顔を見てうれしくなった。

 

その日の夜、エンパイアステイト・ビルディングに登り、世界で最も有名な夜景を見下ろした。ビルの最上階である102階の部分は地上381mの高さにあり、ニューヨークの街全体が見渡せる。高度があるため風が強く、夏だというのに半袖だと少し肌寒いくらいだった。しかし、誰も降りたいとは言い出さなかった。それぞれが思い思いにこの旅を振り返っていた。

 

大陸横断16日目。7月16日、晴れ。

NY市立図書館

NY市立図書館

2週間続いたこの旅も今日が最終日。
ニューヨークからトロント経由でバンクーバーに飛行機で戻る時が来た。来るときは車で1週間もかかった4000キロの道のりも、飛行機だとたったの5時間。比較にならない速さである。
「北アメリカ大陸を横断したい」という一心で決行したこの旅。バンクーバーで通っていた英語学校で、あの時リオに声をかけていなければ、この旅は経験できなかった。ヤンウーと出会うこともなかった。韓国人4人に日本人1人という旅がどういうものかも分からなかった。計画もほとんど立てず、かなり無謀だった。しかし、途中何度かトラブルにあったものの、何とかやってこられた。

 

この2週間の旅で得た最大の財産は「発想の転換」。
たとえ道に迷っても時間を無駄にしていると考えるのではなく、これも経験だ
と考える。「今」という瞬間は2度と来ない。だったら「今」を楽しんだほうが良い。究極のポジティブシンキングである。途中さまざまなトラブルもありストレスを感じ、泣きたくなったこともあった。しかし、今はこの旅を続けてきて心底良かったと思える。一回りも二回りも自分が成長したと思える。

 

ヤンウーとリオはバンクーバーに戻った後、すぐに韓国に帰国する。2週間ずっと一緒に旅を続けてきた2人とできることならもっと時間を共にしたい。でも現実にはそうはいかない。私もこの後、新たな旅に出る予定だ。また、残り7ヵ月間のカナダの留学生活も待っている。

 

「後悔」・・・。私の一番嫌いな言葉。
今まで、やりたいと思ったことを実行に移すことができなくて後悔することもあった。その悔しさを知っているから、後悔しないように生きようと決めている。
残りのカナダでの7ヵ月、「思い残すことはもう何もない」と言って帰国できるように、1日1日を大切にしよう。バンクーバー行きの飛行機の中で、そんなことを考えていた。

 

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