ライフ - 連載コラム記事

赤丸天
カナダジャーナル編集長


バンクーバーで、日本食レストランが増え続けている。
 バンクーバーにある日本語の職業別電話帳(タウンページ)には、174軒の日本食レストランが載っている。この電話帳に載っていない日本食レストランも合わせると、バンクーバーとその近郊には250前後の日本食レストランがあると言われている。近郊を含めた人口が200万人そこそこのバンクーバーで、250軒もの日本食レストランがあるというのは、日本食の人気を裏付ける証拠だろう。

 ところで、ひと昔前まで、北米にある日本食レストランといえば、決まって寿司とてんぷらを出していた。典型的な日本食をそろえ、ウエイトレスが着物を着て、北米人がイメージする日本をそのままもってきたような料理店だ。多少値段が高く、味や内装の趣味があまり良くなくても、海外にいる日本人にはありがたい存在だ。食べて満足するだけでなく、日本語に包まれて安堵感に浸れる貴重な空間である、と言ってよいだろう。 

 だが、最近こうした昔ながらの日本食レストランは、軒並み姿を消し出していている。昔風のレストランができても、経営者や板前も日本人ではないイミテーションであることが多い。
今バンクーバーで増えているのは、値段が安く、居酒屋風に小皿料理を多くそろえたり、独自の凝った味を生み出しているレストランだ。なかには、大して味は良くないのに店外まで列ができるラーメン屋もある。そして、最近は、何よりも客層が若く、料理の質が無国籍化してきている。客の方にも、「日本料理を食べている」という感覚はさほどないのかもしれない。
人間が混ざり合うなかで、食文化も確実に混ざり合っている。モザイク社会と呼ばれるカナダでは、そんな例を日常的に目にする。

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