ライフ - 連載コラム記事



地球の叫びを聞いて!

環境保護のスペシャリスト・環境ファシリ
テーターになろう

入江 祥史(いりえ よしひと)


 20世紀は「科学技術と開発の世紀」と言われ、人間の未来は明るいと思われていた。しかし、世紀の半ば以降、世界各地で環境問題が顕在化し、局地的な問題から全地球規模へ拡大していった。
「今、地球上で何が起こっているのか?」「私たちに何ができるのか」。
これからは、「環境の世紀」と言われる21世紀に生きる私たちに課せられた使命を肌で感じるとともに、責任ある行動が適切かつ迅速に求められている。

森からの警告

 1万年前地上の半分は、森林で覆われていた。しかし、現在の森林は約3500万平方kmで、全陸地の約4分の1に減っている。その原因の大半は、発展途上国における伐採や開発・焼畑農業などである。国連食糧農業機関(FAO)によると、1990年代前半の5年間で、日本の国土の1.5倍にあたる56万平方kmが消えてしまった。光合成で酸素を供給し、大気中の二酸化炭素を大量に吸収する森林は、地球上の生態系や炭素循環の中心を担っている。落ち葉や枯れ木は、土の中に有機物として蓄えられ、植物の栄養分や、多様な生き物の餌になる。このように森林は、私たち、すべての生き物にとって、かけがえのない存在なのだ。もし、その森林が消えてなくなれば、多くの生き物を絶滅の危機に追い込むだけでなく、地球温暖化を加速させてしまうことになる。
美しい惑星である地球の未来は、森林が握っている。

沈黙の春

 「アメリカの奥深く分け入ったところにある町があった。生命あるものはみな、自然と一つだった。町のまわりには、豊かな田畑が碁盤の目のように広がり、穀物畑の続くその先は丘がもりあがり、斜面には果樹が茂っていた。ところが、あるときどういう呪いを受けたわけか、暗い影があたりにしのびよった。・・・自然は沈黙した。・・ああ鳥がいた、と思っても死にかけていた。ぶるぶるからだをふるわせ、飛ぶこともできなかった。春がきたが、沈黙の春だった。」
アメリカの生物学者レイチェル・カーソンが、1962年に発表した『沈黙の春』は大量のDDTなどの農薬散布による生態系の破壊の危険性について、鋭い警告を与えた。
自然環境の中では、動物も植物もそれぞれ互いに関係し合って、生態系を形成している。私たち、人間も生態系の中の一要素に過ぎない。その人間が有害な廃棄物などを生態系の持つ自浄作用を超えて、大量に放出すると、環境汚染や自然破壊を招くことになることは明らかである。

環境教育プログラム「プロジェクト・ワイルド」

 今、わが国では、都市化の進展に伴って、動植物などの生き物とそれらを取り巻く環境に身近に接する機会が失われつつある中、身近な自然とのふれあいを通じて環境教育・環境学習ができる場が求められている。このような現状を踏まえ、財団法人公園緑地管理財団が、米国環境教育協議会(CEE)と独占ライセンス契約を結び、環境教育プログラム『プロジェクト・ワイルド』を全国に普及させている。
『プロジェクト・ワイルド』とは、1980年アメリカで開発され、アメリカで最も広く使われている環境教育プログラムで、これまでに全米で90万人以上の指導者が養成されている。また、4800万人以上の子供たちがワークショップを受け、現在では世界中の国々に普及し、毎年アメリカで世界大会も実施されている。

 一方、わが国でも1999年に導入され、2005年9月現在、全国に9631名のエデュケーター(一般指導者)、387名のファシリテーター(上級指導者)、43名の推薦ファシリテーター(最上級指導者)が誕生している。これらの指導者は、小・中・高等学校の学校現場、地域の環境学習の場、企業の人材育成などさまざまな場面で、『プロジェクト・ワイルド』を使った環境学習を展開している。なおかつ、わが国では2004年に「環境教育推進法(環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律)」が施行され、『プロジェクト・ワイルド』もこの法律の人材認定事業に登録されている。
 わが国における公式環境教育指導者資格の一つであるため、現在大学生を中心に、この資格を取得したいという希望が激増している。例えば、私の勤務している学園の併設校でもある文京学院大学でも、2005年度だけで、エデュケーター(一般指導者資格)を取得した人は120名にのぼり、就職活動にも大いに役立っている。

『プロジェクト・ワイルド』の特徴

このプログラムは、“何を考えるか”ではなく、“どのように考え行動するか”を指導するものであり、子供たちが知識・情報・技能・経験を身に付け、野生生物、人類そして共有する環境を保全するための正しい判断と、責任を持って環境保護に参加するか行うことができるように作られている。

活用方法

 『プロジェクト・ワイルド』のエデュケーターの資格は、正式に「環境教育一般指導者資格」として履歴書にも堂々と記入でき、大学生にとって就職活動に広く活動できる素晴らしい資格であるため、近年全国的に注目されている。
しかも、就職先が環境関係でなくても、面接試験に自己PRの面で大いに、自分をアピールできるものである。これまでの例によると、この資格をアピールした学生は必ず合格しているようである。
また、高校生も大学入学試験で、AO入試や自己推薦に活用して、全国各地から合格の連絡が届いている。今後ますます全国的に普及されることが明白であるため、大学生も高校生もこの資格を取得することが必要不可欠になるであろう。

入江 祥史(いりえ よしひと)
1954年大阪生まれ。文京学院大学女子高等学校総務主任・環境教育主任、中学・高校バレーボール部統括部長(教師歴公立中学10年、私立高校19年、合計29年間)。社団法人日本マレーシア協会学校教育担当参事。環境教育指導者としては、全国トップレベルの活動実績を誇り、数多くの「環境上級指導者資格」を取得し、我が国の学校現場で近年脚光を浴びている。一方、「国際理解教育」の分野では、「全国国際教育研究協議会」常務理事として、教育旅行(修学旅行、語学研修、留学等)の研究の我が国の第一人者と呼ばれ、各国政府観光局、JICA、観光旅行・航空会社業界の人々から全幅の信頼が寄せられており、最近では「21世紀における我が国の教育旅行のあり方」について、各セミナー等で講演し、各界から高い評価を得ている。

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